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27 買取

「わたしはこの街の冒険者ギルドのギルドマスターのテオドールといいます。突然お呼び立てして申し訳ありません」


「いえ、それで一体何のお話でしょうか?」


 俺は内心予想しながらもそう尋ねた。


「この『鱗』のことなのですが、これはどちらで入手されたのかと思いまして」


「私も近所で拾っただけですのでよくわからなくて。それで結局これは何だったのですか?」


 この鱗は肉屋の裏で拾ったものなので俺が言っていることは嘘ではない。


 状態も悪く無造作に捨てられていたものだ。


「これは竜種、地竜アースドラゴンの鱗です」


「へっ、へ~、そうなんですか」


 やっぱりな。


 最初からそうだと思ってたよ。


「もし他にあれば、できれば状態がいいものがあればと思いまして。これをどちらで入手されたのかお聞きしたくて」


「ギルドマスター直々にお尋ねとはやはり珍しい物なのですか?」


「ええ、竜種の素材はなかなか出回りませんからね。ご近所で拾われたとのことですが、どちらにお住まいですか?」


「ユミル村です」


「ああ、ユミル村ですか。わたしは行ったことがありませんが、のどかでいいところだとか。魔物や魔獣の被害も特に聞きませんしどうしてそんな所に落ちていたのでしょうね。何か心当たりはありませんか?」


「え~っと、以前、狩りに行った方が森で拾った物を村に持ち帰られたことがありまして。その中に混じっていたんじゃないですかね?」


「なるほど、森の中で剥がれ落ちたものをたまたま拾われた方がいらっしゃると。そういうことがあってもおかしくはないですね」


 流石に田舎村の肉屋のおっさんとその仲間たちが狩ってきましたって言っても信じてくれないだろう。


 普通に森で拾ったという方がまだ信憑性はある。


「ところでこれはおいくらで買い取っていただけるのですか?」


「そうですね。地竜アースドラゴンは竜種でも下位ですし、鱗の状態も良くはありませんので1枚5万ゼニーでの買い取りですね」


「5万!?」


 思いがけない高値に俺は思わず声を上げた。


 いや、だって無料(ただ)でもらったものだよ?


 しかも、薄汚れているし、ちょっと欠けているし、ひび割れもある。


 そんな物にそんな高値がつくだなんて世の中間違っているんじゃないだろうか。


「普通の状態でしたら1枚10万ゼニーからの買い取りですね。鱗を使った盾や鎧は上級冒険者の方からの引き合いは強いですし建材として壁に使われることもあります。いずれにしても引く手数多ですので」


「そっ、そうなんですか……」


 その鱗って多分あと何十枚かあったと思うけど……考えないでおこう。


「それから竜の骨や牙なんかもやはり貴重ですね。もしも拾われることがありましたら是非持ち込み下さい」


 俺は「機会があれば」と答えて、持ち込んだ素材についてはすべて買い取ってもらうことにしてお暇することにした。


 買取手続を済ませて俺はギルドマスターさんと世間話をしながらロビーへと出た。


 その刹那、冒険者ギルドの入口のドアが勢いよく開いた。


「誰かっ、誰かポーションを、ポーションを持っていないかっ! 仲間がっ、仲間がやられたっ!」


 外から突然入ってきたのは冒険者の若い男だった。

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