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14 隠し通路

「さて、早く上に行く階段を見つけないとな」


 2階層から落ちたわけなのでここはそれよりも下の階層なのだろうと思う。


 3階層なのかそれとももっと下にまで落ちてしまったのか。


 どんどん先を行くシロの後をついて歩いていくと突然シロが何もないところで足を止めた


「シロ?」

「キャンキャン!」


 突然壁に向かって吠え始めたシロを不思議に思いながらその壁を眺める。


 何の変哲もないダンジョンの壁にしか見えないが俺が落ちたところも見た目はただの行き止まりだった。


「何もない、か?」


 ペタペタと壁を触ってみるとふと他の場所と感触が異なる場所があった。


 そこを叩いてみると明らかに他のところと音が違う。


 どうもこの先は空洞になっているようで、隠し部屋がある可能性がまずは頭に浮かんだ。


 俺はマジックバッグから大槌を取り出すと力任せにぶっ叩いた。



 ――どーん、どーん



 力任せに何度か壁を叩くとパラパラと表面の壁が落ちていき、その先に空間が見えた。


 部屋ではなく、ずっとその奥へと道が続いている。


「隠し通路か!」


 この先に上への階段はないのだろうとは思う。


 しかし、大抵こういう場所には宝があるか何が重要なアイテムがあるというのがお約束だ。


 シロも直感的に俺と同じように思っているのかさっき以上に俺の前を進んでどんどんと奥へと向かっていく。


 通路は一本道で迷いようはないがそれなりの距離を歩いたように思う。


 そして通路の終点ともいうべき広い空間に出たとき俺は目の前の光景に息を飲んだ。



「ここは何だ?」


 そこは石畳がびっしりと敷かれた床に高い天井のある大きな部屋だった。


 その部屋の中央には見たこともないほどの大きさの蛇だろうか、それとも竜だろうか。 


 詳しいことは分からない俺が見上げるほどのとにかく体の大きな生き物がいた。


 以前にカインさんが地竜を倒して村に運んできたことがあったがその時に見た地竜よりも一回りも二回りも大きい。目の前の生き物に比べるとあのときの地竜は子供の大きさにしか思えない。



「生きているのか?」


 恐る恐るその生き物に近づいていく。


 危ないものには近づかないというのが鉄則なのはわかっている。


 しかし、それ以上に見たこともない目の前の巨大な生き物への探究心が勝ってしまった。


 我ながら残念な奴だとは思うがそうでもなければ元々錬金術師だなんて職業を選びはしなかっただろう。


 まあ、それ以上に目の前の生き物が周囲を害するような雰囲気が一切なかったというのが本当のところだ。


 その生き物は目を瞑り身じろぎもせずただただそこにあった。



『誰だ?』



 突然誰かに話し掛けられた。


 声が聞こえたというよりも頭の中に直接話し掛けられたといった方がいいのかもしれない。


 とにかく今までに感じたことのない感覚だった。


 この場にいるのは俺とシロと目の前の大きな生き物だけだ。


 俺が目の前の生き物を見ると閉じられていたまぶたが開き、ぎょろっとした大きな目玉が現れた。


「…………」

『…………』


 突然の出来事に無言で目の前の生き物を見つめる。


 俺の心臓はドキドキして何がなにやらといった感じだがたっぷりと時間を掛けることでようやく俺は落ち着くことができた。


「……今話し掛けてきたのはひょっとしてあなたですか?」


『そうだ』


 間髪入れずに再びさっきの何とも言えない不思議な声の聞こえ方がした。


 目の前の生き物はいったい何だろうか?


 それにしても魔物か魔獣かはわからないがそういった存在が言葉を操るだなんて聞いたことがない。


「ここはいったい……、そもそもあなたは?」


『ここは湖の底のさらに地下、わたしは水竜。人間たちからはリヴァイアサンと呼ばれることもある』


「!?」



 ――リヴァイアサン



 俺の記憶が確かならそれは神獣と呼ばれる半ば伝説上の生き物とも呼ばれる存在のはずだ。


 冷や汗が出る。


 そんな伝説上の存在と相対すればタダで済む訳がない。


「そっ、そうでしたか。ここはあなたの住処すみかだったんですね。知らずに入ってきてすみませんでした」


 危ない危ない。


 よそ様のお宅に勝手に入ってはいけないよね。


 俺はそう言って何事もなかったように回れ右して帰ろうとしたんだが……。


『そこの若者。ちょっと待ってくれないか』


 伝説の存在にそう呼び止められて俺は動かしかけていた足を止めざるを得なかった。

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