表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

12

 この町を出る時も、ゼップさん(ギルドマスター)は門番に金貨を1枚握らせた。


 それに対して門番は、舌打ちしながら、こう言った。

 「来た時より、随分、人数が増えてるじゃねえか」


 ゼップさん(ギルドマスター)は黙って金貨をもう2枚握らせた。


 門番は不機嫌そうな顔を隠さず、言い放った。

 「しょうがねえな。全く。手間ばっかかけんじゃねえよ」


 私たちは門番にペコリと頭を下げ、そそくさと城門を通り抜けた。


 避けられる厄介ごとは避けるに限る。でも、本当に空しい。


 ◇◇◇


 ノルデイッヒのギルドメンバーはやはり元気がない。


 無理もないけど、そんな彼らにも野盗たちは全く遠慮しない。当たり前と言えば、当たり前だ。


 ! 私たちパーティーメンバーは顔を見合わせた。いるっ!


 「ノルデイッヒから来た人たちは、ゼップさん(ギルドマスター)を囲むように布陣して下さいっ! 後ろの岩陰に隠れている連中はクルト君たち、お願い出来ますか? 私とデリアちゃんは前から来る連中をやりましょうっ!」


 カトリナちゃんの判断は素早い。大きく頷いたクルト君はカール君とヨハン君を引き連れて、岩陰に近づく。


 それに対し、ノルデイッヒから来た人たちは、戸惑いを隠せない。不慣れなんだろう。おろおろしながらもゼップさん(ギルドマスター)の周りにいる。

 

 「デリアちゃん。前から来る野盗に『火炎(ファイヤ)』で攻撃してください。その後に、私が『混乱(コンフュージョン)』で動けなくする戦法で行きましょう」


 デリアちゃんの提案は、私たちコンビの定番のコンビネーションだ。だけど、その時の私には別に思うことがあった。


 「うーん。今回の野盗はそう強いほうでもないと思うんだ。だから、ちょっと試してみたいことがあるんだ」


 「え? 試してみたいこと……ですか?」


 「うん。さっき私は『混乱(コンフュージョン)』を手に入れたし、カトリナちゃんは『(メガ)火炎(ファイヤ)』を手に入れた。まだ、お互い不慣れな『魔法(マジック)』だけど、試してみるいい機会だと思うんだ」


 カトリナちゃんはニヤリと笑う。

 「いいですね。デリアちゃんのそういうチャレンジングなところ、私、好きです」


 ◇◇◇


 「(メガ)火炎(ファイヤ)

 カトリナちゃんの放った初めての中級(ミドルレベル)魔法(マジック)」。


 ゴオオオオオ


 カトリナちゃんの杖から発せられたそれは凄まじい音と共に、前方一帯を火の海にした。


 「うわああああ」

 「何だこの『火炎魔法(ファイヤーマジック)』はー」

 「普通じゃねえぞ。これは」


 わざとらしく街道を歩いてきた野盗ばかりでなく、付近の草むらに潜んでいた野盗もたまらず飛び出す。


 うーん。いいなあ。中級(ミドルレベル)魔法(マジック)。私も欲しくなった。でも、「混乱(コンフュージョン)」のツケもあるしなあ。


 おっと、いけないいけない。次は私の番だ。


 「混乱(コンフュージョン)


 「ぐわあああ」

 「ぐおっ」

 「ぎいやああああ」

 

 野盗たちは火の中をのたうち回るが、決して火から逃れられない。


 初めて使う「魔法(マジック)」にしては上出来だ。


 ノルデイッヒのギルドメンバーたちはさっきまでの悲しみも忘れ、呆然とした顔で戦況を見つめている。


 ふふふ。まだまだ。真打はこれからだよ。


 ◇◇◇


 「てめえら、やってくれたじゃねえか」


 囮の筈の前方の一団をカトリナちゃんと私の連係プレーであっさり潰滅させられた野盗たち。


 もはや、岩陰に隠れることもせず、クルト君たちに襲い掛かって来た。


 クルト君は(スピア)の柄を巧みに使い、数多い敵をあしらうように態勢を崩させる。


 態勢を崩した敵を(スピア)の穂先で仕留めるのは、クルト君の両翼を固めるカール君とヨハン君の仕事だ。


 見入っていたノルデイッヒのギルドメンバーたちから思わず声が漏れる。


 「凄い」

 「あの人たち、僕らとそう齢変わらないよな」

 「僕らも訓練を積めばああなれるのかな」


 ふふふ。見ていてくれているかな? あれが私の彼氏クルト君だよ。


 ちょっと自慢気な気持ちになった私に一際大きな敵の声が響いた。

 

 「おめえら、下がっていろっ! あの真ん中の奴は結構出来るぞ。わしが相手する」


 ◇◇◇


 後方から現れたのは他より一回り大きな体をした野盗。族長(チーフテン)か。


 さすがにクルト君の表情にも緊張が走る。


 「どうなんだ。てめえ。わしとの一対一受けるのか。あ?」


 戦況はこっち優位だから、敵は一対一で逆転を狙おうというのだろう。こちらが受けてやる義理もない。だけど……


 「受けようじゃないか。一対一」


 クルト君はやはり受けた。今回はノルデイッヒのギルドメンバーが多くいる。勝負を避けることは士気の低下、内部的な混乱を招く、それを恐れたんだと思う。


 敵の部下たちは後ろに下がった。カール君とヨハン君は顔を見合わせていたが、クルト君に促されて後ろに下がる。


 「いい度胸だ。それだけは褒めてやるぜ。わしは『暴虐のギード』。貴様は?」


 「『僧侶戦士のクルト』」


 ギードはあざけるように笑った。

 「何だそれは? ふざけた二つ名だな。『僧侶』なのか『戦士』なのか、はっきりしろいっ! まあ、いい。そんなふざけた二つ名を持つ奴の命も今日までだ」

 そして、広刃の(ソード)を構えた。


 ◇◇◇


 ! その場に衝撃が走り、ざわめく。


 広刃の(ソード)。切れ味より衝撃力を重視している。衝撃力で相手を圧倒する目的で作られた(ソード)


 それに対するクルト君の武器は柄が木製の(スピア)。私とカトリナちゃんが木の杖で打ち合いをしたら、二本とも粉々に砕けてしまったように、木製は衝撃に弱い。


 クルト君にとっては、相性の悪い組み合わせなのだ。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一騎打ち楽しみです♪ 木製は不利なのかな??
[良い点] へっ! 僧侶戦士を――クルト君を舐めんじゃねーぜ! このままノルディッヒ組にいい所を見せてやれい! 実際、剣で槍に勝つには、相手の3倍の技量が必要と言われますし(小声)。
[一言] 一騎打ちかぁ。 一見不利に見えますが……。クルトならやってくれる!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ