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歓迎

 翌朝、私とオットー、衛兵の合わせた十人は、宿屋で朝食をとって次の目的地であるモルデンに向け出発した。前回は途中、盗賊に襲われたが、すでに討伐したので、もう襲われることはないだろう。私はオットーや衛兵達と雑談をしながら馬を進める。


 モルデンの城門が見えてきた。すると予想だにしなかった光景が広がっていた。

 帝国軍の兵士達が、城門前の街道に整列している。その奥、城門付近には馬に乗った人物が一人いた。私は、理解するのに時間がかかったが、どうやら我々を歓迎するために、整列して待っていたようだ。


 私はそれを見て、非常に驚いてしまった。

 こちらも隊列を変えるように衛兵に言われ、私を先頭に、オットー、衛兵八人が続く隊列となり、城門へ進んでいく。

 待ち構える隊列に差し掛かると、軍楽隊のラッパが軽やかなメロディを奏で、響き渡る。

 さらに進むと、先日、盗賊討伐の部隊長エルマンスキーも並んでいるのを見つけて、お互い目配せで挨拶をした。


 正面で待ち構えているのは、おそらく司令官だろう。

 少しやせた感じで、鋭い目と黒髪に白髪が少し混ざった髪と口髭が印象的だ。

 彼のところまで馬を寄せ、私は敬礼した。

「ズーデハーフェンシュタット駐留軍所属傭兵部隊、隊長のユルゲン・クリーガーです」。

「私は、ここモルデンを任されている帝国軍第四旅団のミハイル・イェブツシェンコです。モルデンへの訪問を歓迎いたします」。と、敬礼をして話した。そして馬を返し、話を続ける。「歓迎の準備をしておりますので、城へご案内いたします」。


 城壁内に入ると、一般の市民たちも私を一目見ようと集まって来ていた。軍の兵士が近づきすぎないように市民たちを制止している。

 しばらく進んで、城に入った。前回、訪問した際は城の中には入らなかったのでその様子がわからなかったが、城の内部も修復途中の場所が多い。それをイェブツシェンコは指さして、「復旧作業が思うように進まなくて、まだこの状態です」。と、不機嫌そうな顔で言う。

 城内の広場で、我々は馬を降りる。イェブツシェンコは「まずは、部屋を召使いに案内させます。一時間後には歓迎の宴を用意しておりますので、改めて召使いがお迎えに上がります」と言って、一旦はここで別れた。


「なにやら、すごいことになったな」。

 私は苦笑して、オットーに言った。あまり有名になりすぎると、自由な行動を取りにくくなる。困ったことだ。

 案内された部屋は、豪勢の一言だった。中は広く、内装やデザインも洗練されている。私は剣やナイフを机の上に置き、隣にいるオットーの部屋を訪ねた。

 オットーの部屋も同様な作りになっており、オットーも、しきりに驚いていた。

 私は、オットーに話しかけた。

「そういえば、前回ここに来た時、友達に再会したと聞いたが」。

「はい、リーヌス・シュローダーですね」。

「ちょっと頼みたいことがあるんだが」。

 と、私は話を切り出した。


 しばらくたって、私とオットーが話していると、召使いが迎えに来た。もうそんな時間か、すっかり話し込んでしまった。

 我々は召使いに連れられて、宴会場へと招かれた。イェブツシェンコや数名の上級士官らしき人物が併せて五人、待ち構えていた。部屋の壁際には召使いが数名控えている。私とオットーはイェブツシェンコに指示された席に着いた。

 テーブルの上のには、これまで見たことの無いような豪華な食事が並べられていた。

 イェブツシェンコは口を開いた。

「遠慮なく食べてください。帝国の英雄と一緒に食事ができるのはとても光栄です」。

「私は“英雄”と呼ばれるのは、ちょっと…」。

 私はこの歓待ぶりに困惑した。隣に座ったオットーも落ち着かない様子だ。

「噂通り、謙虚なんですね」。イェブツシェンコは笑って見せた。「首都で翼竜を倒し、島の調査の任務もやり遂げた。我々が、もう翼竜の襲撃に頭を悩まさなくても良くなったのは、あなたのおかげです。帝国を救った英雄ですよ」。

 イェブツシェンコは、さらに続ける。

「陛下も相当お喜びのようです。ここ数日前あたりから、全国であなたのことが広まっています」。

「いや、首都の翼竜も、島での戦いも、弟子たちや他の隊員がいたからこそです」。と私は言った。これは本当のことだ。「私一人だけ、英雄扱いなのは…」。

「わかりました、そういうことにしておきましょう。ただ、もう国中にあなたのことが広まりつつあるので、覚悟しておいてください」

 そう言ってイェブツシェンコは大声で笑った。そして、イェブツシェンコは立ち上がりワインが注がれたグラスを掲げた。「では乾杯行きましょう」。自分の手元のグラスにも召使いがワインを注いだ。

「では、帝国の繁栄とユルゲン・クリーガーの任務の完遂を祝って乾杯!」

イェブツシェンコはグラスを掲げて叫んだ。

「乾杯!」

 一同は唱和した。

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