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23 魔石の精錬始めました

 次の日の朝。


 工房の営業を始める前、俺は満を持してカインさんの営む肉屋へ行きカインさんから店の裏に放置されていた魔石を預かった。


 事前に村長さんには確認のため方針を説明して了承をもらったし、雑貨屋のスコットさんにも魔力結晶の販売を委託することの下話を終えている。


 今日、カインさんは今から森へ狩りにいくとかで、自警団の訓練のときと同じ装備で仲間たち数人と勇んで出かけて行った。


 狩りで大物が獲れると肉屋で大安売りの大盤振る舞いがされるらしい。


 そのときには早く行かないといい部分は売り切れてしまうそうだ。


 この前の飲み会でガオンがそう言っていた。


 夕方前にでも肉屋をちょっと覗いてみたらいいかもしれないな。


 そんなことを思いながら工房へと戻ると早速作業を開始することにした。




 魔石の精錬は錬金術師の基本的な仕事だ。


 しかし正規の錬金術師はあまりやりたがらないと聞いている。


 作業委託される魔石の多くがEランクやDランクの魔石であり、作業料が決められているうえに金額が安く設定されているためだ。


 この『精錬』という技術は錬金術の一つであり見習い錬金術師でも使うことができる技術だ。


 そのため、魔石の精錬は見習い錬金術師の小遣い稼ぎという位置付けで認知されている。


 Eランクの魔石の作業料は1個100ゼニーでDランクの魔石の作業料は1個300ゼニーとランクの低い魔石の作業料はかなり安い。


 しかし魔石の買取価格が上がるCランクより上だと作業料の金額は大きく上がる。


 Cランクだと1000ゼニーに上がり、このレベルだとトントンかもしれない。


 そしてBランク以上になるとやや高度な技術が必要となるという理由もあってBランクで5000ゼニーにもなる。


 Aランク以上だとその大きさの他に除去する魔素の濃さにバラつきが出てくるため個別案件となる。


 錬金術師もBランク以上の魔石の精錬になると前向きで、実績を作るためにも安いEランクやDランクの仕事を文句も言わずにやっているという話だ。


 こうして精錬された魔石は魔力結晶となって使われることになる。

 

 照明器具のようなちょっとした魔道具であればEランクやDランクの魔力結晶で十分だ。


 一方で、大型の魔道具は魔力の消費量が多いので、Cランクの以上の魔力結晶が使われることが多い。


 田舎では都会ほど魔道具が多く普及しておらず、大型の魔道具はまだ数が少ないので高ランクのものはそこまで需要がないという話だ。


 




 さて、それはそうとして早速作業を始めるとしよう。


 魔石を一つ手に取り魔力を流す。


 このサイズはDランクの魔物か魔獣のものだな。


 精錬術を使うと僅かな時間で表面の艶のある黒色がその色を失い、魔石は透明な水晶のようにその姿を変える。


 魔石の中の魔素が分解されてこの様な変化が起こるとされているが、この魔素についてはその実態が解明されているとはいえない。


 ただあまり良くはないものとされているだけだ。


 魔素が多くなり過ぎると土地や空気が汚染され、そこではまともに植物が育たなくなるとか動物が魔獣化するとかさまざまなことが言われている。


 教会は錬金術師による精錬では魔素を周囲にばら撒くことになるため、錬金術師による魔石の精錬は禁止するべきと訴えているがこの国のみならず他の国でもそのように対応する国は今のところないようだ。


 俺は手に取った魔石を次々に処理していき、都合20個ほどの魔石の精錬を終えた。


 俺は特に補助具を使わずに精錬をするが、多くの錬金術師、特に見習い錬金術師は精錬作業を数多くこなす場合は『錬金陣』と呼ばれる補助具を使い、作業の時間もそれなりにかかる。


 錬金陣とは、『錬金術』を補助する道具で、紙に図形式が書かれているものだ。


 この錬金陣は消耗品であるため、これに頼り過ぎると実入りが少ないと言われるのは当然だろう。


 


 


 この作業と並行して店に来たお客さんの対応をしていると昼休みの時間になった。


 昼休みに精錬を終えたばかりの魔力結晶を雑貨屋さんへ持っていき、販売をお願いしてから宿の食堂で昼食をとった。


 さて午後はどうしようか。


 村に納めるポーション類をパパっと作ってしまってもいいし、天気もいいから庭いじりをしてもいいかもしれない。


 結局この日は庭いじりをすることにした。


 この村に来た当初はこの庭で錬金素材となる草や花を見つけることができて『田舎ってスゲーな』と思ったんだが、この村の他の場所を見て回ったが他に錬金素材となるものは見当たらなかった。


 唯一『癒され草』という偽素材が大量に見つかったくらいだ。


 錬金素材となる草花は、基本、採取によって入手する。


 優秀な御仁であれば錬金素材を農作物と同じように育てて収穫するということを考えるだろう。


 王国や大手商店も過去に錬金素材の栽培をしようとしていた時期がある。


 王立研究院においても錬金素材となる草花の栽培及び計画的な生産をしようとしたがそのいずれもが失敗して今やそういったことをしようという動きさえないと聞いている。


 そんな草花が何故かこの庭には育っている。


 庭の端の方に花壇を作って植え替えてみたが、今のところ問題なく育っている。


 俺は正直植物を自分で育てたことはないし、そもそもこれらの草花を栽培する技術は確立されていないため、どうやって増やせばいいのか正直よくわからない。



(まあ、あまり深く考えなくてもいいか)



 元々この庭に勝手に生えていたものだ。


 今日も如雨露で水をやり、追加の花壇作りを始めるなどして午後の昼下がりを過ごした。


 時折やってくるお客さんへの対応やちょっと伸びてきた庭の雑草をむしって3時をやや過ぎたころ、村の中心部の方から村人たちが騒ぐ声が聞こえてきた。

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