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5 肥料

 翌日。


 朝からソフィアさんとともに幼女がやってきた。


「お水をあげにきたの」


 昨日植えた木の種に水をあげにきたようだ。


 昨日の今日で変化なんか起きようもないだろうがやはりこういうものはワクワクするものだ。


 せっかくなので俺もこの庭の錬金素材となる植物にも水をやろうと如雨露に水を入れて一緒に庭に出た。


 まずは庭の素材植物に水をやって昨日幼女が木の種を植えた工房の裏へと回った。


 あれ?


 目の前の景色に違和感を覚える。


「大きくなったの」


 幼女が仰ぎ見る。


 昨日種を植えた場所には俺の背丈を超えた2メートルくらいの木が生えていた。


 幹はまだ細くひょろりとしてはいるが確かに生えていた。


 そんな木の根っこに幼女が楽しそうに如雨露の水を撒き始めた。


 へー、木ってこんなに早く大きくなるんだ、知らなかったな~。


 この2か月の間、俺はちょっと頑張り過ぎたみたいでどうやら疲れが溜まっているようだ。


 俺はフラフラと工房の中に戻ると『臨時休業』の木札を取り出した。


 それを入り口のドアに掛けようとしたところでちょうどやってきたお客さんから声を掛けられた。


「あれ? ブラン、今日は休みなの?」


「キャロルか、いやちょっと疲れているようだから今日は休みにしようかと思ったんだ」


「なら出直そうか?」


「いや、大丈夫だ。それで何が欲しいんだ?」






 臨時休業の札の代わりに『お出掛け中(村内)』の札を下げてキャロルとともに農場へとやってきた。


「おう、錬金術師の兄ちゃんじゃないか」


 村に来てから2か月。


 俺もそれなりに村に馴染むことができて声を掛けてもらえるようになった。


 俺がやってきたのはキャロルの家の農場だ。


 実は1か月前からここでちょっとした実験をさせてもらっている。


「こっちがいつも通りに育てた方、そっちがブランの肥料を使った方だよ」


 農場には柵やロープで区分けがされている。


 ふむ、俺の錬金タイプの肥料を使った方が圧倒的に育ちがいいな。


 当初錬金タイプの肥料を村人たちに勧めてみたのだが残念なことに食いつきが悪かった。


 現状、特に問題がなければ何か新しいことをやってみようという動きにはどうしてもなれないらしい。何か新しいことをやって上手くいかなかったらどうするんだ、っていう考えの方が大きいのがその理由だ。

 要は、いつもどおりにやっていればいつもどおりの結果を得られただろうに、何か新しいことにわざわざ手を出していつもより悪い結果になるリスクは犯せないってことだった。

 それならばとどこかの畑を借りてそんな考えを吹っ飛ばすくらいのメリットを提示してやればいいと思って声を掛けたのがキャロルだ。

 キャロルの親御さんの了解ももらって畑の一部を借りてその比較実験をすることになった。


「それでお父さんから今度は他のところにも肥料が欲しいって」


「わかった。いつまでにどのくらい用意すればいい?」


 今回実験に使った肥料の量を基準にできるのでおおよそどのくらいの量が必要かを聞いてメモをする。


 俺とキャロルが畑の前でそういう話をしていると他の農家の人たちも集まってきて自分のところでも試してみたいと言われた。



「材料が足りないな……」


 一通り注文を受けて俺は材料の在庫と照らし合わせてそう結論付けた。


 以前キャロルに案内してもらった山には必要となる素材が大量にある。他にも探せば見つかる素材もあるかもしれないし久しぶりに自分で行ってみるか。


「なに? 山に行くの? だったらあたしも行きたいな。ちょうど草が足りなくなったの」


 キャロルの言う草とは大魔草のことだ。


 キャロルの家は馬も飼っていて馬に大魔草を食べさせている。


 この村と街をつなぐ馬車を牽く馬はキャロルの家が育てた馬らしいがそんな育て方をしているからあんな立派な体格の馬になったんだろう。


「じゃあ、今度の休みのときにでも一緒に行こうか」


 こうして俺たちは一緒に山に素材採りに行くことになった。

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