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25 エピローグ

 衝撃の婚姻決定から3か月。


 俺は相変わらずユミル村にいた。


 しかし、その忙しさはこれまでの比ではない。


 俺が当主を勤めることになったサルート大公家の領地。


 それは王都周辺の師匠が持っていた土地とここユミル村を含む元王家直轄地とで構成されている。


 先の代官による不正の発覚もあって、あっさりと王家直轄地はサルート大公家の領地に編入された。


 そして、何故か領都はここユミル村に置かれることになった。



「ご当主様、こちらが先月の収支表です」


 俺の錬金工房の隣に急いで作られた仮の領主館の執務室。


 大きな机の上にどさっと資料を積んだのは姫様とともにこの村にやってきたエレンだった。


 そう。


 突然貴族となったうちに家臣などいるはずがない。


 学院を優秀な成績で卒業したエレンはそんな我が家で事務官として働いてくれている救世主だ。


 そして、エレンとの関係はそんな関係だけにとどまらない。


「エレン、ご当主様は止めてくれないか?」


「あら、もうっ、ブランってばそこまでして私を辱めたいのかしら? わかったわ、恥ずかしいけれどブランがそこまで言うなら呼び方を変えるわね。あ・な・た♡」


 エレン・ディ・ハインリッテ伯爵令嬢はこの度めでたく俺の第二夫人となることが決まった。


 これは俺が決めたことではない。


 すべては姫様、いや俺の妻、第一夫人となるユーが決めたことだ。


 ちなみにユーというのは姫様、ユーフィリアの愛称で俺はそう呼ぶようにと言われている。


 一応勅命なので守らないわけにはいかない。


 こんなしょうもないことを勅命で強制するとは姫様、もといユーもこの村に来ても平常運転のようだ。


 話は戻るがそんなユーの鶴の一声でなぜかエレンもうちに嫁ぐことになった。


 エレンは抵抗するかと思ったのだが多少の憎まれ口は叩く程度で「しょうがないわね」とまったく抵抗することなく、それどころかときどきニヘラと笑みを浮かべるだけでその真意はわからない。



 エレンが執務室を出て俺が1人になったとき、外からユーが入ってきた。


「旦那様、お疲れ様」


 にっこりと微笑むユーは何故かメイド服を着ている。


 スカート丈が膝くらいまでしかないどちらかといえば短いタイプのものだ。


 王城や格式の高い貴族の家ではスカート丈はロングタイプのメイド服が普通なのだがユーはあまりそういったことにこだわらない。


 ユーは事務仕事だけではなくこうして使用人がするような雑務も進んでしてくれている。


 そんなユーが俺に紅茶の入ったカップを給仕してくれた。


「旦那様。お疲れかしら?」


「そりゃーまー」


 慣れない貴族の当主としての事務仕事と毎日俺を振り回すユーへの対応で俺の体力ゲージは危険水域に落ち込んでいる。


「旦那様は錬金術師としてこの村でのんびりしたかったのよね?」


 そうっ!


 その通りっ!


 俺はこの村にスローライフを求めて来たのだ!


 それがいったいどうしてこんなことに……。


「一ついい方法がありますわ」


「いい方法?」


 ユーがにっこりと大輪の花を咲かせたかのような笑顔を向ける。


 なんだろう?


 この難局を打開してスローライフ路線に戻れるのであれば俺は悪魔にだって魂を売るだろう。


「早く子供をつくってその子供に家督を継がせましょう!」


 なるほど。


 それは名案だ。


 貴族家の当主としての仕事も責任もみんな次代に引き継げばいいのだ。


 これは盲点だった。


 その答えに俺が満足した表情を浮かべるとユーは俺の耳元で囁いた。


「わたくし、今履いていませんの。だ・か・ら、早く孕ませて♡」


 そう言ったユーは執務室の壁に手をつくとお尻をこちらに向けて2度3度と振って見せた。濃紺色のスカート越しでもわかる安産型のプリっとしたお尻だ。


 丈の短いメイド服のスカートがフリフリと揺れてその中が見えそうになる。


「ごくり……」


 ユーは性格こそ破綻しているが見た目は極上、肌の張りや艶は文句のつけようがない。


 正式に婚姻するまではそういった行為は控えようと言い続ける俺にユーはこうして誘惑してくる。


 俺も年頃の男だ。


 もうそろそろいいんじゃないかと悪魔の囁きが聞こえてくる。


 俺はフラフラとユーへと近づくと、その細くくびれた腰をがっしりと掴んだ。


「……止めてと言われても途中で止まらないからな」


「まあっ、怖い♡」


 俺がズボンを下ろし掛けたそのとき、廊下を凄い勢いで掛けてくる足音がした。


 その足音の主、何かを感じて足早に執務室に戻ってきたエレンは「あんたたちこんなところで何ヤろうとしてんのよ!」と叫び、さらに彼女から一発ぶん殴られて俺はようやく我に返ることができた。


 ああっ、もうっ!


「俺は辺境でのんびりスローライフを送りたいだけなんだよ~!」


 こうして今日も辺境の村に俺の叫びがこだまするのであった。

 本編完結


 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 後日、後日談的なものを追加することも考えておりますのでブックマークされている方はできましたらしばらくそのままでお願いします。


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