14 テスト
――ガンっ
鉄の剣で盾を打ち付ける大きな音がする。
しかし盾を持つ俺には何もダメージはない。
盾を持つ手に多少の振動があった程度だ。
「うわっ、固ぇ~」
試作品第1号ができた後、たまたまガオンが工房にダベリに来たのでちょっと協力してもらうことにした。今は工房の庭でさっき作ったばかりの試作品の強度テストの真っ最中だ。
ガオンは剣を持っていた右手が痺れたのか手をブラブラとさせる。あっちにはかなりの振動があったようだ。
「兄貴、この盾凄いっすね。ちょっと借りていって俺らで試してみてもいいっすか?」
「ああ、是非色々やってみて戦闘にちゃんと耐えられそうか試してみてくれ」
「了解っす!」
ここ最近はガオンたち自警団の若い連中も「茨の王」の存在に刺激を受けたのか以前にも増して訓練に力が入っているようだ。ここ最近は毎日の様に訓練しているらしく、その訓練で試作品の盾も使ってみるということだった。
竜の鱗自体はそれなりの強度があるだろうが、接着剤との接合がきちんとできているかや盾のベースとなる部分の強度との兼ね合いなども総合的に確認する必要がある。そのためには実際に訓練で使ってもらうことが一番確実だろう。
ガオンが帰ってから俺もまたいくつかの試作品を作り、俺は俺で今度は物理攻撃以外に耐えられるかをテストしてみることにした。
茨の王はまだ完全にその生態が判明している魔物ではない。
そのため可能な限り色々な攻撃を受けることを想定して何が防げて何が防げないのかを事前に把握することは大事なことだ。
まずは火で炙ってみる。
多少の煤はつくが鱗自体に影響はないみたいだ。
次に酸や腐食液をかけてみる。植物系の魔物はこういった特殊攻撃をする個体がいることは既に知られている。そのため、こういった攻撃を受ける可能性もゼロではない。
結果は良好。
さすがは竜種の鱗だ。
あとは魔法耐性とかも見ておきたいところだが、魔法使いの知り合いもいないし魔物相手を前提にするのであればそこまでしなくてもいいだろう。
今のところ結果は良好ということで盾はこれでいいとして次に鎧を作ってみるか。
そう思った俺は盾のときと同じ要領でベースとなる鎧に鱗を接着剤で張り付けるということを始めた。
盾のときと違い、鎧は面積が大きいのでかなりの量の接着剤が必要となったが、この接着剤を作るのはそこまで難しい錬金ではないので、そんなに時間を掛けずにそれなりの量を用意することができた。
ペタペタと鱗を張り付けて簡単に地竜の鱗で覆われた鎧を作ることができた。
翌日、ガオンが工房にやってきて仲間内で盾をいろいろと試してみたという話をしにきたがかなり評判が良かったらしい。たまたまその訓練を視察に来ていた村長さんや自警団OBの人たちにも見てもらい、これなら大丈夫という太鼓判をもらえたそうだ。
そういうわけで村からは正式にこの鱗の盾と同じような防具類もあればということで発注があった。
ただ、「茨の王」対策としてはベースとなる盾は試作品よりももう一回り大きなラージシールドの方がいいという指摘があったので、ラージシールドをベースに作っていくことになった。
試作品は廃棄品をベースにして作ったが、村長さんたちからは現行品をベースにして作ってもいいという話をもらったので、倉庫に行って新しい古いに関係なくとにかく使いやすさの点で優れたものから順にベースにしていくことにした。
こうして俺はポーションと防具の準備を進めていった。
そして2週間の間にかなりの数のポーションと防具を納品することができた。
村としても村の外にある脅威をそのままにしておくことはできない。
村の外での活動が制限されることは日常生活や生産活動への脅威となるためそれを排除することを村は正式に決定して動くことになった。村は元々討伐を外部の冒険者に依頼するということは考えていない。
この村ではこれまで自分たちのことは自分たちでしてきたという伝統があり、それが村人たちの自負だそうだ。まあ、元々は外部の冒険者に依頼しても辺境過ぎて来てもらえなかったり費用が馬鹿高かったりということもあったのだろう。
兎にも角にも、いよいよ村の自警団のメンバーを中心とした『茨の王(仮称)討伐隊』が結成されることになり、森狩りが行われることになった。




