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2 神の血

 食堂からの帰り道、俺は手に灯りの魔道具を持ってソフィアさんと並んで歩く。


 食堂から出たばかりの頃は薄暗いながらもまだ灯りなしで道を歩くことができたが、今や日がとっぷりと暮れて辺りは闇に包まれている。


「すみません、帰りのことも考えずにお誘いしてしまって」


「いえ、それはこちらの落ち度です。わたしが抜けていただけですのでお気遣いなく」


 そんな風にお互い謝罪と謙遜しながら村の外れにあるソフィアさんの住む教会まで歩く。


「ソフィアさんはお一人で教会に?」


「ええ、わたし一人です。まあ、この規模の村になりますとどうしても優先度が低くなってしまいまして」


「まあ、そうでしょうね」


 教会の収入源に魔素の浄化というものがあるが、国からの予算の都合上、どうしても人口の多い場所が優先される。


 また、地域住民からの寄進も当然収入源となるが、それも人口に比例するため、辺境の教会にはどうしても人が回されにくくなる。


 ソフィアさんの話では、ソフィアさんが赴任するまで、かなり長い間この村の教会は無人になっていたらしい。


 そんな状況が続いていたところ、この村を含む、王国東部地域の辺境地帯の魔素がここ最近強くなったとかで浄化のテコ入れが行われることになったそうだ。


 その一環として、長らく無人だったこの村の教会にも久しぶりに人が派遣されたということだ。


 そんな話をしながら教会への道を歩く。




 暗かったので昼間よりは時間がかかりはしたが、それでも小さな村の中なのでそこまで大きな違いはない。


「今日はありがとうございました。また機会がありましたら」


「あっ、ちょっと待っていただけますか?」


 ソフィアさんを教会に送り届け、直ぐに自宅に戻ろうとしたところ、ソフィアさんにそう呼び止められた。


 そのままソフィアさんは教会の中に入っていき、俺は一人、入口に取り残された。


 そして2、3分くらい経って建物の奥からソフィアさんが戻ってくる。


「もしよかったらお茶でも飲んでいきませんか?」


「いいんですか?」


「ええ、これまでうちに来られる方もいらっしゃいませんでしたし、せっかくなので」


 こんな夜に司祭が男を入れてもいいのかと思わないでもなかったがくだんのソフィアさんが気にしないのであればこちらが茶々を入れることもないだろう。


 自宅に戻っても取り立ててすることもない。


 俺はソフィアさんのお誘いを受けることにし、二人で教会の中に入った。




「こちらへどうぞ」


 俺が案内されたのは、教会の中にある小部屋だった。


 以前来たときに案内された聖堂とは別のところだ。


 恐らく、教会に来た人のための応接室として使われているんだろう。


 部屋にはソファーとローテーブルが置かれている。


「ブランさんはお茶がいいですか? それともお酒にします?」


 ソフィアさんが奥からそう言ってワインボトルを持ってきた。


 道では暗かったのでよくわからなかったが、ソフィアさんは食堂でちょっとお酒が進んでいたのでそこそこ酔いが回っているのかもしれない。


 今は顔が赤くなっていて少しばかり陽気な感じがする。


「お茶をいただけますか」


「そうですか? でもせっかくですからこのワインもいかがです? 教会で作ってるお酒で一般にはあまり出回っていないお酒ですよ」


 そう言ってソフィアさんはワインボトルを掲げた。


 俺も16歳になったばかりでお酒のことはそんなに詳しくはないが俺も見たことのないお酒だった。


 そういえば俺が孤児院にいたときも、大人シスターたちが『神の血』がどうとか言ってたっけ。


「では少しだけ」


「そうそう、やっぱりお酒は一人で飲むよりも他の人と飲んだ方がおいしいですからね」


 ソフィアさんはそう言って俺の前にもグラスを置いた。


「ではかんぱ~い」


 ソフィアさんの音頭で俺たちはグラスを重ねる。


 俺はソフィアさんからいただいた教会謹製のワインをいただいた。


「……個性的な味ですね」


 かなりの渋みを感じる。


 正直ワインはあまり飲んだことがないので良し悪しはさっぱりわからない。


「ふふっ、まだ未成年こどものブランさんにはちょっと早かったですか? この味がいいんですけどね~」


 ソフィアさんはそう言いながらクピクピとグラスを進める。


「そんなに飲んで大丈夫ですか?」


「大丈夫です。神の血はわたしたち司祭にとって血肉となるものですから」


 ホントかな~、ちょっと心配だ。


 俺はそう思いながら、最初はちびちびと付き合い、途中からはお茶をもらった。

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