1 日向ぼっこ
「ぽかぽかだね~」
「キャンキャン」
午後にお客さんが途切れたので休憩がてら工房の外へと出ると庭に一人の小さな女の子と白い犬がいた。
庭の芝生に揃って寝転がっている。
いったいどこの娘だろうか?
歳の頃は5、6歳といったところのようだ。
長い薄緑色の髪にシンプルな白色のワンピースを着ている。
この村にきて2か月ほどになるが俺もこの村の全員を知っているわけではない。
よく会う顔見知りはそれなりにいるが、村とはいえ農地の広がるこの村は広い。
それに成人している親御さんを知っていてもその子供たちまでを全て把握しているわけではないからな。
この村の子供たちは手伝いができる年齢になると家業、この村では主に農作業をしていることが多いがこの年齢ではまだ遊びたい盛りなのだろう。
「お嬢ちゃんたち、何をしてるんだい?」
俺がそう声を掛けると幼女と犬がこちらに視線を向けた。
「日向ぼっこなの~」
「キャンキャン」
犬もどうやら子犬のようで甲高い声で鳴いている。
「ふ~ん」
俺も幼女の隣に腰を下ろした。
スローライフを求めてこの村に来たはずなのにずっと働き詰めだった。
もう今日はお客さんも来そうにないし俺もここでのんびりするか。
「モフモフなの~」
幼女が芝生に寝そべる犬に寝掛かりその白い毛並みに頭を預けている。
俺も陽気に誘われて寝転がっているといつの間にかウトウトとしてしまった。
どのくらい経ったかわからないが気が付くと幼女はじゃれ合う犬と遊んでいた。
起き上がって辺りを見回すがまだ陽は陰っておらずそこまで時間は経っていないようだ。
「この犬はお嬢ちゃんが飼っている犬?」
「わからないの」
わからない?
わからないことがわからない……
確かに首輪とかはしていないが野良犬にしては綺麗な毛並みをしている。
きりっとした顔立ちで口から覗く犬歯も鋭い。
というか犬にしては顔立ちがシャープというか迫力がある。
「おにいちゃんは一人なの?」
「んっ、ああ、一人でここに住んでるよ」
「それならわたしが遊んであげるの」
「ははっ、それは嬉しいね」
どこの娘かわからないが本当は自分が遊んで欲しいのだろう。
今は暇だしちょっと相手をしてあげるか。
さて、何をして遊ぼうか。
庭には白い小さな花をつけた白編草という雑草が生えているのでこれで冠を作って遊ぶことができるな。
ボールを投げて犬に拾いに行かせるということもできる。
あと思いつくのはごっこ遊びだな。
お店屋さんごっこ。
ママゴト。
お医者さんごっこ。
最後のはロリにも満たない幼女に欲情するわけもないので純粋な意味での遊びだな。これは間違いない。
「じゃあ、何をして遊ぼうか?」
今考えついた遊びを順に挙げていく。
「う~ん。わたし、お医者さんごっこがいい!」
えっ、マジで。
時が止まった。




