11 夏の〇〇〇祭り
村の入口にある広場へと着くと既に多くの自警団のメンバーが集まっていた。
団長のカインさんを始め、主力のメンバーだけでなく、ちょっと年配の元自警団のメンバーだった人もいる。
それにしても今から敵を迎え打とうという切迫感はあまり感じられない。
みんなそわそわ、うきうきといった楽しそうな表情を浮かべている。
「なあ、いったい今から何があるんだ? 何と戦うんだ?」
俺は近くにいたガオンに正面から聞いてみた。
「オークですよ。オークの群れが近づいてきているんです」
「えっ!?」
それって大変なんじゃ?
どうしてみんなウキウキウォッチングなんだ?
俺が更に混乱しているとカインさんが俺たちの前に立って話を始めた。
「みんな、今から『夏のオーク祭り』の始まりだ。狩って狩って狩りまくれ!」
「「「「「おおー!!!!!」」」」」
ビリビリするような男衆の叫び声が大音量で響いた。
えっ、何それ?
オーク祭り?
初めて聞くんですけど?
「へへっ、腕が鳴るぜ」
「ああ、この日に備えて訓練を積んできたからな」
まだ混乱している俺をよそに周りの団員たちはそんな会話をしている。
「よし、行くぞ! 野郎ども、突撃だー!」
「「「「「うおおぉぉぉー!!!!!」」」」」
カインさんの号令で周りの男衆が掛け声を上げると一斉に駆け出した。
さっきまで俺の傍にいたガオンも駆けていき、あっという間に行ってしまった。
「どうした? 行かないのか?」
茫然とその場に立っていた俺にカインさんがそう声を掛けてきた。
というかまだまったく状況が理解できていないんですが。
俺はカインさんに改めて今回のことを聞いてみることにした。
話を聞くと、年に1回、この時期にオークが大量発生してそれを自警団総出で狩るらしい。
それによって得られる大量のオーク肉はこの村に備蓄される食糧として重宝するんだとか。
狩りをしたその日の夜は、オーク肉をふんだんに使ったバーベキューパーティーなので今から村の女性たちは準備に大わらわというのが事の真相らしい。
「オーク祭りで暑気払いをしないと夏は乗り越えられねぇーからな」
「おうよ、今夜のエールが楽しみだぜ」
自警団のOB連中がそう言いながら談笑している。
カインさんたちは討伐には参加せずにここに残るようだ。
他にも自警団のOB連中だけでなく女性の姿もある。
「ここは臨時の解体場になるからな。今日は忙しくなるぜ」
カインさんが腕まくりをしてその太い腕を露わにした。
「それにしてもみなさんやる気満々でしたね」
「この祭りで活躍すると女の子にモテるからな」
なるほど。
それは重要だ。
祭りでは誰が一番多く倒したかという競争になっていて結構盛り上がるそうだ。
この村の周辺に出る普通の魔物に比べてオークはかなり弱いためこの村の人たちにとってはボーナスステージみたいな扱いらしい。
まあ、CランクのキラーラビットをEランクの角ウサギとか言って狩ってる連中だから普通のオークとかなんかはカス扱いなんだろう。
俺は『行かなくてもいいのか?』という視線を感じたので「ほどほどに頑張りますよ」と返して、のんびりオーク狩りに向かうことにした。




