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上陸

 私はソフィアとアグネッタに、空からヘアラウスフォーダンド号の沈没した付近を捜索してくるように指示を出した。ひょっとしたら、小型ボートで脱出したものが生き残っているかもしれない。二人は念動魔術を使い、飛行してあたりの海上の捜索を開始する。


 傭兵部隊での最も親しい友人でもあるエーベルが、あっけなくやられてしまってことが、信じられなかった。まるで悪夢でも見ているようだ。ようやく、悲しみが込み上げてきた。しかし、私は任務があるので、悲しみに暮れている場合でないと自分に言い聞かせた。任務を遂行し、傀儡魔術を使う者を倒すことが、エーベルはじめ犠牲者への手向けとなる。私は何とか悲しみを飲み込んで、指揮にあたる。隊員たちは、上陸準備を開始した。


 私は下船前、気になったことを船長のシュバルツと話した。

「我々が全員、下船してしまったら、クラーケンや翼竜に襲われた時、対応できないのでは」。

 船に残される二十名程度の水兵では、戦いにならないだろう。

「いや、襲われたらそれはそれだ、君たちは自分達の任務を果たしてくれ」。

 と、シュバルツははっきりと力強い口調で言った。

「海で死ぬなら本望だ」。さらに付け加える。「何かあれば陸でも加勢する」。

 私はうなずいて、調査隊の上陸を進めることにした。しかし、船が襲われて沈没した場合、我々も帰還できなくなってしまう。そうなると島で野垂れ死にだ。これは、島にいるはずの首謀者を、翼竜であれ、クラーケンであれ、怪物に船が襲われる前に必ず倒す必要がある。ルツコイは島の調査だけして、なるべく生還しろと言った。しかし、海にはクラーケンがいる。生還するためには調査だけでなく、“敵”を倒さなければ生還できない状況となった。


 調査隊のメンバーは上陸用の小型のボートに次々と乗り換え、島に向かっていく。遠浅の砂浜、青い海に、島に茂る森の緑が目に眩しい。調査隊の仕事でなければ、そして怪物がいなければ、休暇で訪れたいと思うほどの美しい場所だ。


 午後もだいぶ遅い時間となってきた。もうすぐ空は夕焼けで赤く染まってくるだろう。調査隊は砂浜に着き、ボートを岸に上げ固定し、島に上陸する。

 その時、隊員の一人が声を上げた。

「あれを見ろ」。

 その指先、浜辺の少し離れたところに、人が何人かが倒れているようだ。まったく動く様子はない。私は数名の隊員に命じ、倒れている人物が何者かを確認してくるように命令した。

 ほかの隊員には、ボートから食料などの物資を下ろすように伝え、さらに少し陸を進んだ林の入り口付近で、テントの設営を指示した。夜が来るまでに設営を完了して、一旦ここで夜を明かし、明日早朝から出発する。


 しばらくして、倒れている人を見に行った隊員が戻ってきた。八名の遺体があり、その服装が帝国軍の制服だったという。どうやら、これまでの調査隊の隊員の遺体のようだ。すでに白骨化していると報告を受け、行方不明になっているこれまでの調査隊は、やはり全員死亡とみていいだろう。相手は翼竜かクラーケンか。もしくはまだ見ぬ怪物がいるかもしれん。私は、隊員達にそれらの遺体を丁重に埋葬することを指示した。


 その後、隊員達によって野営地が設置された。私は、半分に減ってしまった調査隊で、今後どのように調査をするか、副長のレオン・ホフマンと打ち合わせることにした。本来であれば、第一隊、第二隊がそれぞれ、島の東西に分かれて探索する予定だったが、第二隊が全滅した今、第一隊をさらに二つに分けるか、それとも、まとまったまま島を調査するか、意見を交わした。

 我々の意見は最初から一致したので、話は早かった。第一隊を二つに分け、東西をそれぞれ調査するということに決まった。理由は、一つでまとまった調査した場合、時間が予定より倍かかってしまうからだ。ウンビジーバー号のこともクラーケンの襲撃が心配だ。早めに決着を付けたい。部隊を半分にすることによる戦力の半減は、仕方がないと見た。もし、どちらかの隊が調査中に敵に遭遇した場合はなるべく戦わずその場は退却し、必要とあれば、もう一つの隊と合流してから改めて戦うという方針で決まった。


 我々は、クリーガー隊とホフマン隊の編成を夜のうちに決定した。

 クリーガー隊は、私はじめ、オットー、ソフィア、魔術師二名、他傭兵メンバーで総勢二十五名。当初の第一隊が調査する予定だった、島を東回りするルートを進む。

 ホフマン隊は、ホフマン、アグネッタ、魔術師一名、ホフマンの賞金稼ぎ仲間だったなどを中心に他傭兵メンバーで総勢二十五名。当初の第二隊が調査する予定だった西回りルートを進むことに決定した。

 それぞれの隊にソフィアとアグネッタがいるので、もし翼竜に襲われた場合、うまく対処できるだろう。

 その日にうちに、帝国軍の兵士にも話をし、五名ずつ別れてそれぞれの隊に編入されることに決まった。今日のうちに、明日以降の方針を決めることができて、何よりだった。


 そしてしばらくして、アグネッタとソフィアがヘアラウスフォーダンド号の生存者の調査から戻ってきた。小型ボート二隻で脱出した十四名と海上を漂っていた七名を救出し、現在その者たちは、ウンビジーバー号に収容されたということだ。中には第二隊の副隊長のエミリー・フィッシャーがいるということだが、エーベルは見つかっていないという。衰弱している者が四名いて、しばらく安静にさせる必要があるが、残りの十七名は明日早朝に小型ボートでこちらに向かい、合流したいと言っているという。

 その話を聞いて、ともかく生存者がいたことで、私は少し安堵した。

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