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11 算段

 昼になって宿の食堂でレナちゃんと一緒に昼食をとってから一人、工房の庭へと向かった。


「さて、まずは庭の全体を把握しておくか」


 最初にこの庭にある錬金素材となりそうなものを把握しておこう。


 この村の全容はまだ把握できていないがこの庭にある物は俺の自由にできるわけだからな。


 ここにある物はやはり大事になってくる。


 この庭にはざっと見ただけでも錬金素材となる草花がたくさんあった。

 

 背の高い雑草に覆われてまだ俺が把握していないようなものもあるかもしれない。

 

 俺は、雑草を掻き分けて錬金素材となるものが他にもないかを確認した。


 その結果、『毒出草どくだしそう』に『やしそう』といった錬金素材も発見することができた。


 併せて本格的な庭づくりを始める。


 庭の一画に花壇を作って錬金素材となる草花を移して、そうでないところは抜いたり刈ったりしておこう。


 花壇を作るのに石やブロック、煉瓦といった資材が必要となる。

 

 たまたま内装工事の下準備のため工房に来ていたマイクさんと会ったので相談したら庭の花壇用の石やブロックを用意してもらうことになった。


 木工屋はこんな田舎の村では何でも屋みたいに活動しているとのことで、外構資材とかも扱ってるらしい。


 元々の予算に多少の余裕があるからということでこっちの持ち出しはなしで早速用意してもらうことができた。


 あと、スコップやシャベル、それから花壇に植え替える草花に水をやるための如雨露も必要になる。

 

 少なくともこれから継続的に使うことになりそうなので雑貨屋へ行って購入した。


 さあ、準備はできた。


 早速、庭づくり開始だ!


 雑草はできるだけ根っこからから引き抜く。


 根っこを取らずに土から出ている上だけを「ぶちっ、ぶちっ」と引きちぎっても直ぐに生えてきてしまうからな。


 そういったわけで草を刈るというのも正直対症療法に過ぎない。


 ここが田舎の村でなければ除草剤を撒くという選択肢もあるのかもしれないが、地下水や周囲の土壌に悪影響が生じる可能性もあるから使うとしても周りに相談してからにしようと思っている。


 工房の内装ができるまでしばらく時間があるので、まずは田舎暮らしの定番を身をもって体験しておこう。


 こうしてこの日は日が暮れるまで草取りを続けた。





 ――次の日


 午前中は昨日と同じようにレナちゃんに村の中を案内してもらうことになった。


 昨日は俺の目が『ゼニー』に眩んでしまって案内が途中になってしまったからな。


 ちょっと申し訳ないことをしてしまった。


 仕事で儲かったらお礼をするとしよう。


 今日は道を歩いて村の端まで行ってユミル村の外周をぐるっと見て回った。


 流石に小さな村だけあってみんなレナちゃんと顔見知りで行く先々で声を掛けられていた。


 会う人会う人に軽く挨拶をして回ったが一日にこんなにきちんと人と会うのは久しぶりだな。


 勿論、人の多さそのものは王都と比べるまでもないが王都では見ず知らずの他人ばかりなのでいてもいなくても同じだ。


 そういう意味ではこっちは田舎ならではの深い付き合いになるだろう。


 よくよく考えたら、この人たちがうちの工房のお客さんになるわけだからな。


 こういった挨拶回りも立派な仕事だ。


 特に何も考えてなかったけどレナちゃんがいてくれてとてもスムーズにいった。


 それにしても、わかっていたこととはいえ、この村はやはり農業が主要産業ということがこうして広大な農地を目の当りにすると本当の意味でよくわかる。


 これなら肥料の需要もあるだろうな。


 肥料も従来の魔力を使わないで作られるタイプのものもあれば、錬金術、つまり魔力を加えて合成したタイプのものもある。


 二つを区別するため一口に肥料といっても従来タイプ、錬金タイプとか呼ばれていたりする。


 魔力と植物というか農作物の成長の関係は未だはっきりしないことが多く、まだ手探りの状態だ。


 そういった研究は王立研究院でされているんだと思うが、現場は現場でいろいろと試行錯誤してみても面白いかもしれない。


 今のところ、それでも従来タイプよりも錬金タイプの方が、効果が高いと言われていて、その分値段もお高めだ。


 この村ではどちらが使われているかは知らないが、こんなに広大な農地なのだ。


 もしも従来タイプのものを使っているのであれば錬金タイプのものを試験的に提供して一度使ってもらってみようか。


 そういえば最近の研究成果として新しいレシピが発表されていた。


 実際に使ってみてどうなるかを論文にまとめてみても面白いかもしれない。


 既に錬金タイプのものを使っていたとしても他所から仕入れるのであればかなりの輸送コストがかかるだろう。


 うちから買ってもらえるのであれば他所から仕入れるよりも安く提供できるだろうし、こっちの懐も潤うというものだ。

 

 いろいろと今後のことを考えながらレナちゃんに案内されて村を一通り見て回ってから宿へと戻った。 

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