6 魔女の庭
次の安息日。
俺はキャロルと山に柴刈りにではなく採取へと向かう。
この前の茨の王の騒動があってから多少緩められたとはいえ、村の外に出るときは護衛を付けて向かわなければならない。
騒動の直後は自警団でも一線で活躍する腕利きを少なくとも2名は護衛にしなければいけなかったが今は自警団のメンバーであれば誰でもいいという扱いに変わった。
せっかくの休みの日ではあったが俺たちに付き合ってくれた護衛は安定のガオンとヘンリーといった若手二人だった。
二人はあれから俺が改良した地竜の鱗を重ね張りしたラージシールドを持っている。
深手を負った茨の王が他の地域に移ったのかそれともまだ近くに潜んでいるのか誰にも分からない。そういった理由で護衛役は基本この装備を持つことになっている。
「そろそろ暑くなってきたね~」
「もうすぐ夏だからな」
長袖シャツの胸元をパタパタとさせるキャロルの方に目を向けないようにしながらそう返した。
山道を登ると例の場所へとたどり着いた。
「……相変わらず凄い光景だな。これを街に持っていったらかなりの金になるんじゃないか?」
目の前には錬金素材となる草花が青々と茂っている。
「でもそれはできないんだよ」
「できない?」
「そう、この村のルールでね。自分が使う分には持って行ってもいいけどその物を販売というか転売目的で持っていったらダメなんだよ」
まあ、そうでもしないとアッという間に根絶やしになってしまうだろうからな。
どうせ俺は自分で使う素材としてしか持ち出さないから全く問題ないからいいんだが。
冒険者にとってここは金の成る木だろう。
「冒険者志望のガオンにとっては悔しいんじゃないのか?」
「いえ、昔から度々きつく言われていますから」
「魔女の呪いとか怖いですからね」
「魔女の呪い?」
ヘンリーの言葉に俺は首を傾げた。
「ここは『魔女の庭』って呼ばれてるの。ここを荒らすと魔女に呪われるのよ」
キャロルはそう言いながらも手早く馬の餌にする大魔草を刈っては大きな竹籠にポンポンと積んでいく。
魔女か……それなら他にも何かすごいものがあるかもしれない。
俺はちょっと探索範囲を広げて他にも使える錬金素材がないかを探すことにした。
ガオンにも手伝ってもらって周囲に何か変わったものがないかを探して回る。
「この辺りはだいたい見て回ったな」
「兄貴、まだ奥に続く道がありますよ」
「じゃあ、そっちに行ってみるか」
山の奥へと続く獣道をガオンと一緒に進んでいく。
この獣道の両側には背丈の高い草花が生い茂っている。
錬金素材となる草花は一般的に魔力の濃い場所に生えると言われている。
普通の山や森なんかでもスポット的に魔力溜まりになるような場所に良く生えている。
その一方で魔力の濃い場所は魔物や魔獣も好むという話もある。
俺は頭ではそのことは知っていたし理解していたつもりだった。
だから警戒するべきだったのだ。
この場所にアレがいるかもしれないということを。




