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4 探索

 ソフィアさんの話を聞いて数日。


 俺は考えていた。



(何かいい方法はないだろうか?)



 この村の人たちは何故か一人前の冒険者以上に腕の立つ人が多い。


 それならばわざわざ他の街から冒険者を連れてこなくてもこの村の人たちに護衛を頼めばいいのではないか。


 ただ、いきなりソフィアさんにこんな提案をしても戸惑うだけだろう。


 それならば、まずは俺自身の問題として村長さんに話をもっていってみよう。


 最近は商業ギルド経由で商店から錬金素材を仕入れている。


 しかし、遠くから運んでくるからだろう。品質はそこまで良くはなく、せいぜい並みの物ばかりだ。


 そんな品質の素材からだとできるものもやはりそれなりの物しか作れない。


 商売という視点からすればそれならそれで、つまり品質相応の値段で売ればいいのだろうが、一錬金術師としては職人というか仕事人としてそれはやはり負けた感があるのだ。


 どうせ作るのであれば、やはりより良い物を作りたいというのは物を作る職業の人であればわかってくれるのではないだろうか。


 そのためにはこの村の周りで採取できる素材については自分で採取するのが一番だ。


 この村での生活も落ち着いてきたし、ちょうどこの村の周りで採れる素材についてもそろそろ調べておきたいと思っていたところだ。うちの工房の庭に錬金素材となる植物が生えているくらいだから、多少は期待が持てる。


 そういうことで俺は村長さんに、村の外で採取できる素材がないか調査をしたいから村の人たちに護衛を頼めないかと相談してみることにした。




「勿論いいよ。うちの村人への仕事になるのであれば現金収入にもなるし、こちらとしてもありがたい。村の外での護衛の仕事を希望するかや対応できる時間をみんなに聞いてからきみに伝えよう」


 村長さんからはかなり前向きな話を聞くことできた。


 護衛の報酬も「別に冒険者じゃないし」ということでかなり安い費用でやってもらえることになった。


 基本的には、自警団のメンバーや元自警団員というOBが引き受け手になるという話だ。


 ただ、冒険者に払う場合と比べてあまりにも安い報酬だったので護衛中に使うポーション類は俺の持ち出しでいいと言うとめちゃくちゃ喜ばれた。


 それからはとんとん拍子に話が進み、工房が休みの日に合わせて調査のため村の外に出ることになった。






「兄貴、おはようございます」


 この日、俺の護衛役をやってくれるのは自警団の見習いポジションのガオンと俺の護衛を自称するヘンリー、それから自警団から肉屋のカインさんの友人で、この前、ドラゴンとやりあって怪我を負ったボルドーさん、そして自警団OBだというサイモンさんの4人だった。


 どうも護衛活動は自警団の訓練にもなるという扱いになったらしい。


 訓練の一環として若いやつを積極的に参加させ、その一方で何かあっても大丈夫なようにお目付け役となるレベルの人を1人は入れて戦力に偏りがないようにしてくれるようだ。


 今日俺たちが向かうのは、この村の北西にある小高い山だ。


 とはいえ、山裾をメインに探索して山のあまり高い場所へは行かないつもりだ。


 4人の護衛に囲まれて山裾へと向かう。


 取り敢えず今日のポイントとなる場所を決めて、草むらの中や木の影など錬金素材となりそうなものがないかを確認していく。


 他の街の周辺であれば冒険者が定期的にクエストの一環として採取するので、どこにどんな素材があるのかということは前情報としてあるのが普通だ。


 しかし、ユミル村には冒険者ギルドはなく、この村を拠点とする冒険者はいない。


 外を拠点とする冒険者もユミル村周辺の情報がないこともあるのか、滅多に来ないという悪循環でとにかくユミル村周辺については錬金素材についての情報がないのだ。


 俺が事前に確認できたのは農業や畜産業といった村の産業に関係ある情報だけだ。


 だから錬金素材に関しては、俺が一から調べないといけない。


 あるかどうかもわからないものを探して回る、当たりも付けられないというのはかなり大変だ。


 まあ、俺としては、見つかれば儲けものというくらいなもので、俺がこうして調査することでソフィアさんも同じように村の人たちからの協力を得られるやすくなればというのが主眼だ。


 俺としてはハイキングか森林浴くらいの気分でいいだろう。





「じゃあ、ここを拠点にしてこの周りを探索しようか」


 山の入り口の少し開けた場所を中心に俺たちは木の影や草むらといったところを見ていく。


 俺のすぐ傍に1人とあとはぐるっと取り巻いてもらって周囲への警戒をしてもらいながら何か目ぼしい素材がないかを探して回った。


 20分から30分程度辺りを見て回ったが大したものは見つからなかった。


 そこでちょっと山に入ってもう少し探してみることにした。



 ――がさっ、ガサガサッ



「兄貴、下がって下さい!」


 山道を登っていくとその脇にある茂みから音がする。


 魔物かそれともただの動物か。


 俺は護衛4人の後ろへと下がると音のする茂みを凝視した。

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