表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/133

16 結果は……

 森の中から甲高い笛の音が鳴り響く。


「合図だ!」


 休憩のために本部に戻ってきていた実働部隊の面々は武具を手に取り急いで森の中へと駆け込んでいった。


 森の中からは連鎖するように笛の音が鳴り続けている。


「茨の王でしょうか?」


「ああ、そういう手筈になっているからな」


 村長さんからそう返事を受けると非戦闘職に過ぎない俺は一緒に森を眺めることしかできなかった。





 にわかに森が騒がしくなってから1時間後。


 森の中からぞろぞろと討伐隊のメンバーたちが帰還してきた。


「面目ねぇ。取り逃がしてしまった」


 実働部隊のリーダーであるカインさんはそう言って結果を討伐隊の隊長である村長に報告した。


 報告内容は実働部隊の一グループが茨の王と思われる特殊個体のマンイーターと遭遇。


 直ぐに笛を鳴らし他のグループに応援を求めたもののそのまま戦闘に突入したようだ。

 当初は茨の王による棘による遠隔攻撃によって防戦一方だったそうだ。鱗の盾で攻撃を凌いでいるうちに他のグループが到着してその加勢を受けたことで反転攻勢に転じることでこちらからかなりのダメージを与えることができ、茨の王は逃げ出したらしい。さらに追い打ちを掛けようと追ったもののかなりの逃げ足で結果はさっきのとおりだ。

 こちらは十分な準備をしていたことで攻撃をかなり防ぐことはできたがそれでも被害はそれなりにあって、用意していた上級ポーションの使用もあったというのが最終的な報告だった。




「壊された盾もあるな」


 俺はといえば帰還してきた面々が使っていた自作の防具を受け取ってその状態を確認していた。

 地竜の鱗を張り付けて作った盾は一部のものは鱗が破損し中には貫通して穴が空いているものもある。この状況を見るだけで茨の王がいかに強力な攻撃をする魔物かがわかるというものだ。


 この日は、日没が近いということもあり俺たちは直ぐに撤収することなった。

 討伐までには至らなかったがかなり深い手傷を負わせただろうということ、こちら側には死者や重症者が出なかったことから討伐隊全体の雰囲気はそれなりに明るいものだった。


「兄貴、お疲れ様です」


 帰りの道でガオンが声を掛けてきた。


「お前もお疲れだったな」


「いえ、うちは茨の王とは対峙してませんから」


 ガオンのグループは森の中で何体かの魔物を倒したものの茨の王との直接的な絡みはなかったようだ。


「もし俺の目の前に出てきたんだったらバシっと倒してやったんだけどな~」


「角ウサギすら碌に倒せないくせに言うじゃないか」


 俺たちの会話を聞いていたのだろう、俺たちよりも年上の自警団の面々が話に入ってきた。


 そんな取り留めもないやりとりをしながら村へと戻るとちょうど日が暮れる時間だった。



 村に戻ると食堂では今日の森狩りの慰労会が行われた。


 食堂には参加者全員が入りきらないので野外にもテーブルや椅子を並べての大掛かりな食事会になった。森狩りでは魔物の新鮮な肉も獲れたこともあってそれらもふんだんに使われた。そんな理由でこの日の食事はなかなかに豪勢なものとなった。





「ブランさん、お疲れ様でした」


 俺が陣取った野外に設けられたテーブル席にやってきたのはリセルさんとマーガレットだった。


「いえ、俺は森の中には入っていませんから」


「それでもブランさんの上級ポーションも使われたという話ではないですか。それだけでも大きな役割だと思いますよ」


「そうでしょうか? まあ、そう言っていただけると嬉しくはありますけど。ところでリセルさんは身体の調子はもう良くなりました?」


「ええ、もうすっかり大丈夫です。元々、ブランさんのポーションで身体の傷自体はほぼ回復してましたから」


 大きな怪我を負った場合、身体そのものよりも心というか精神的な問題が残ることがある。


 そちらもゆっくりと養生したことで徐々に良くなったようだ。


「それにしても森の中にあんな危険な魔物がいるなんて思いませんでした。リセルさんたちは何かのクエストであの森の中へ行かれたのですか?」


 俺の質問にリセルさんは一瞬口を噤んでチラッとマーガレットに視線を送った。視線を受けたマーガレットは一瞬躊躇するような素ぶりを見せたが、一拍置いて軽く頷きを返す。それを見たリセルさんは俺に顔を近づけると声を落として話し始めた。


「ブランさん、『魔女の宝』をご存知ありませんか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ