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10 非常招集

 

 ――トントントントン

 


 トンカチで板に釘を打ちつけると俺は額の汗を腕で拭った。


 季節はもう初夏という時期で日差しは日に日に強くなる。


 それに合わせるように工房の裏にある幼女の植えた木もぐんぐんと大きくなっていった。


 今や大樹と呼んでいいほどに育った。


 そんな大樹の傍には幼女とよく一緒にいる白い犬が住み着いてしまった。


 まだ子犬のようで甲高い声で鳴くものの変に吠えたり、人に危害を加えるような行動をしないのでそのままにしていた。


 俺も餌をあげたり、ブラシをかけたりしているので、多少は懐いてもらえたように思う。


 どうやら本格的にこのまま居つくみたいなので今日は犬小屋を作っているところだ。


 最近顔を合わせてなかった木工屋のマイクさんの店で適当な板を買ってノコギリで切ったり釘を打ったりという作業を続ける。


 そうして半日してようやく小さな犬小屋ができた。

 

「キャンキャン」


 どうやら犬にも喜んでもらえたようだ。


 最後に犬の名前を書いたプレートをつければ完成なんだがそういえばこの犬にはまだ名前がない。


 ブラシをかけているときから思ったがきれいで手触りのいい毛並をしている。毛の色は白というか白銀とでもいうのだろうか。


「取り敢えず『シロ』でいいか」


「キャンキャン」


 毛の色から安直ではあるがそう呼ぶことにした。


 犬も特に反対の様子はないのでこの犬は『シロ(仮)』ということで俺の中では落ち着いた。


 それにしてもこの犬、育ち盛りなのか最近やたらと餌を食べる。


 犬が何を食べるのかよくわからなかったのでいろいろと食べさせてみたのだが、どうやら肉を与えたときが一番食いつきがいいようだ。


 将来身体が大きくなるかもしれないので小屋も多少大き目に作っておいた。


これでしばらくは大丈夫だろうが逆に餌代の方が心配だ。



 ――カン、カーン、カン、カーン、カン、カーン



 道具を片付けて工房に戻ろうと思った矢先。


 村の入口にある見張り台の半鐘が叩かれる音がした。


 村の半鐘は非常事態を村中に知らせる音。


 そしてそれが叩かれる場合は大きく分けて2つある。


 一つは火事。


 そしてもう一つは外部から村への攻撃だ。


 火事の場合は「カーン、カーン」と長く、外部からの攻撃の場合は「カンカンカンカン」と切迫した短い音だと聞いていたが今回の鐘の叩き方はどちらなんだろうか?


 どちらでもあるようだしどちらにも当てはまらない。


 そうこうしているうちに村中の人たちが慌てて道を走る姿を目にするようになった。


 自警団の面々だけでなく、大人の女性たちも慌てて走っている。


 ますます一体なんなのかがわからなくなった。


 そんな中、宿屋の娘のレナちゃんが走ってきたので慌てて呼び止めた。


「お兄さん、なに? 今急いでるんだけど?」


「いや、一体何があったのかと思って」


「何がって、ああ、お兄さんは初めてか」


 この言い回し、最近聞いたような気がするな。


「お祭りよ、お祭り!」


 レナちゃんが興奮したようにそう連呼した。


 しかし、そんないきなり始まるお祭りがあるのだろうか?

 

 俺が首を傾げていると今度は武装したガオンが走ってきた。


「兄貴、非常招集です。戦闘準備をして村の入口に集合です!」


 いや、申し訳ないんだけど何がどうして何とやらなんだが。


 結局、祭りなのか、防衛戦闘なのかどっちなんだ?


 俺はわけがわからないまま、工房に戻って急いで戦闘の準備をすると走って集合場所へと向かった。

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