表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/133

17 魔女の宝

「……『魔女』ってあの『魔女』ですか?」


「はい、このレグナム王国で伝説とされるあの『魔女』です」


 通常、他の国では魔女とは女性の魔法使いを指す一般的な名詞なのだろう。


 しかし、俺たちが住むこの国、レグナム王国では『魔女』という言葉はある特定の人物のみを意味する。


「その『魔女』の宝……ですか?」


「ええ、何か心当たりがあればと思ったのですが……」


 俺もこの前この村に来たばかりということもあるがそんな話は聞いたこともない。


 この国で『魔女』にまつわる伝説や伝承はいくつか聞いたことはあるが宝がどうとかいう話は聞いたことがなかった。


「その表情だとご存じないみたいですね。わたしたちも噂というレベルでしか耳にしたことはないのですが……」


「ええ、初めて聞きましたね。この村に来たばかりということもありますけど。宝とはいったいどういった物なのでしょうか?」


 このレグナム王国の建国に貢献したと言われるのが『魔女』だ。


 むかしむかし、大昔。


 この辺り一帯はまだ国とも言えない小さな部族同士が争い、その勢力を競っていた。


 その中の一つ、その後、レグナム王国を建国する初代国王陛下が出会った一人の魔法使いの女性が後に『魔女』と呼ばれることになる。


 伝説では初代国王陛下が語った理想にその魔法使いが共感して力を貸し、ついに統一国家を建国したという話になっている。


 その功績によりその魔法使いはこの国で唯一『魔女』を名乗ることが許される存在となり、以後、どんなに腕の良い魔法使いであっても『魔女』と名乗ることは許されなかった。


 そんないにしえの魔法使いが残した宝とはいったいどんなものだろうか。


 俺でなくてもこの国に住む者なら気にならないということはないだろう。


「冒険者である身としてはそういった話を聞くと探してみたくなるのがさがというものでして、他の用事クエストに合わせて宝探しをしていたのです。しかし、まさかあんな目に遭うとは思いませんでしたが……」


 リセルさんは力無く「ははは……」と乾いた笑い声を出した。


 これはマズイな。


 まだ精神面は完全に回復していないようだ。


「あっ、そうです。先日いただいた化粧水なんですけど……」


 変な空気を察したのかマーガレットが突然別の話題を持ち出してきた。


 以前にマーガレットから予約注文を受けていたお肌のお手入れセットだが、茨の王対応の準備が終わって直ぐに作って納品していたのだ。


 話としてはしばらく使ってみて大変ご満足いただいたという話だったのだが俺としてはホッと安心することができた。

 師匠直伝レシピで作った物がこれまでクレームを受けたものはないので大丈夫だろうとは思ったが、いかんせん男の俺では品質の良し悪しがピンとこないということもある。マーガレットの反応から流石の効能みたいだしこれからはこういった商品も出していったらいいのかもしれないな。


 俺はせっかくなのでリセルさんやマーガレットから冒険者の視点でどんなものがあったらいいかという話を聞いてみた。


 正直、これまであまり冒険者という人種と関わり合うことはなかったからな。


 これからは街にもポーション以外のものを卸すこともあるだろうし今後は幅広く色々な商品を作ってみるのもいいかもしれない。


 そんな話をしながらこの日の慰労会は過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ