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12 引き渡し

 そんなこんなで10日が過ぎた。


 自宅兼工房の内装が完成したということで今日はその引き渡しを受ける日だ。


 その間にある程度は庭の手入れをすることができた。


 少なくともお客さんが来ても怪訝な顔をされない程度にはなっていると思う。



「お~」


 入口を入って直ぐ。


 店舗部分に入って俺は思わず声を漏らした。


 会計をするカウンターは厚く重厚な一枚板を使った立派なものだ。


 壁に沿って木でできた棚が並んでいる。


 この建物は窓は多くはないもののあるにはある。


 商品が太陽光で劣化してはいけない一方でやはり明るさは欲しい。


 ということで窓には白色レースの遮光カーテンを付けてもらった。


 その分、店内の暗さを補うため天井からは魔道ランプをぶら下げている。


 石造りの建物なので、そのままでは寒々しかったことから清潔感のある白を基調とした壁紙を張ってもらった。

 これでより明るい雰囲気になったと思う。


「要望のあったここはこうしてみたぞ」


 マイクさんが指差したのは店舗スペースと工房スペースとを仕切る切れ込みの入った一枚の厚い布だ。


 あれから姫様に聞いた名前を思い出したのだが確か東の方では暖簾のれんと呼ばれているものだ。


 暖簾をくぐって店舗スペースから工房スペースへと移動するとそこにはどっしりとした脚の立派な作業台があった。


 後は錬金素材を保管しておく棚も作りつけられていた。


「どうだ? 言われたとおりにやったつもりだが」


「すごい、想像していた以上です」


 俺も師匠の工房で修業してきたので師匠の工房は勿論、他の錬金術師たちの工房を見たことは勿論ある。


 しかし、そこでは俺はどう転んでもお客さんでしかなかった。


 そこで作業をすることはあっても、そこは俺の工房ではなかった。


 こうして俺自身のために作られた工房を目の当たりにすると一人の錬金術師としてやはり込み上げてくるものがある。


 自分の工房を持つということはやはり錬金術師の夢の一つだ。


 都会であればこの夢を叶えることはなかなかに難しいことだろう。


 そう思うとこの村に来て良かったと俺は思った。


 マイクさんにひとしきり感謝の言葉を伝えるとマイクさんは「それは良かった、これから村のために頼むぜ」と言って帰っていった。


 さあ、あとは開店に向けての準備だ。


 俺は師匠にもらったマジックバッグからフラスコやビーカー、乳鉢といった俺の錬金道具一式、それに持ち込んでいた錬金素材を取り出した。


 工房にこれらを並べていくと俺の工房に少しずつ命が吹き込まれていくかのようだ。


「おっと、こいつを出しておかないとな」


 よっこいしょっと、若者らしくない掛け声を出しながら、俺はマジックバッグから一際大きな物を取り出した。


 そして俺は、マイクさんに『こいつ』を備え付ける場所として空けておくように伝えていた場所にこいつを設置する。


 現代錬金術において最早必須と言えるアイテム。


 それがこの『錬金釜』だ。


 俺が持っているのはまだ俺が何とか1人で抱えられる程度の大きさのものだが、大手錬金工房ともなるとかなりの大きさのものもあるやに聞いている。


 まあ、新米の錬金術師である俺にはこれくらいのサイズで十分だ。


 道具の設置は終わったし、後は開店に向けて販売する商品を並べないとな。


 開店時に並べる商品は、この村に来る前に作って持ち込んだ物を主力にしつつ、後は今からこの工房で作っていくものになる。


 あと、契約しているこの村に納入するポーションも作らなければならない。


 この村でどんな物がどれだけ需要があるかがまだわからないからな。


 まずは外れのないポーション類を充実させて、追々、他の商品を置いていく感じだろうか。


 俺は工房部分の確認を終えると自宅スペースの確認も行った。


 自宅兼工房の引き渡しを受けた以上、今後はレナちゃんちの宿ではなく、こっちに住むことになる。


 しばらくは開店準備で忙しいので当面はこれまでどおり宿の食堂で食事をとることにして、俺は新生活を始めるための準備を始めた。

【本話でいただきました誤字のご指摘について】


 本話について下記の『 』部分について誤字のご指摘をいただきました。


>>俺が持っているのはまだ俺が何とか1人で抱えられる程度の大きさのものだが、大手錬金工房ともなるとかなりの大きさのものもある『やに』聞いている。


 あくまでもインターネット上で調べた限りではありますが当該表現はやや硬い改まった表現ではあるものの日本語として間違ってはいないようですので取り敢えずはそのままとさせていただきました。

 当該表現が今後本作(口語表現を多く使っている作風)に合わないと判断した場合には修正させていただく可能性もありますが当面はこのままとさせていただきます。


【参照したサイト】

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10214670360

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11144506421

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