24 狩りの成果
村の中心部の方から村人たちが騒ぐ声が聞こえてきたので俺は耳をすませた。
そうしてしばらく何があったのか声のする方を伺ってみるのだがはっきりとしたことはわからない。
そのうち、工房の前の道を行き交う村人たちが話をしている内容が聞こえてきた。
「カインが大トカゲを仕留めたらしいぞ!」
「こうしてはいられん、肉屋へ急げ」
「今夜は焼肉だな」
村人たちが口々にそう言いながら肉屋へと走っていく。
(大トカゲ?)
確かDランクかCランクくらいの魔物だっただろうか。
俺は冒険者ではないのであまりそういったことに詳しくはない。
しかし、村の人たちの様子から少し珍しいもののようだ。
Cランクのキラーラビットが雑魚扱いなのに大トカゲでこれだけ騒ぎになるというのはよくわからないが、魔物の強さと希少性とは必ずしも相関関係にはないということだろう。
それにしても肉屋へと急ぐ村人たちがやけに多いな。
俺はトカゲ肉というのを食べた記憶はないがそんなに美味しいものなのだろうか?
今日はもう工房にお客さんが来るような雰囲気ではない。
俺は今日の営業を終わらせることにして物見遊山の気分で他の村人たちの後をついて肉屋へと向かった。
カインさんの肉屋は村の中心部にある。
ただ、お店が集まるエリアの中でも他のお店とはちょっと離れた場所にあった。
魔物や魔獣を解体するためのスペースとして広い敷地が必要であること。
あとはどうしてもナマモノを扱うのでその臭いが周囲に迷惑にならないようにという配慮がされているようだ。
店舗そのものは道に面しているが、既にお店の前の道は黒山の人だかりで埋まっていた。
というかこの村ってこんなに人がいたんだな、というのが正直な気持ちだ。
20人から30人は既に集まっていて、これからどんどん数が増えそうな感じだ。
この村は中心部といってもそこまで建物が密集しているわけではない。
農業が主体の村であり、郊外というか村の外れの方に農地とともに居住地が間延びしている感じだ。
郊外に行けば行くほど家と家との距離は離れていて、ぽつん、ぽつんと家がある。
そのため、行く先々でその家の人たちを目にしてもだだっ広い土地に数人ずつ目にするだけだったので今日の様に一カ所に人が集まるという様子を見るのはこの村に来て初めてだ。
そうこうしていると村の入り口の方からカインさんたち狩りに出かけていたメンバーが姿を見せたようだ。
人が多くて見えないが、前の方で大きく歓声が上がった。
しかし、カインさんたちはなかなかこちらに到着しない。
どうやら獲物を運ぶのにかなり手間どっているらしい。
見かねた見物人たちの一部がカインさんに近づきそれを手伝い始めた。
人垣が割れて俺もようやくカインさんたちの姿を視界にとらえることが出来た。
(なんだアレ?)
カインさんたちの後ろには小さな山かと見間違えるほどの大きな生物だったものが見える。
大きさは高さが3メートル以上、長さは全長で10メートル以上は優にあるだろう。
何よりもそこにあるものは俺が知っているというか頭で思い描いていた大トカゲではなかった。
(どう見てもドラゴンにしか見えないんですけど……)
俺は初めて見るその威容に口をポカンと開けて固まってしまった。
今後不定期更新(投稿)となります。
気長にお付き合いいただけますと幸いです。




