13 ソロ活動(強制)
「ここはどこだ?」
浮遊感を覚えてしばらく。
それなりの時間が経ったとは思うが俺はいつの間にかダンジョン内のとある場所にいた。
上から落ちてきたはずなのに床に叩きつけられて怪我をしたということはない。
ダンジョンは不思議なところだと聞いていたがこれもそのうちの一つなのだろう。
「キャンキャン」
「おっ、シロ」
俺を追ってきたのだろうか。
直ぐ隣にシロがいた。
「はぐれてしまったな」
「く~ん」
心細そうに鳴くシロを撫でながらこれからのことを考える。
できれば元の場所に戻って二人と合流してダンジョンを脱出したいところだが、今いる場所がどこかもわからない。
ダンジョンの構造も分からないし恐らく直ぐに戻ることは難しいだろう。
パーティーのメンバーがはぐれた場合は、無理せず一旦戻って連絡するというのがルールになっているので少しすれば二人は戻るだろう。
「まあ、食料と水はあるのでしばらくは何とかなるけど……」
マジックバッグにはいざというときの備えが入っている。
持っててよかったマジックバッグ。
師匠には感謝しかない。
ここにいても救助が来ることは期待できないので取り敢えずは進むことにした。
せっかくなのでマッピングをしながら進むとしよう。
『グルルルル』
進む先に唸り声をあげている大きな影が見える。
「あれは……ワイルドベアー? いや、イエローベアーか!?」
ある部分の毛の色が黄色くなっている。
ランク的にはBランクの魔物のはずだ。
正直俺には荷が重い相手ではある。
くそうっ、こうなったらヤケだっ、俺だってやってやるぜ!
「と思っていたときが俺にもありました」
「キャンキャン」
そう、うちの犬は大変優秀でありました。
祭りのときのオーク狩りも凄かったがシロはあれから毎日たらふくオーク肉を食べて今はあのときよりも身体が一回り大きくなっている。
そんなこともあってかシロが発する魔力の衝撃波に振るわれる前脚の鋭い爪、そして喉笛を噛みちぎる鋭い牙によって瞬く間に魔獣たちは倒されてしまった。
シロが瀕死にしたやつを俺が止めを差すだけといういつかと同じ作業を繰り返すことになった。
俺たちの後ろには倒したイエローベアーの死体がそこらじゅうに転がっている。
人手と運搬手段があれば肉や素材を持ち帰りたいところだがあいにくとそんなものはない。
もったいなくも放置することになるがダンジョンというのは不思議なもので魔物や魔獣の死体は時間が経つと消えてしまうのだ。
消えるまでに解体をしてしまえば資源として持ち帰ることはできるので素材目当ての狩りをやろうと思えばできなくもない。
しかし今はダンジョンから脱出することが第一なのでこれらは当然放置だ。
進む道もシロが鼻で臭いを嗅ぎながら進んでいくのを俺はその後をついて行く。
そんな中、とある部屋の横を通ったときに俺はふと気になって足を止めた。
「シロ、ちょっと待ってくれ」
俺は先に進むシロを呼び止めてその部屋の中へと入った。
その部屋は壁が青白い光を放つ鉱石がところどころにある不思議な部屋だった。
「これはなんだ?」
錬金術師にとっては鉱石の精錬は大事な仕事の一つだ。
そんなわけで学院でも一通りの鉱石を見てきたはずなのだがこんな輝きの鉱石を見た記憶はない。
しかし、この特徴で説明される鉱石の存在は知識として学んだことはあった。
それはあまりにも珍しく貴重な存在であるが故にその現物が用意されることはなかったという代物だ。
俺はマジックバッグから金づちを取り出しコンコンと鉱石を叩いて一欠片取り出した。そして解析スキルを使いその成分を確認することにした。
解析の結果は俺の想像した通りだった。
この鉱石の成分は主に銀と魔力の結晶からなる複雑なもので、銀は長年魔力に晒されていたことで魔力と不可分一体となって強く結合している。
その結果、元の銀とは比べ物にならない強度と魔力親和性を有していた。
俺の見立てが確かであれば、この金属の名は魔法銀。
これは世間ではそう呼ばれる超希少金属だ。
「これは凄いぞ!」
俺は興奮気味に金づちでカンカンと鉱石を削り出すとそれをマジックバッグに入れた。
本当ならツルハシを使って大量に採取したいところだが今は遭難しているわけでそこはぐっと我慢してサンプルとなる程度のものを収蔵することで我慢することにした。




