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25 解体作業

 

「おう、錬金術師の兄ちゃん、ちょうどいいところにいた!」



 目ざとく俺を見つけたカインさんがそう言って俺に近づいてきた。


「こいつがちょっと怪我しちまってな。そこそこ大きな怪我みたいなんだ。悪いが中級ポーション売ってくれねーか?」


 カインさん指差した先には確かに顔色の悪い男の人がいた。


 俺は「わかりました」と直ぐに工房へ戻ると商品の中級ポーションを持って戻ってきた。


 それをカインさんに手渡す。


 カインさんがお金と引き換えに俺から中級ポーションを受け取ると顔色の悪い男の人に飲ませた。


 その瞬間、その男の人の身体がぼおっとした光に包まれ、しばらくすると光が消えた。


「どうだ?」


「おー、身体中の痛みがきれいさっぱり無くなったぜ。いやー、助かった。これで大丈夫だろう」


 カインさんの言葉に男の人はそう言って自分の身体をさすった。


「中級ポーションが必要になるなんてそこそこ大きな怪我ですよね? 何があったんですか?」


「いやな、コイツが大トカゲの尻尾でぶっ飛ばされてよ。それで木に叩きつけられてしばらく立てなかったんだよ。初級ポーションも使ったし、何とか歩けるくらいにはなったんだがどこか骨がイったんだろうと思ってな」


「……そうだったんですか」


 いや、ドラゴンに尻尾でぶっ飛ばされたってそれでよく生きてたな。


 そっちの方が驚きだ。


 このドラゴンは、俺もそこまで詳しいわけではないが、恐らく地竜アースドラゴンという種類なんだろうと思う。


 ドラゴンの中では上位に君臨するほどではないかもしれないがそれでもドラゴンはドラゴンだ。


 討伐ランクはAは固いんじゃないだろうか。


 というかこのドラゴンをこの人たちだけで倒したってことか?


 俺が考え事をしていると獲物であるドラゴンが肉屋の敷地内、屋外にある解体のためのスペースに運び込まれた。


 今からカインさんが解体して肉の即時販売が始めるようで村人たちが取り巻いて見物している。


 恐らく今日一日ではすべて解体できないということで、解体できた部分から切り売りされるようだ。


 まずは首から上が落とされ、鱗が剥がされる。


 可食部とはならない爪や厚い革となっている部分も剥がされていくがいかんせん大きな身体をしているため肉屋のスタッフだけでは到底手が足りない。


 結局、他の村人たちも手伝っての解体作業となった。


 そんな中で解体の指示を村人たちに終えたカインさんが俺に話掛けてきた。


「そうだ、肉以外の部分は別に使わねーから兄ちゃんにやるよ。錬金術の素材になるなら使っていいし、街に持っていって売ってもかまわねー。まあ、そこそこの奴だったから多少の金にはなるんじゃねーかな?」


「いえっ、別に俺がもらう理由が……」


「さっき中級ポーションを売ってくれたろ? ありゃ助かったぜ。これまでだったら街まで買いにいかないといけなかったからよ。ちょうど中級ポーションを切らしてたし、なかなか今回みたいなこともねーからよ」


「ちゃんと正規の代金ももらいましたしこちらも商売ですので」


「ははっ、遠慮するな。いらなければ店の裏に置いといていいからよ。そのうち適当に処分するからさ」


 カインさんはそう言うと解体作業へと戻っていった。


「いいのかな?」


 ひょっとするとこの辺りでは地竜くらいはそんなに珍しいものではないのかもしれない。


 そろそろ師匠に仕送りをするため街に行こうと思っていたところだ。


 ちょうどいいのでカインさんから自由にしていいと言われている他の素材も含めて街に売りに行ってみるか。


 俺は軽い気持ちでそうすることにした。

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