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閑話3 冒険者

※ 第三者視点です

 リセルとマーガレットはアムレーの街でブランたちと別れると宿をとって部屋へと入った。スタンダードな二人部屋だ。


「あ~、肩が凝ったわ」


「珍しくずっと猫を被られていましたね」


「まあ、最初が最初だったしね」


 そう言いながらマーガレットは装備を外してボスンとベッドに腰を下ろした。


「それについては申し訳ございません。不覚をとりました」


「やめて頂戴。あれはわたしを助けるためでしょう? 謝らなければならないのはむしろこちらの方だわ」


「しかし姫様!」


「姫様は止めて。今は冒険者、冒険者のマーガレットよ」


「はっ、申し訳ございません」


 黒髪の従者はそう言って頭を下げた。


「それにしても宝はないかぁ~、一体どこにあるのかしらね」


「村人たちも宝については何も知らないようです。ただ、魔女の伝説のようなものは残っていましたが」


「それも大した話ではなかったけどね」




 かつてこの場所には何もなかった。


 ただ魔女が1人住んでいた。


 そんなところへ戦火から逃れてきた人が1人、また1人と増えていき、いつしか村ができた。


 魔女によって助けられた人たちは魔女がこの地から去った今でも感謝して日々生活している。


 リセルたちが村人から聞いたのはこんな昔話だった。


「そうです、姫……マーガレット様、ブランさんと最後に何か話をされておられたようですが何のお話を?」


「あっ、そうそう」


 マーガレットはベッドから立ち上がりリセルに近づくと小声で囁いた。


「ブランはあなたのこと、女としてかなり高く評価してたわよ。ねぇ、彼なんてどうかしら? かなり将来有望な錬金術師だと思うけど」


「どう、とは?」


「もうっ、わかってるでしょ? 伴侶としてどうかってことよ」


「はっ、はっ、伴侶!?」


 黒髪の従者は目を白黒させた。


「そうよ、そろそろ考えないといけないでしょ? リセルは誰か意中の男がいるの?」


「めっ、滅相もないっ! わたしは姫様一筋です」


「……それ、他の人の前では絶対に言っちゃダメよ。ソッチの趣味だと思われるから……」


 この世界でも同性愛者は存在する。

 しかしその様な性癖が市民権を得るまでには至っていない。


「あっ、申し訳ございません。しかし、姫様」


「姫様は止めて。でもあんな田舎にあのレベルの錬金術師は勿体ないでしょ?」


「確かに。あの若さであの腕前……帝国でも滅多にいないでしょう」


「帝国広しとはいえ一人でもいればいい方、といったところかしら」


 マーガレットはふふっと笑みを浮かべながらリセルから離れると再びベッドに腰を下ろした。


「しばらくは客として上手に付き合っていきたいところね」


「では、当面この街を中心に活動致しますか?」


「そうね、この街でもいいし、辺境伯領の領都ズレスデンでもいいわね。まずは冒険者ギルドに行ってどんなクエストがあるのかを見てからにしましょうか」


 そう言って窓の外へと目を向けた。


 まだ日が高い時間で外からは喧騒が聞こえる。


「宝の探索についてはいかがなさいますか?」


「アレが倒されるまでは動かない方がいいわね。村人たちに変に感づかれるとマズイでしょうし」


「確かに。一度であれば偶々で済みますが熱を入れると疑われるでしょうからね」


 この後二人はしばらくアムレーの街で冒険者として活動し、ほどなくしてズレスデンへと拠点を移した。

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