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22 丸投げ


「急に押しかけてしまってすみません」


「いや、特に用事もなかったし構わないよ。で、いったいどういった話だい?」


 俺が相談に向かったのは村長のカールさんの自宅だった。


 客がいない午後の時間帯に工房の入り口には『村長宅に行きます』と札を掛けて来たから急ぎの客がいればこっちまで来るだろう。


 小さな村だからこそできることだ。


 そこでこの村での魔石の取扱いについて確認してみた。


「う~ん、確かにこの村では魔石は取り扱ってはいないね。各人が街に持って行って商業ギルドで換金することがあるくらいだろうね」


「この村では魔力結晶はどうしているのですか?」


「雑貨屋が街から委託を受けて販売しているね。まあ、輸送コストの分だけ街の商店で売られているものよりも若干高くなってしまっているがね」


「それではその売上げはこの村には還元されませんよね。よかったらですが、せっかく私がこの村に来たんです。私も魔石の精錬ができますしこの村でも魔力結晶を扱われてはどうですか?」


「しかし、この村には商業ギルドもないし、一からいろいろと仕組みを作るのも大変だからね。わたしも御者の仕事もあって忙しいし。そうだ、きみがその関係のことをいいようにやってくれないか。なんだったら村での役職もつけるから錬金術師の作業料だけじゃなくて役職での報酬も取っていいから」


「へっ?」


「まあ、その関係はきみに任せるよ。元々この村には何もない状態なんだから少なくともマイナスにはならないだろうからさ」


 そんなこんなで俺はこの村の魔石関係のことを一任まるなげされてしまった。







 俺は工房に戻ってからどうしたものかと頭を悩ませる。


 村長さんから王国から来ている魔石の取扱いについての通達書類一式を預かってきたのでまずはそれを元に整理してみよう。


 冒険者ギルドや商業ギルドがある街では、魔石の買取はそこで行われる。


 冒険者であれば冒険者ギルドで、そうではない市民であれば商業ギルドもしくは魔石買取をしている商店で買い取ってもらえる。


 この買取価格は王国内において全国一律で決まっている。


 だから、どこの街のどの窓口へ行こうとも得をすることも損をすることもない。


 魔石の買取価格は、魔石のランク、端的に言えばサイズによって決められている。


 定期的に需給状況に応じて価格改定がされることはあるが、変動の幅はそこまで大きいものではないようだ。


 そうやって買取された魔石は一定の手数料が上乗せされて為政者に強制的に買い取られる。


 為政者はこの魔石を錬金術師や教会に作業委託をして魔力結晶へと変える。


 その際の作業料も魔石のランクによって決まっている。


 為政者は、商業ギルドを通じて商店に魔力結晶の販売を委託して市民は商店で魔力結晶を購入するという流れだ。


 魔石の買取価格だけではなく、魔力結晶が商店で売られる際の最低販売価格は王国によって決められている。


 少なくとも王領ではこの価格で売られているので他の場所でも基本的には同じ価格か多少の輸送コストを上乗せしたような価格で売られている。


 聞いた話では、ある街の領主が魔力結晶を販売するのに多額の利益を乗せようとして高値で売りに出し、結局大量の在庫を抱えることになったという話もある。


「となるとこの村でやることは俺が魔石を魔力結晶に精錬してそれをこの村からの依頼として雑貨屋に販売を委託する。売れた場合は、売上から魔石の提供者には魔石の買取金額を、雑貨屋には委託手数料を支払って、さらに錬金術師としての俺の作業料を差し引いたものがこの村の取り分ということだな。そのうちからいくらかを役職手当として俺がもらっていいみたいだからそれを差し引いて村に納めればいいだろう」


 魔石はカインさん経由だから魔石の代金についてはカインさんに渡してその後のことは任せたらいいだろう。


 ちなみにだが個人的に取得した魔石を精錬して自分で魔力結晶を売りさばくという行為は固く禁止されている。

 

 そんなことをすれば錬金術師の資格を剥奪されたうえで重い刑罰を科される。


 下手をすれば死罪だ。


 そういうわけで魔石に関してはルール通りに処理するのが一番だ。


 さて、そうと決まればカインさんから魔石を預かってきてうちの工房で精錬作業を始めるとしよう。

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