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10 救援活動

 ダンジョンの傍に位置する湖のほとりにある宿泊施設に着くと満身創痍となっている1組の冒険者パーティーの姿があった。


「大丈夫ですか?」


 馬車から直ぐにポーションを下ろしてと俺はそれを差し出した。


「ありがたい、この3日間でポーションは全て使い切ってしまってね」


「あともう一組のパーティーの方はどちらに?」


 ここにいたのはアムレーの街を拠点としている冒険者パーティーだけだった。


「彼らはまだダンジョンの中だ」


 そのリーダーであるアルバさんがダンジョンに視線を送りながらそう言った。


 聞くところによると二つの冒険者パーティーは協力し合いながら少しずつ奥に向かったらしい。


 そして、一日目の夜は2つのパーティーともダンジョンの外に戻ってうちの村が持っている宿泊施設に泊まったそうだ。


 二日目も協力しあってダンジョンを進みついには2階層にまで進んだという。


 そこで夜になって二つのパーティーはダンジョン内で野営することにして、そのままダンジョン攻略を進めたらしいのだが……。


「三日目になって、ポーションの手持ちも少なくなったんだけど、あと少し、あと少しって欲をかいてしまったんだ……」


 その結果、ダンジョンの奥深くにまで進み気付いたときにはポーションは枯渇し魔物たちに囲まれてしまったという話でアルバさんたちは何とかダンジョンの外まで逃げることができたそうだ。


「では、もう一組のパーティーは……」


「詳細は分からない。魔物に囲まれたところで俺たちは分断されてしまったんだ。彼らは俺たちよりもポーションを多めに持っていたみたいだからしばらくは大丈夫かもしれないが、あの様子だと遅かれ早かれだろう」


 アルバさんたちもダンジョンからの撤退の際に命に別状はないとはいえ怪我を負い、ダンジョン内に取り残されたパーティーがいるということで閃光弾による緊急連絡となったようだ。


「それなら救出に向かわなければならないだろう」

「1階層の魔物はあらかた倒しているから2階層まではスムーズに行けるはずだ。案内するから力を貸して欲しい。ただ危険だから魔物との戦闘はなるべく避けてくれ」


 俺たちの話を聞いていた救援隊のメンバーの言葉にアルバさんは渡りに船といった様子で俺たちに協力を依頼した。


 俺以外は元よりそのつもりで来たわけで、俺たちはポーションで回復したアルバさんたちと共にダンジョンに潜ることになった。





「意外と明るいですね」


 初めて潜ったダンジョンの最初の感想はそれだった。


「理由は分からないがダンジョンというのはそういうものだよ」


 アルバさんのその言葉に他の団員たちも不思議そうにダンジョンの中を見回している。


 アルバさんの言ったとおり、1階層には魔物の姿は見当たらなかった。


 ほっと安心したのも束の間、アルバさんの案内で2階層に降りると直ぐに異変に気付いた。


 明らかに戦闘の気配がある。


 近づくと取り残されていたもう一組のパーティーが魔物から逃げながら戦っているところだった。


 一部のメンバーは怪我をしているのか動きにキレがない。


「助けに来たぞ!」


 アルバさんがそう言って迫る魔物たちの前に駆け出した。


「大丈夫ですか? 怪我をしているみたいですけどポーションが必要ですか?」

「ありがたい、いただこう」


 アルバさんと他の自警団員が魔物たちを足止めしている間に俺は彼らにポーションを渡した。


「くそっ! ブルーベアの群れか、こいつはやっかいだな」


 アルバさんがそう吐き捨てた。


 迫ってきていたのは大きな体躯をした熊型の魔獣で俺の記憶だとCランクの魔獣のはずだ。


 それが群れだと満身創痍のパーティーを抱えては戦闘を継続することは危険だろう。


 それはアルバさんも同じ考えだったようだ。






「よしっ、撤退だ!」


 俺たちが取り残されていたパーティーのメンバーをポーションで治療する間、アルバさんたちがブルーベアを引き付けてくれた。


 そしてアルバさんは彼らがポーションで怪我を癒したことを確認するとそう言って俺たちに早く退避するよう指示した。


「殿は俺たちがする。直ぐに追いつくから先に行けっ!」


 アルバさんたちの声に押されて俺たちは怪我の癒えたばかりの彼らを支えながら足早にダンジョンから脱出した。




「本当に助かったよ、ありがとう」


 ダンジョンを脱出してようやく安心できる場所に戻ったところで救助したパーティーの面々にお礼を言われ俺たちもほっと一息つくことができた。


 話によると、アルバさんたちと別れてからしばらくはまだ残っていたポーションで何とかしのいでいたものの、ポーションが尽きてしまってからは防御に徹しながら何とか戻ろうとしていたらしい。


 そんなところに俺たちが救援に赴いて窮地を脱することができたようだ。


 俺たちが戻ってしばらくしてアルバさんと助力のため一緒に残っていた救援隊のメンバーが全員無事のダンジョンの入口から姿を見せてようやく俺たちの救援活動を無事に終えることができた。


 このあと、今回の救援報酬として、提供したポーションの代金に冒険者ギルドでの相場の救援費用の他、この2組のパーティーが今回のダンジョン探索で得たダンジョンの情報を提供してもらうことになった。

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