19 仮封印
「空間が……」
あまりにも濃い魔力が漂っているからか空間が、空気が波打つように揺らいだ。
「魔素もかなり強いですね、しかしこれは……」
ソフィアさんが岩をコンコンと手で叩いたり顔を近づけるなどして観察する。
岩の近くまで来てよく見ると岩の表面は既にボロボロでところどころ穴というか隙間が空いていた。
その隙間から魔力や魔素が漏れ出ているようだ。
「どうやら中は空洞になっているみたいですね? いったい何なのでしょうか?」
そう言ってソフィアさんの顔を見る。
「…………」
「ソフィアさん?」
ソフィアさんはこれまで見たことがないほどの深刻な顔をしていた。
初夏の暑さからかそれとも別の要因か。
ソフィアさんの額には汗が滲み一筋汗が零れた。
「ああ、すみません。まだ決まったわけではないのですが、一つ心当たりがありまして」
「心当たり、ですか?」
「ええ、もしコレがそうならちょっと大変なことになってしまうわけでして……」
ソフィアさんが何とも言えない表情を浮かべる。
「大変なことに、それはいったい……」
ソフィアさんは一拍置いてゆっくりと口を開いた。
「ダンジョンです。ここはダンジョンの可能性があります」
「ダンジョン!」
冒険者でもない一介の錬金術師に過ぎない俺でも知っている。
魔力や魔素が濃く、そのため強い魔物や魔獣が蔓延ると言われている特殊な場所だ。そこではなぜか高価な素材やお宝が見つかるという不思議空間でもあり、冒険者たちが一獲千金を目指して潜るという場所でもある。
その一方で、ダンジョンはその存在自体が危険なものだ。
ダンジョンの中にいる魔物は魔力や魔素が濃く、過ごしやすいダンジョンの中に基本的にいるとされる。
しかし、ダンジョン内部で魔物の数が多くなり過ぎると魔物がダンジョンから溢れ出てくるということもあるらしく、ダンジョンの周囲に住む者からすれば常に危険と隣り合わせの場所にいるということになる。
なぜダンジョンが発生するかということは未だに分かっておらず、学者連中が侃侃諤諤意見を戦わせていると学院の授業でも習ったことがある。
「もしもここが本当にダンジョンであるならばこのまま放置しておくことはできません。直ぐに村長さんに報告して調査する必要があるでしょう」
ソフィアさんはそう言ってダンジョン(仮)に仮の封印をしておくという。
封印によって中の魔力や魔素が漏れなくなるだけでなくダンジョンから魔物が出てくる万一の事態も防ぐことができるそうだ。
俺たちがこの場所を離れている間にダンジョンが完全に外部と繋がり、中から魔物が溢れてくることがあっては目も当てられない。
ダンジョン(仮)の仮封印をすると俺たちは直ぐに宿泊施設へと戻った。
戻ると既に村長さんが俺たちの迎えに来ていた。予定ではゆっくりお昼ご飯を食べてから村に戻ることになっていたのだが状況が状況だ。俺たちは村長さんに森の中で見つけたダンジョンらしきものについての報告をした。
「それは一大事だ! 直ぐに村に戻って調査の準備をしよう」
こうして俺たちは慌ただしくバカンスを終えることになり、急いで村へと戻ることになった。




