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首都再訪

 昨夜は、アクーニナとの話し合いの後、ベッドに横になったまま眠ってしまったようだ。服のままだったことを早朝、起きてから気が付いた。

 私はベッドに横になったまま考えた。

 あの島で、偽のチューリンを操っていた者はだれか?

 帝国に恨みを持っている者は、国内外に多い。ただ、傀儡魔術を使える者となるとだいぶ絞り込めるはずだ。以前、帝国の調査隊でも、その者を見つけられていないと言っていた。ひょっとしたら、帝国の領土内にはいないのかもしれない。とすれば、島にまだ別の魔術師がいただのろうか?。


 私はベッドから立ち上がり、懐中時計を見た。出発の時間まで、だいぶ時間がある。

 私は椅子に座りなおして、昨夜のアクーニナの話を反芻してみた。そういえば、首都のチューリンが魔術を使うところを見たことがない、と言っていた人物がいたな。誰だっただろうか?首都のチューリンが魔術を使えなければ、拘束は簡単だ。しかし、魔石を持っているということは、やはり魔術を使う可能性が高い。その魔力は偽物と同じなのか、それ以上か、それ以下か。


 島でチューリンを倒せたのは、運が良かったと言わざるを得ない。島では私、オットー、ソフィアを含め十四名の隊員で戦い、後で加勢に来たフリゲート艦ウンビジーバー号の船長ボリス・シュバルツの援護のおかげで、なんとかチューリンを倒すことができた。今回は魔術が使えるのは、私とオットーだけだ。それも我々の魔術の威力は、他の魔術師に比べると遥かに劣る。

 アクーニナ率いる親衛隊は確か五十名居ると聞いた。彼らはいずれも帝国軍から腕の立つものを選抜し、精鋭中の精鋭と聞く。おそらく剣の腕は傭兵部隊のそれとは格段に上であると想像できる。この人数であれば、何とかなるのであろうか。


 私は、昨夜のアクーニナの話を、今のうちにオットーにしておこうと思い、彼の部屋に向かった。オットーもすでに起床しており、私は昨夜の話をした。オットーも私同様、チューリンを拘束しようと言う話を無謀だと感じたようだ。もし、偽物のチューリンと同じレベルの魔術師であれは、こちらも同じレベルの魔術なしでは、不利は否めない。また、オットーは私が脅されていたとはいえ、この話を了承したことにも、驚いていた。ともかく今日、チューリンと戦うことになる、オットーにも心するように伝えた。


 朝食を取った後、出発の時間となり、私とオットー、衛兵の八名は、首都に向かって出発した。最初は気楽な旅だと思っていたが、また死を覚悟しなければならない旅になってしまった。


 我々はヤチメゴロドを出発し、首都への道を何事もなく進んで行った。

 午後もだいぶたったころ、首都が見えてきたころ、モルデンで見たような光景が目に広がった。いや、モルデンよりも派手なものだ。

 目前に広がるのは、軍の隊列が城壁の前に整列しており、城門から街道へと続く道には、モルデンの時と同じように両側に騎士や兵士が整列している。しばらく進むと、今回も歓迎のラッパが響き渡った。


 城門の前まで来ると、待ち構えていたのは、二人の重装騎士だった。兜はかぶっていないので、顔を確かめることができる。右にいるのは、セルゲイ・キーシン、重装騎士団で、第三旅団の団長。彼とは最初の首都訪問の際、翼竜との戦いの場で会っている。左にいるのは、始めて見る顔だ。短く刈り上げられた茶色い髪に、鋭く光る茶色い目。体つきもかなり大柄だ。さらに彼はキーシンより若く見える。

「ユルゲン・クリーガー隊長、首都へのご来訪を歓迎いたします」。その男は敬礼して言った。「私は、第二旅団の団長のデニス・ソローキンです。初めまして」。

 ソローキンか。思い出した。彼の名前は聞いたことがあった、確か退役軍人のイワノフが言っていた名前だ。戦争では力押しの戦い方をしたという指揮官で、帝国軍の総司令官だ。


 私はソローキンが話し終わるのを待って、口を開いた。

「ズーデハーフェンシュタット駐留傭兵部隊隊長、ユルゲン・クリーガーです。隣にいるのは、隊員の一人で私の弟子のオットー・クラクス。命によりズーデハーフェンシュタットから参りました」。

 私は敬礼した。

 続いてキーシンが話す。

「私とは二度目ですね」。キーシンは敬礼して続ける。「調査隊の任務達成は見事です。あなたなら、やれると思っていました」と、言うと笑みを浮かべた。

「では、城までご案内します」。

 ソローキンはそう言うと、馬を返した。私とオットーはそれに続く。

 城壁内の街の中では、モルデンの時と同様に市民が沿道に大勢、集まって来ていた。私が近づくと歓声が上がる。さらに、両側の家の二階、三階、四階から人々が投げる紙吹雪が舞う。このような歓迎は見たことも、聞いたこともなかった。

「この歓迎を、“ティッケル・リェーンタ・パラード”と言っています。これは滅多に行われません。前回、行われたのはイジナユグ戦争に勝った時です」。

 キーシンが、そう教えてくれた。自分たちの国が滅んだ時に行われたのと同じ方法で、今、我々が歓迎されている。複雑思いであった。


 我々は城の中に入り、中庭まで進んで、馬を降りるように指示された。そして、そこから我々のために用意された部屋まで案内された。以前の訪問の際の部屋と比べると、格段に良い部屋だ。

 キーシンは私が部屋を入る前、「今夜七時から、陛下が会食を二人きりでしようとおっしゃっておられます。時間になったら誰か案内を寄こしますから、こちらで待っていてください」。と言って部屋を出て行った。


 本来であれば、これらの派手な歓迎ぶりを喜んでもいいのかもしれないが、今はアクーニナとの約束がある。チューリンを拘束しなければならない。場合によっては戦いになるだろう。

 私は懐中時計を見た。今は夕方の四時二十五分だ。

 アクーニナは、私の到着後すぐに会いに来ると言っていた。しばらく落ち着かない時を過ごす羽目になった。

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