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15 教会

 新米錬金術師とはいえ俺は中級錬金術師だ。


 錬金術師は見習い錬金術師から始まり初級、中級、上級そして特級錬金術師というランクに分かれている。


 学院の錬金科を修了すれば取り敢えずは見習い錬金術師の資格を得ることができる。


 見習い錬金術師は厳密に言えば資格ではなく、初級錬金術師試験を受けることができる身分という方が正確かもしれない。


 錬金科の修了要件は、錬金術師としての最低限度の知識と教養があることとされている。

 

 それに加えて錬金術の『合成』技術以前の技術、例えば『精製』や『精錬』といった錬金術師としての基本技術のうちのいずれかを習得することが必要とされている。


 正式に錬金術師を名乗ることができる初級錬金術師になるには、錬金術のうち『合成』技術を使えることが必要だ。


 この合否判定では『錬金陣』や各種アイテムといった補助具を使うことは認められている。


 そして中級錬金術師となる場合は、その『合成』を自分の魔力(ちから)のみで行い、かつ、決められた時間内に一定の作業を行う能力が必要とされる。


 さっきは錬金釜を利用したが、俺は錬金釜を使わなくてもポーションを作ること自体は可能だ。


 しかし、色々な面で効率は悪いので中級錬金術師といえども今や錬金釜を使って作業することがスタンダードと言っていいだろう。


 一般的には中級錬金術師となって一人前の錬金術師と言われている。


 さらにその上。


 一流と言われる上級錬金術師となるには、中級錬金術師としての実務経験に加えて、さらに尖った能力が求められる。


 この段階レベルになるとそれぞれの錬金術師は専門分野に特化するようになるため、上級資格の認定要件は複数存在する。


 一番わかりやすい要件としては、効果付与のマジックアイテムを作成できること、というものがあるだろう。

 この効果付与とは、要は身に着けるだけでその者の能力を上昇させるといった効果を付与するというものだ。

 付与魔法があくまでもその道具そのものの性能をかさ上げするのに対して、この効果付与はその道具の使い手自身の能力を向上させるという点で違いがある。


 身に着けているだけで能力が高まるというその性質から、作られるものはアクセサリーであることが多い。


 最後の特級資格については、実例が少なく、過去には錬金業界に優れた業績を残したか、名誉職的に与えられたりするもので取り立てて要件というものはないようだ。

 



 さて俺が何を言いたいかというと、俺は新米ながら資格上は一人前の錬金術師として扱われるということだ。


 そんな俺が、まさか『薬癒草』と『癒され草』を間違えるという今日日きょうび初級錬金術師でさえしないようなミスを犯してしまった。


 これは正直ちょっと、いや、かなりショックだった。


 学院の錬金科を首席で卒業して順風満帆、飛ぶ鳥を落とす勢いのつもりだったが、ものの見事に鼻っ柱を折られてしまった形だ。


 師匠という枷も外れ、のどかなこの村の雰囲気にも当てられ、気が緩んでいたのかもしれない。


 ここは精神修養のためにも教会に行って心を落ち着けるとしよう。


 俺は教会の孤児院で育ち、師匠に引き取られるまでの間は教会の手伝いをさせられていたこともあり教会は何かと縁深い場所だ。


 人並みの信仰心はあるつもりだし、師匠に引き取られた後もときどきはお世話になった教会に顔を出したりしていた。


 この村の教会の場所は、レナちゃんから村を案内されたときに場所は教えてもらったものの遠目で見ただけだったのでまだ顔を出せていなかった。


 いい機会なので顔を出して挨拶しておくとしよう。


 俺は工房の戸締まりをすると村の外れにある小高い丘の上にある教会を目指した。






 しばらく歩いて目的の場所へと着いた。


「すみませーん、どなたかいらっしゃいませんか~?」

 

 俺は教会の入口の扉を開けてそう声を掛けた。


 すると建物の奥から若い女性が出て来た。


 俺よりも少し年上、20歳前後くらいだろうか。


「どちら様ですか?」


 ピンク色で肩口にかかる程度の長さのふわふわな髪をしている。


 色白で目鼻立ちがはっきりしている美人さんだ。


 シスター服ではなく司祭服を身につけていることから、この女性は正職の司祭さんだということがわかる。


 そんな彼女が初めて見る顔だからであろう、俺の顔を見て怪訝な表情を浮かべた。

【令和2年12月22日】


『錬成陣』を『錬金陣』に変更しました。

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