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8 移住

「それは私の立場では何とも……。村長さんたちに相談してからでいいでしょうか?」


「ああ、それはこっちの我儘わがままだからよ。ダメならダメでいいから気にしないでくれ」


 ボルグさんから相談されたこと。


 それは俺の住むユミル村に移住もしくはボルグさんのための鍛冶工房を用意できないかという相談だった。


 さすがにそのレベルの相談となると俺の一存で答えられるわけもない。


 そんな訳で村長さんたちに相談させて欲しいと伝えて後日回答することになった。







 早速戻って村長さんにボルグさんから言われたことを相談することにした。


「頼みを聞いてもらえることになったのは良かったがうちに移住か……」


「やはり難しいですか?」


 顎に手を当てて考え込む村長さんに思わずそう尋ねた。


「いや、出ていく者ばかりのこの村に新しい住人が増えるのは一向に構わないんだけどね。ただうちの村にも鍛冶職人がいるにはいるのでそこのところがどうかと思っているんだ」


 狭い村なので同業者がいるとその分軋轢が生じかねないということは俺でも理解できる。


 これが普通の街であれば競争もやむを得ないのだろうが小さな村ではそれで共倒れになっても困るということなのだろう。


「ちょっとその職人から意見を聞いてくることにしよう。少し時間をくれないかい?」


「ええ、それは勿論。ボルグさんも自分の我儘だからと言っていましたしあまり無理に話を進めなくても構いませんから」


 俺はそう言って村長さんのお宅をお暇したのだが……。



「結果的に彼はボルグさんがこの村に来るのは大賛成だそうだ」


「そうなんですか?」


 我が村の鍛冶職人さんは大方の予想とは裏腹にボルグさんがこの村に来ることに賛成するという。


 しかも、是非自分の工房を使って欲しいということでできれば教えを乞いたいと言っているそうだ。


 俺は鍛冶のことはよくわからないが、元々その職人さんは日常生活で使うちょっとした道具を主に作っている職人さんで知る人ぞ知るハイレベルな武具を主に作るボルグさんとはそもそも競争関係にはないという話だった。


 しかもこれからは俺が頼んだミスリル関係の道具を主に作ることになるのであれば住み分けはさらにはっきりしたものになるだろう。


 それなら是非この村に来てもらって片手間にでも鍛冶の技術を高めるための助言をもらいたいというのがその職人さんの意向だった。


「彼がそう言うのであればわたしも反対する理由はないよ。ボルグさんには是非うちの村に来てくれと伝えてくれ。ただ、住む場所をどうするかは話し合いをしたいのでできれば一度この村まで来てもらえた方がいいね」


「わかりました。本当に移住するとしてもまずはこの村を見てもらってから決めてもらった方がいいでしょう」




 その後ユミル村に下見に来たボルグさんは正式にこの村への移住を決めることになった。


 当面の作業場は村の鍛冶職人さんの工房を間借りして、その間はその職人さんへの技術指導をみっちりするということになったそうだ。


 こうしてユミル村は新たに一人の住人を迎え入れることになった。

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