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14 反省

 試運転が上手くいったので今度はいつもの分量で作ってみることにした。


 そういえばキャロルからもらった大量の薬癒草があった。


 もらった直後に『状態保存』の錬金術を掛けていたので1週間以上経った今でも貰った直後の状態を保てている。


 これを使って一気に大量のポーションを作って村に納めてしまおう。


 俺は夏休みの宿題は早目に終わらせるタイプだったからな。


 俺は麻袋から材料を取り出し、それをよく洗浄してさっきと同じように錬金釜へと放り込んだ。


 純水を加えて、錬金釜の魔力注入棒を手に持って錬金釜を回していく。


 ぐ~るぐる、ぐ~るぐる


 もひとつおまけに、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる。


 おかしい、反応がないな。


 魔力を使った感覚はあるがその先の感覚がない。


 ちょっと薬癒草の量が多すぎたか?


 もっともっと、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる。


 小窓から錬金釜の中を見るがさっきのように光が出てこない。


 錬金術として成功していないということだ。


 なんでだ?


 素材も手順も間違いないはずだ。


 少なくとも何らかの反応はあって……あっ!


 俺はある可能性に気付いた。


 俺は慌てて麻袋の中に入っているまだ使っていない『薬癒草』を引っ張り出して目を凝らす。


 いや、正確には俺が『薬癒草だと思っていたもの』を確認した。




「あ~、やっちまったな。まさか中級錬金術師ともあろう者がこんな間違いをするなんて……」


 そう、俺は重大な間違いを犯していた。


 俺が『薬癒草』だと思っていたもの。


 それは『薬癒草』と間違えやすい『いやされそう』というただの雑草だったのだ。


 薬癒草とよく似た姿形すがたかたちをしていて、この二つを見分ける問題は初級錬金術師試験において出題必須と言われている。


 錬金術師を名乗る者なら誰もが知っているはずの雑草だ。


 本物の『薬癒草』と偽物の『癒され草』とを見分けるポイントは初級錬金術師の試験対策で知識として当然知っている。


 あ~~~~~~~、まさか中級にもなってこんな初歩的な間違いをしてしまうなんて!


 いや、普通、薬癒草ってお店で買うじゃん?


 お店ではきちんと『薬癒草』として売られているので、それが実は違う物でしたってことは普通ない。


 万一、そんなことがあったら当然クレーム案件だ。


 その店の信用問題にもなる。


 勿論そんなことになれば本物と交換してくれるわけだし。


 それにさ。


 試験ではよく聞かれるから知識としては知っていても実務では気にしないってことあるよね。


 というかいちいちそんなこと確認しないというか……。


 いやホントマジあり得ないんですけど。


 ……。


 ……すみません。


 俺の確認ミスでした。


 あ~~~~~、これが田舎の洗礼か!


 そうさ、笑えばいい!


 何でもかんでもお店で買うことしかしてこなかった都会者と笑えばいいさ!


 しかし、師匠にこんなことが知れたらとんでもないことになるな……。


 ブルブルブル。


 あー、記憶の彼方に封印していた昔のアレコレを思い出すと身体が震えてくる。


 うん、精神衛生上大変よろしくない。


 今日の作業はもう止めにしよう。


 こんな状態では上手く錬金術を扱う自信がない。


 俺は沈んだ気分のまま、錬金釜の中から分解されかけていた『癒され草』を取り出し、錬金釜をきれいに洗った。


 そうそう、テキストにも書いてあったよな。


 癒され草は結構臭いがきついんだ。


 そして今日は改めてその事実を確認することができた。


 持っている知識を実際に使いこなすことは大切なことだ。


 ホント実感するな。


 ちなみに工房の庭に生えていた薬癒草を念のため確認してみたが、こちらは本物の薬癒草だった。

錬金窯 → 錬金釜 のご指摘をいただきました方、ありがとうございました。





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