12 簡単なお仕事
「キャンキャンキャン」
俺がのんびり村の外を歩いていると後ろからそんな鳴き声が聞こえてきた。
「シロじゃないか」
いったいどうしたというのだろう。
まさかお伴で俺についてきてくれるとでもいうのだろうか。
俺のところで止まったところを見ると本当に俺と一緒に行く気なのだろう。
今回のオーク狩りでは俺は鉄の剣を武器にする。
間違って分解スキルを使おうものならオーク肉まで粉みじんになってしまうし何よりも多数を相手にするには向いていない。
そうして10分ほど歩いていくとその先から怒号が聞こえてきた。
どうやら戦闘は既に始まったいるようだ。
俺も早足でその場へと向かうと集団の中から一体のオークが飛び出してきた。
「よし、最初はあいつにするか」
俺は鉄の剣を手に持って小走りでそのオークに向かっていった。
俺が向かっていくのに気付いたのかそのオークも俺に向かってきた。
その手には木の棒というよりは棍棒といった方がいいだろうか。
そんなものが握られている。
動きは大して早くはないが万一攻撃を受けてしまうとそれなりのダメージを受けそうだ。
俺は注意しながらもオークとの距離を詰めた。
――しゅばばっ!
俺の視界の端を白い塊が光のように駆けていった。
「えっ?」
「わおぉぉぉぉ~ん」
さっきまで俺の側にいたシロが雄たけびを上げながらオークとの距離を一瞬で詰め、目に留まらぬ早さでオークの喉笛に噛みついた。
「ぐぎゃっ」
オークは喉笛を食いちぎられた挙句にシロに押し倒される。
血が溢れ、その身体はびくんびくんっと痙攣していた。
シロは『俺の仕事は終わった』という様子で倒れたオークの傍で毛づくろいを始めた。
「止めを刺しておくか……」
俺はまだ息のあるオークに鉄の剣を突き刺して間違いなく仕留めた。
「わおーーーーん!」
シロが大声で雄たけびを上げると触れもしないのに目の前にいた二体のオークが一瞬のうちに吹き飛んだ。
理屈は分からないが何か魔法かスキル的なものなのだろうか。
俺は倒れてびくびくと痙攣しているオークに続けざまに止めを刺した。
これで何体倒しただろうか。
ぶっちゃけ俺が特に何をしたというわけではない。
目の前で瀕死になったオークに止めを刺すだけの簡単なお仕事です。
そう、俺のしたことのほとんどがそんなことの繰り返しだった。
この辺りの魔物にしてはランクの低い、正真正銘のドノーマルオークということで俺でも1対1で戦っても何とか勝つことはできる。
いちおうシロ抜きでもわずかながらオークを倒すことができた。
一段落ついて周りの様子を見るとさすがにオークの数が多いためか他の団員たちも最初は元気だったものの次第に体力切れという人も多いようで徐々に狩るペースは落ちてきている。
「お前は元気だな」
「ワンワン」
じゃれてくるシロを撫でてやる。
正直、俺が倒したオークのうち9割はこいつの手柄だ。
これではどっちがお伴かわからない。
余裕ができて、それにしてもと周囲を見渡す。
この乱戦の中、自警団の面々は実際に戦っている主に若手連中と倒されたオークを後方へと運ぶ運搬要員とに別れている。
運搬要員を担っているのはどちらかといえば年齢高めな団員たちで、それ以外にオークにやられそうなメンバーの援護をしたり、不覚をとってやられたメンバーを介抱したりと様々な面で裏方に徹してくれている。
「おっと」
一対一で戦っていた仲間を背後から攻撃しようとしていたオークがいたのでそいつを俺が仕留めてやった。
「兄貴、ありがとうございます」
どうやら助けてやったのはガオンだったようだ。
どうしてもこういう乱戦になると隙ができてしまう。
とはいえ、相手は格下扱いで多少怪我を負っても誰かが助けてくれるだろうしポーションもあるしということで今回のイベントは戦闘としては雑に扱われているようだ。
「そろそろ倒し終わったんじゃないか?」
まだ散発的な戦闘は続いているようだがもう時間の問題だろう。
「よし、もういいだろう。総員撤収だ! 全員で運ぶぞ」
副団長の号令で俺たちは村へと戻った。
【新作のご案内】(7/2投稿完結済み)
ジャンル違いで恐縮ですが新作を投稿しました(全6話・約1万5000字)。
『王太子殿下は真実の愛を貫きたい』
https://ncode.syosetu.com/n4251hb/
実質短編作品です。
初めての異世界恋愛ジャンル作品です。
ジャンル的に女性向け作品ではありますが、男性の方も楽しめる内容の作品です。
むしろ私が書いているので男性の方が共感できるかもしれません。一応純愛ハッピーエンド(のつもり)です。
是非一度覗いてみて下さい。
これ本当にお前が書いたのか? とおっしゃっていただける仕上がりになっていると思います。
(ありがたいことに今朝のジャンル別日間ランキングに載せていただきましたので内容がひどくて読んで損したということにはならないと思いますよ)。




