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4 ようやく到着

 次の日。


 午後一番発のユミル村行きの乗合馬車に乗り込む。


 乗合馬車とはいいながらも乗客は俺一人だけだ。


 今日ユミル村へと向かう便もこの便しかないみたいだしこの路線も毎日出ているわけではないようだ。


 ひょっとして過疎過ぎるのでは?

 

 今更ながら不安になったが、さっき確認したところ、辺境の村へ行く馬車はどこもこんなものらしく、直ぐに路線が廃止になることはなさそうだ。

 

 

 荷台には街から村に輸送する荷物が積まれていたが他には誰もいないことから俺は1人横に寝転がってみた。


 だが振動がひどくてとても寝ていられないため普通に座り直した。


 自由だ。


 これまでの移動では曲がりなりにも他に乗客がいたがこうして一人馬車に揺られるというのも乙なものだ。


 しかし、それにしても今日の馬車はこれまで俺が移動で乗っていた馬車よりも速度が速い気がする。


 まあ、乗客が俺だけで荷台が軽いからそう感じるのかもしれない。


 そうしてガタゴトと馬車に揺られること3時間。


 太陽がだいぶ傾きかけた頃、ついにユミル村に到着した。



「う~ん、身体がバッキバキだな」



 10代半ばの若い身体とはいえ、ここ最近続いた馬車の移動でもうくたくただ。


 それに揺れる馬車に酔ったのだろうか。


 地面に降り立ったときわずかに立ち眩みのようなものを感じた。

 

 着いたところは馬車ターミナルとはとても言えない場所だった。


 村の入り口で、馬をつなぐことができる場所がある程度だ。

 

 ユミル村は、村の外周が柵に囲まれている程度で塀や城壁といった防御設備はなさそうだ。

 

 こんな魔物や魔獣が闊歩する物騒な世の中なのに大丈夫なんだろうか?


 勿論、それ以外に盗賊のたぐいもいる。


 王都からユミル村に着くまでにトラブルなくやってこれたのはこの国の騎士団や冒険者たちが街道沿いの魔物や盗賊退治をしてくれているからだろう。


 主に姫様絡みで国王陛下個人に対してはちょっと思うところがあったが、今の王家の統治自体は悪くないと思っている。

 

 え~っと、まずは、俺を招聘してくれた村長さんに挨拶に行って、それから何処に住めばいいのかとかを聞かないとな。


 事前に提示された条件として自宅兼工房となる建物は村で用意してもらう話になっている。


 しかも賃料はかからない。


 無料で使うことができるということだ。


 それで村長さんの家はどこなんだろうか……。


 御者さんに聞いてみるか。


「あのっ、すみません」


「はい、わたしに何か御用ですか?」


 俺が御者さんに声を掛けると御者さんは俺を振り返ってそう言った。


「この村の村長さんのご自宅をご存知ありませんか?」


「村長の自宅? 村長に何か用事かい?」


「ええ、私、錬金術師でして、この度この村に赴任することになったんです。それでご挨拶をと」


「おおっ、きみがそうだったのか! よくきてくれたね」


 御者の中年の男は俺の言葉を聞いて破顔して言った。


「わたしがこの村の村長だ」


「はい?」


 俺の口から思わず素っ頓狂な声が出た。






 俺は村長を自称する御者さんと一緒に村長さんのご自宅へと一緒に行くことになった。


 村長さん(?)は馬車で村の中を移動して最後に自宅に戻るということだったのでついでにそのまま乗せてもらうことになった。


 村長さんは途中途中にある家々で荷物を下ろしていき、そうして周囲よりも少し立派な家の前で馬車は止まった。


「着いたよ。降りてくれ」


 俺が馬車を降りると村長さんは馬を家の前につないだ。


 荷台から荷物を家の中に運ぶというので俺もそれを手伝った。

 

「待たせたね。ではどうぞ」

 

 荷物を下ろし終わった村長さんが馬に水と餌を与え終わると俺にそう声を掛け、自宅へと案内してくれた。


 自宅は木造の一軒家で入ってすぐは玄関ホールになっている。玄関ホールに入って左側にある部屋へと通された。

 その部屋にはローテーブルと革張りのソファーが置かれている。

 調度品も多くはなかったが質素ながらも質がいいように思った。


「ではそちらに掛けてくれ」


 俺は「失礼します」と言ってソファーに腰を下ろした。


「改めてようこそユミル村へ。わたしがこの村の村長をしているカールだ」


「初めまして、錬金術師のブランです。歓迎痛み入ります」


 俺はこうしてようやくユミル村にたどり着くことができた。

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