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死闘1

 私が部屋に入ってから約一時間後、ドアをノックする音が聞こえた。私が扉を開けると、アクーニナと他の親衛隊が数名立っていた。アクーニナは今日はいつもの制服姿だ。


「よろしいですか?」

 アクーニナは無表情で言った。

「構いません」。

 私の準備は万端だ。隣の部屋のオットーも呼び出し、合流した。

 アクーニナの先導に従い、しばらく進むと、他の親衛隊が数十名待っている。

 アクーニナは説明する。

「親衛隊は私を入れて二十人でチューリンのいる部屋に入ります。この人数は部屋の広さから鑑みて、最も戦いやすい人数です。そして部屋の外に二十名が控えて、状況に応じて参戦。残りの親衛隊十名で、チューリンを倒すまで誰も上がって来られないように、この階の下へ通じる各階段を封鎖しています」。

 私、オットー、アクーニナと親衛隊で二十二人。こちら側の親衛隊は軍の中でも精鋭中の精鋭、剣の腕はかなり立つ。そして、私とオットーが若干の魔術を使う。一方のチューリンの力量は不明だ。島の傀儡魔術のチューリンと同じ程度の魔術が使えるとすれば、かなりの苦戦が予想できる。


 我々は、静かにチューリンの普段いる部屋、すなわち皇帝のいる謁見の間の前室の扉まで足を進めた。

 アクーニナが私に合図する。

 部屋の扉を勢いよく開け、私とアクーニナは先頭で部屋に入り込んだ。それに続いて、オットーと親衛隊が入室する。その時、チューリンは部屋の中央に立っていた。そして、こちらを静かに見つめた。

 私とアクーニナは剣を抜いた。遅れて残りの者が剣を抜き、横に展開する。

 そして、アクーニナは口を開いた。

「チューリン、あなたを拘束します」。

 彼女の大きな、はっきりとした声は、部屋中に響き渡る。

 チューリンは、静かに、しかし、はっきりとした口調で言う。

「どういった理由で私を拘束するというのかね?」

「首都を翼竜で襲い多数の兵士を殺害し、また、三度にわたるレジデンツ島の調査隊員の多数を殺害した疑いです」。

「証拠はあるのかね?」

 チューリンは、少しずつこちらに歩み寄ってくる。

「クリーガーが島で見つけた、あなたの魔石が証拠です」。

「愚かな」。チューリンは少し笑って歩み寄ってくる。「その程度の人数で私を拘束できると思っているのか」。

 アクーニナが手で合図をすると、親衛隊が周りを取り囲むため左右に回り込もうとする。

 チューリンは、両手を大きく左右に開いた。それを見た私は、稲妻が放たれると直感した。

 次の瞬間、予想通りチューリンの両腕から稲妻が放たれ左右に展開中の親衛隊員達に直撃した。彼らは弾き飛ばされ、壁にたたきつけられた。私は一瞬遅れたが、ナイフを投げつけた。チューリンそれを体を少しひねることで、それを躱した。

「同じ手が二度通用すると思ったか?」チューリンは言った。


 何だと?


 確かに、この展開は、島の洞窟内と同じだ。しかし、今回のそれは偶然に過ぎなかった。なぜ、このチューリンが偽物との戦いの内容を知っているのか?

 瞬間的に、それは、このチューリンこそが、自分の偽物を操っていたのだ。と、私は確信した。アクーニナが、先走って考えたチューリンを排除するためのでっち上げが、事実だったというのか。

 アクーニナが駆けだしてチューリンに向かう。それを見た私は叫んだ。

「迂闊に近づくな!」

 その叫びも遅く、アクーニナはチューリンの稲妻に撃たれ、後ろへ跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 私とオットーは、稲妻による攻撃を開始した。稲妻はチューリンに直撃するも、ほとんど効果がないという様子だ。化け物め。

 最初に稲妻に撃たれた親衛隊員達は、何とか立ち上がって、近づけない他の親衛隊と同様、遠巻きに我々の稲妻の応酬を眺めていた。


 私は次に水操魔術で、目くらましの霧を発生させた。チューリンから視界を遮った隙に、近づこうという魂胆だ。霧を発生させたあと、私はチューリンがいた方向へ駆け出す。

 次の瞬間、室内に突風が吹いた。私は膝まずいて、後ろに倒されないように抵抗した。突風で霧はすべて吹きとばされた。突風が止んで前を見ると、チューリンの姿がない。その時、オットーが叫んだ。

「上です!」

 私が顔を上にあげると悠々と宙に浮いているチューリンが目に入った。チューリンが何言か呪文を唱えると、壁の両側に飾ってあった、剣や斧が宙を浮いて我々に襲い掛かり出したのだ。そして、同じく壁のそばに飾ってあった鎧二体が動き出した。念動魔術に傀儡魔術か。

 鎧一体に親衛隊四、五人で戦っている状況となった。アクーニナも立ち上がっていて、鎧の一つと戦っている。ぶつかり合う鎧と剣の鈍い音が部屋に響く。宙を切る剣や斧も躱さないといけない。私とオットーを含め、残りの者は剣や斧を自分や仲間に当たらないように払いのけている。


 しかし、剣や斧に犠牲になる者が二人、三人と出てきた。

 これはまずい展開だ、何とかしないといけない。しかし、宙を浮いているチューリンに剣は届かない、稲妻や火の玉はほとんど効果がない、いったいどうすればいいのか。


 島での戦いでは、ソフィアが洞窟の天井を崩して地竜を倒した。チューリンの偽物も何度か洞窟内の天井を崩して我々を攻撃した。

 私はふと天井を見て、稲妻を放つ。

 稲妻は、天井で巨大なシャンデリアを吊ってあった鎖を直撃した。次の瞬間、鎖は切れ、巨大なシャンデリアが、ガラスの装飾同士がぶつかる音をジャラジャラと立てながら、落下した。落下する真下には宙を浮くチューリンがいる。シャンデリアはチューリンを巻き込み、耳をつんざく大きな音を立てて床に落ちた。私は、チューリンが間違いなく下敷きになったのを見た。


 剣と斧がバタバタと床に落ちていく。念動魔術の効力がなくなったのだ。二体の鎧はまだ動いていたが、ほどなくして、アクーニナと親衛隊員が鎧の一体をバラバラにして倒した。少し遅れて他の親衛隊員達がもう一体の鎧をバラバラにした。

 しばらく、部屋に静寂が訪れた。チューリンを確実に仕留めたが確認する必要がある。しかし、私はこれぐらいで倒せる相手だと思えなかったので、慎重にならざるを得ない。

 周りを見ると、親衛隊員が七、八人倒れている。剣や斧、鎧にやられたのであろう。しかし、外に待機していた隊員が入ってきたのか、部屋の中で立っている人数は二十名程度に保たれている。

 アクーニナは、隊員数人に命じシャンデリアの下にチューリンがいるか確認させるために近づくように命じた。隊員たちはゆっくりと慎重に近づく。そして隊員がシャンデリアに手が届くところに着いた途端、巨大なシャンデリアが浮き上がったのだ。

 やはり、チューリンはまだ生きている。


 シャンデリアは突然我々のいる方向へものすごい勢いで飛んできた。私はそれを身を伏せて躱した。後ろで隊員たちの叫ぶ声が聞こえる。後ろを振り返るとシャンデリアが壁を突き抜けて外の通路の反対側の壁に突き刺さっているではないか。それが、もうもうと埃を上げているのが見える。またシャンデリアの直撃を受けたであろう外で待機していた親衛隊員が数名倒れているのが見えた。一方、部屋の中ではオットーとアクーニナの立ち上がる姿が見えた。シャンデリアをうまくかわして無事なようだ。

 私は前を向いた。チューリンがゆっくりと立ち上がるのが目に入った。しかし頭から血を流し、明らかに弱っている様子だ。治癒魔術を使わせる隙を与えてはいけない。

 私は素早く駆け寄り、チューリンとの距離を縮め、もう一度、ナイフを投げた。今度はチューリンの左肩辺りに突き刺さった。

 チューリンは短く呻き声を上げた。


 さらに私は駆け寄った。チューリンはふわりと宙に浮きあがる。しかし、一瞬私の方が早かった、私の剣先は、少し浮かび上がったチューリンの脇腹あたりを捉えた。

 チューリンは、もう一度うめき声を上げるも、さらに宙に浮きあがった。私はすかさず、稲妻を剣先からチューリンの体内に向けて稲妻を放った。ほぼ同時に、チューリンの手から稲妻が放たれ、私を直撃した。チューリンは後ろに弾き飛ばされるように、後ろに墜落した。私も、後ろに跳ね飛ばされた。

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