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24 後始末

 師匠と姫様は義母娘おやこの絆を深めるとか言ってさっさとレナちゃんちの宿屋に行ってしまった。


 今日一日でいろいろなことが起こり過ぎて自分の中でも消化しきれない。


 考えるのも嫌になりそうだが、だからといって村の入り口でぼーっと突っ立っているわけにはいかない。


 そろそろ日が暮れる時間だし、さっさと家に帰って今日は早く寝よう。


 そしてすべてが夢だった、となれば……。


 そんな現実逃避をしながら自宅に戻る途中、一人の女の子と出会った。


 たまたまという訳ではない。


 その女の子の表情から明らかに俺を待っていただろうことが伺えた。


「マーガレット、いや、マリーゴールド殿下と呼んだ方がいいか?」


「よしてよ、しかしあなたがまさか王国の巡察使様だったとはね。正直、まったくわからなかったわ。今から思い返してみてもそんな素振りはまったくなかったもの。正体を隠していたわたしが言える立場じゃないけどやられたって思いでいっぱいよ。未だに信じられないわ」


 うん、それは俺も同じだ。


 もしも俺が巡察使だということを隠して諜報活動をしろと言われても誰にもバレずにできたとはとても思えない。


 多分数日で胃に穴が開いただろう。


「それでわたしたちの正体を知って巡察使様はどうするの? 捕らえて捕虜にする? それとも拷問でもしとく?」


 マーガレットは不敵な笑みを浮かべて挑発するかのように言った。


 その後ろではリセルさんが怖い顔をして俺を睨んでいる。


「巡察使の仕事はあくまでも王国内の貴族や役人の不正を調査するのが仕事だ。残念だがそれは俺の仕事ではないな」


 俺は学院で習った通りの巡察使の職務を説明した。


「でも……」


「貴女たちはこの村を守る手助けをしてくれた、どっちにしてもそんな恩人をどうこうする気は俺にはないよ」


「いいのですか? わたしはともかく姫様を捕らえれば出世は思いのまま、とまでは言いませんがかなりの点数稼ぎにはなると思いますよ」


 リセルさんが用心深く言葉を重ねてくる。


 仕方がないこととはいえ俺はかなり警戒されているようだ。


 ただ俺は本当のところ巡察使ではないわけで、この辺境の地にスローライフを求めて来ただけのただの錬金術師なんだけどな~。


 しかし、そう言っても信じてはもらえないだろう。


 そもそもマーガレットが帝国の姫君というのは前から薄々気付いていたわけだし、正直今さらという感じもある。


「ここにいるのはマーガレットという名の冒険者だ。帝国の皇女殿下? そんな御方がこんな辺境の地にいるはずがないだろう」


 俺はきっぱりとそう言い放つと話はこれで終わりだと再び家に向かって歩き始めた。


「そう、それがあなたの答えなのね……」


「…………」


 マーガレットの言葉に俺は無言で応える。


 マーガレットとのすれ違いざまに小さな声で『ありがとう』という言葉が聞こえた。


 正直、それは俺が言うべき言葉だと思ったが俺は振り返らずに2人と別れた。


 




 次の日。


 村は大騒ぎだった。


「兄貴! 兄貴が実は大貴族の隠し子で貴族になって王女様を嫁にするって本当ですか?」


「ブランが貴族の当主になってこの辺りを治めるらしい。それでユミル村を領都にするらしいぞ!」


 そんな噂が村中を駆け巡っていた。

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