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3 おくすり

「村を回ってみたが誰も心当たりはないそうだ。時間も時間だったから全ての家を回れたわけではないけれど」


 既に日がとっぷりと暮れたころ。


 村長さんは俺にそう報告してくれた。


「ではいったいこの子は」


「それはわからん……」


 盗賊や魔獣が闊歩するこの世界に村の外から幼女が1人でやってこれるとはとても思えない。


 そうするとこの村の入口に捨てられたかこの村の近くで保護者とともにいるところを襲われて散り散りになりこの村にたどり着いたか。


 それ以前に本人に名前を聞いても自分の名前も分からないと言われてしまったので保護者を探すのにもかなり苦労しそうだ。


「この子の保護者を探すのは明日から再開するとして今日はどうしましょうか? 一人にしたまま放っておくことはできないでしょう」


「ああ、それなら大丈夫だ」


 村長さんが自信あり気にそう言い切った。






「はい、確かにお預かりしました」


 俺が村長さんと訪れたのはこの村の外れにある教会だ。


 司祭のソフィアさんを訪ねていきさつを説明し、しばらくこの子を預かってもらうことになった。


 教会には孤児院も併設されている。

 今は誰もいないという話だが何かがあって両親を失い、周囲に引き取り手がいない子供は教会の孤児院に引き取られることになっているそうだ。


 ちなみに孤児院の運営には村からお金が出るそうなので費用の心配はいらないらしい。


「おにいちゃん、またね~」


「ソフィアさんの言うことをよく聞くんだよ」


 頭を撫でると幼女は嬉しそうな表情を浮かべた。


「この子はブランさんによく懐いていますね」


「そうですか?」


 まがりなりにも半日一緒に遊んだ間柄だからか俺には気を許してくれているのかもしれない。


 早く保護者が見つかればいいがどうなるだろうか。


 俺と村長さんは揃って教会をお暇すると暗い夜道を二人で歩いた。


「明日、改めて村の人たちに聞いて回ろうと思う。念のため街に行ったときには行方不明の子供の届けが出ていないかを確認しておこう」


「お願いします」


 村長さんとそう言って別れて俺は工房へと戻った。


 思いがけないことがあって今日はゆっくりしていたはずが結局はドタバタしてしまった。


 自宅に戻って着替えようとズボンに手を掛けるとポケットの中に何かあることに気付いた。


「ああ、そういえばコレを入れていたな」


 幼女にもらった小瓶を取り出してそれをマジマジと眺める。


 これは一体なんだろうか?


 小さな子が持っていたものだし毒とか劇物ではないと思うが一応確認しておく必要があるだろう。


 俺は錬金術の一つである『解析』を使ってその小瓶の中身を確かめることにした。




「嘘だろう……」


 解析を行った結果、目の前にあるモノはとあるアイテムである可能性が極めて高いという結果になった。


 解析を使ったからといって俺の目の前にそのアイテム名が表示されるわけではない。

 解析した結果データを元にしてこれまでの知識と経験から目の前のものが何であるかについての判断を行うのはあくまでも自分自身だ。


「エリクサー……」


 俺の目が節穴でなければ目の前のアイテムは伝説のアイテムと言われる物だ。


 怪我をたちどころに治し、部位欠損すら回復させるその性能はポーションと一線を画す。


 どんなに重篤な病気でも立ちどころに治癒し、それまでに失われた体力すら元通りに回復する万能薬の上位版でもある。


 小さなお医者さんからもらったお薬はとんでもないお薬だった。

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