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挿絵(By みてみん)

©砂臥環様

左から順にヒロインのデリア、少年冒険者のクルト、デリアの親友カトリナです。

 私はゆっくりと歩いて行く。


 隣にはクルト君が歩いているけど、二人とも終始無言。


 私とクルト君が気まずい訳じゃない。


 私の頭の中がノルデイッヒであったことでいっぱいだったからだ。


 おばあちゃんは……本当に残念だけど、もう会えないだろう。目も見えない、耳も聞こえない、指一本動かせない……HPはもうないのだ。だけど、MPをたくさん持っていて、それが残っていたから、最後に私と話せたのだ。きっと、そのために大事に取っておいてくれたのだ。


 おばあちゃん…… 私はノルデイッヒでさんざん泣いたのに、まだ、涙が出て来た。


 ふと、隣のクルト君を見てみる。


 不思議だ…… 笑顔じゃない。まだ笑顔は少し苦手みたいだ。でも、出会ったばかりの頃のような無表情でもない。何と表現したら良いかはわからない。でもっ、でもっ、見ていると安心する…… そんな表情だ。


 あ、目が合った。あ、また、目を逸らした。こういうところは一向に変わらないね。うふふ。何だかおかしくなってきちゃったよ。


◇◇◇


 ! 魔物(モンスター)だっ! 全く無粋な奴らだね。 せっかく、クルト君と少しいいムードになりかけていたのに……


 「デリアッ! 僕の手持ちは『治癒(キュア)』15、『状態回復(リカバリー)』8、『不死退散(ターンアンデッド)』2っ! そっちは?」


 「『火炎(ファイヤ)』1、『冷凍(アイス)』2、『雷光(サンダー)』1、『治癒(キュア)』2。敵はスライム5でいいですか?」


 「それでいいと思う。『雷光(サンダー)』で全部潰せそう?」


 「やってみますが、分散傾向にあるので厳しいかもです」


 「分かった。残ったら僕も攻撃する」


 私は「雷光(サンダー)」を放つ態勢に入る。クルト君とのいいムードに水を差されたのは残念だけど、この緊張感は嫌いじゃない。


 「雷光(サンダー)」が草むらに潜むスライムどもを撃つ。だけど、やっぱり、全部は倒し切れなかったようだ。クルト君が(スピア)を持って、突進する。


 戦闘経験がない人ほど、スライムを雑魚(ざこ)モンスターとか言うが、一撃で人に痣を作るくらいの攻撃力はある。二撃三撃と喰らえば、骨が折られることだってある。


 結局。5体いたスライムのうち、私の「雷光(サンダー)」で3体が動かなくなった。クルト君は両サイドでまだ動いている2体のうち、右側の1体に向かう。


 スライムはジャンプし、クルト君の顔面を狙う。戦意を喪失させようという狙いだろう。しかし、私のクルト君はレベル18の「僧侶戦士」。真正面から(スピア)の柄でスライムを叩き落す。


 おっといけないいけない。いくらかっこいいからと言って、見惚れている訳にはいかない。左側に1体残っているスライムの退治は私の仕事だ。


 むっ、残ったスライムめ。不埒にも背後からクルト君に襲いかからんとしているな。「魔法(マジック)」でとどめを刺すか。いや、ここは・・・・・・


 クルト君の背後に向け、飛び上がったスライムに向け、私は突進し、大きく杖を振りかぶった。


 ドカッ


 スライムと私の杖は絶妙なタイミングでぶつかり合い、スライムは45度の角度で中空に飛んで行った。

正確には分からないが、相当な飛距離が出たようだ。


 「......」

 後ろを振り返ると、クルト君があっけにとられた表情でこちらを見ている。


 「あ、あのクルト君。そちらは片付いたのですか?」


 ◇◇◇


 クルト君は我に返った。

 「あ、ああ。大丈夫だよ。こっちは全部とどめを刺した」


 私が飛ばしたスライムを見に行くと、見るも無残に体全体が砕け散っていた。


 クルト君は淡々と話す。

 「うん。これはとどめの必要もないな」


 うーん。これはロマンチックのかけらもないね。


 ◇◇◇


 スライムの死体の脇にあった銅貨を拾うと、感じるのは敵の気配。無粋なのは「魔物(モンスター)」だけではないらしい。


 野盗だ。しかも、嫌なことに少しできる相手のようだ。


 弱い敵ほど一か所に固まってくる。そうなると私の「魔法(マジック)」で狙いやすい。


 戦闘慣れしている敵ほど分散してくる。いっぺんで倒すのが難しくなる。


 敵の数は5。そう言うと、クルト君も頷く。どうやら包囲を狙っているらしい。


 「ウオオオオーッ」

 敵は一斉に突撃してくる。


 クルト君から声がかかる。

 「デリアッ、『魔法(マジック)』で行けそうなのは何人?」


 「2人までは」


 「分かった。3人、出来るだけ防ぐっ!」


 ◇◇◇


 突進してくる敵に「火炎(ファイヤ)」を食らわせる。やったか。いや......


 1人でも倒せたらと思ったが、何と2人とも立ち上がってきた。これは手強い。今度は「冷凍(アイス)」を食らわせるか?


 いや、駄目だ。「魔法(マジック)」を発するまでに集中する時間が取れない。私は杖を振るい、敵を攻撃しようとしたが、やはり強い。攻撃するどころか、こちらが防戦しているような状態。


 クルト君もさすがに手練れの3人相手はきつそうだ。相手が1人なら心臓を狙って(スピア)を一突きだが、3人では刺している間に、他の2人にやられる。勢い柄での戦闘になる。柄だと多人数相手の戦闘が可能になるが、当然、穂先と違い、敵に致命傷は与えにくい。


 こういう時の打開策。肉を斬らせて骨を断つである。別の方からの攻撃による負傷を覚悟のうえで1人を確実に倒す。そして、残った力でもう1人を倒すのである。


 この方法は3人を相手にしているクルト君より、2人相手の私の方がやりやすい筈だ。私は杖を握る手に力を込めた。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] いきなりの戦闘! 掴みが巧いですね☆彡 でも……いいムードが台無し (;'∀')
[良い点]  初っぱなから、迫力の戦闘シーンですね❗  凄く解りやすくて、目に浮かぶようでした。 [一言]  二人共、息ぴったりなのが解る戦闘シーンでした。  いよいよ待望の第四章ですね❗  頑張って…
[一言] お待ちしておりました〜。 いきなりのバトルで、惹きつけられますね。
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