表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/133

13 納品

「おっ、出掛けるのか?」


 工房の外に出るとちょうどボルグさんと鉢合わせになった。


「あれ、うちに何か用でしたか?」


「いや、注文の品ができたから知らせに来ただけだ。ちょっと量が多いから何人かで運んでもらえると助かる」


 俺が注文していたのはミスリル合金製の武具や農具だ。


 今回、武具は盾を、農具は鎌と鍬を主に依頼した。


 盾はミスリル合金といえども総ミスリルにすると数を揃えることはできないので既存の盾をベースに表面だけミスリル合金でコーティングしてもらったものを作ってもらった。


 ミスリルは物理的な打撃にも強いが特に効果を発揮するのが魔法をはじめとする魔力を伴った攻撃に対する防御と言われている。


 Cランク以下の下位の魔物であれば基本的に物理攻撃オンリーだがBランク以上ともなると魔力を帯びた特殊な攻撃を受けることも多い。


 以前『茨の王』対策で作った地竜の鱗で作った盾もそれと同様に対物理・対魔力で優れている素材だ。


 今回のミスリル合金製の盾を追加で用意することで鱗の盾と合わせてこの村の自警団員の大部分に配備することができる計算になる。


 盾作りで余った地竜の鱗は、革の鎧をベースにして地竜の鱗の鎧を作ったと聞いている。


 危険地帯を突っ込んでいくなら装備しておけばよほどのことがない限りは大丈夫だろう。


 俺はミスリルの盾を鍛冶工房から運ぶため自警団の若手が訓練していた広場へと向かい、そこで会ったガオンとヘンリー、あと一緒にいた年下の自警団のメンバーに声を掛けて手伝ってもらうよう頼んだ。


「兄貴、新しい盾ってやっぱり強いんですかね~」

「そうだな、鱗の盾はどちらかと言えば対物理の方が得意で、今回のやつはどちらかと言えば対魔法の方で優れているみたいだぞ」


 そんな話をしながら鍛冶工房に向かっていると知っている顔が目に入った。


「あれ、ブランとみんな、どこかいくの?」


 道に面した畑でちょうど休憩していたキャロルと偶然出会った。


「ああ、いまから鍛冶工房にできた道具を取りに行くんだ。農具も新しいのができたらしいから良かったら一緒にいくか?」


「えっ、いいの? そろそろ収穫の時期だからね、いい農具があれば作業が少しは楽になるかな~?」


 ここでは春に撒いて秋に収穫する種類の小麦をメインに他にも穀物や野菜がいろいろと作られている。


「今年の出来はどうだ? 見た感じ悪くはなさそうだが」


 俺はキャロルと並んで歩きながら見渡す限り広がる広大な農地を見て尋ねた。


「今年は大豊作だよ、多分ブランのお蔭だね」


「俺の?」


 キャロルの言葉に俺は首を傾げる。


 俺が何かやっただろうか?


「ブランの肥料を使った畑はすごく育ちがいいの。使ってないところは去年とあまり変わらないけど」


 キャロルが嬉しそうに言った。


「そうか、それは良かったな」


 俺が提供したのは錬金術を使って作った錬金タイプと呼ばれる肥料だったがそこまで効果があったのか。


 さすがは師匠直伝のレシピで作っただけはある。


「あと今年は夏に農作業がしやすかったからね。快適に作業できたから畑の管理がうまく行ったってお父さんたちが言ってたよ」


 そういえば猛暑対策に冷却剤がよく売れたな。


 こうして振り返ってみると俺が作ったものはこの村のためになったようで錬金術師冥利に尽きるというものだ。


 キャロルと話をしながら歩いていると直ぐに鍛冶工房に着いた。

 

 ガオンたちにはミスリル合金製の盾を、キャロルと俺とでまずはミスリル合金製の鎌の入った木箱を抱えて運ぶことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ