夏の始まり③
「いやぁ~、コレは申し訳ない失態を見せてしまった....」
灯夜は気を失い、目覚めたあと、ペコリと背を折って頭を下げた。僕と良は別にいいよと2人で肩を落としている灯夜に「そんなときもあるよ。」元気づけた。
良がはっと気になることを灯夜に問いかける。
「ねぇねぇ灯夜~。ひょっとしてクランのメンバーさんには自分がトーヤだってことって言ってたり...?」
灯夜はハッとした表情で告げる。
「あぁ~、良く考えると僕はクランマスター以外のメンバーには伝えてないですな...あぁ、ここで裏目に出てしまったか~。」
僕は一応念のためと思って、スマートフォンをポケットから取り出してメッセージを送る。
『@here 紗夜さんに関してだけど、灯夜がまだ自身の正体を伝えてないから隠す方針で。4649~』
『了解です~』
『大丈夫。まだそのことについては本人からも私たちからも触れていないヨ!!』
良し、まだ女性陣の方は大丈夫そうだな。僕は上々に一人ガッツポーズを決める。灯夜の方を向いて言い切る。
「祐奈と会長の方はまだ大丈夫そうらしい。だから、僕たちは今何ができるかを考えていこう!!」
「そうだね~。冷静に考えようか~。期間は今日から大会のある1週間だね。そう言えば、去年の大会の種目はBattleArea7だったよね~。」
「そうですな。公式ウェブによると今年はVERTEXらしいですぞ。う~ん、どうやってバレないように練習しようか...」
僕たちは3人揃ってソファに座り、こめかみに手を当て考えを絞り出す。が、一向に答えらしき答えが思い浮かばず、「ぬぉぉぉ」と苦渋のうめき声を上げる。
少し情報を整理しよう。VERTEXは5vs5vs5vs5の計25人が事前に決めた武器で1マップ上で撃ち合い、1キルにつき100ポイントが手に入り前半15分、後半15分の計30分間の中で何ポイントを取ったかで勝敗が決まるゲームだ。僕たちはこの夏。毎年行われているゲーム大会、TOKYO Esports Tournament、略してTET。良くプロゲーマーや、一般プレイヤーから「テット」という愛称で親しまれている。その辺でこの名前を言えば皆が知っているというほどの大きな大会だ。
僕たちはそこへのストリーマー部門の参加権を持っているので毎年参加している。ストリーマー部門では、日本の人気配信者や実況者が多く来るため、人気度が高い。だってあのHISAKINとか、人気Vtuberの方とかが参加するほどだ。
Vtuberが参加しても顔バレとかしないのかと思うかもしれないが、そこはテットがしっかり、Vtuber専用の参加ルームを作り、そこでしっかり最新の3D変換描写技術を使い、会場にはVtuberの姿が表示されるからプライバシー問題も完璧だ。
そんな大会に僕たちは参加をする。そのために僕たちは練習をしなければならないのだが、どうすればいいのか。
僕が「ぬぅぅぅ」と唸っていると、良が何かひらめいたようで、ソファから跳ね上がる。
「そうだ!!もういっそのこと堂々とやっちゃえばいいんじゃない?」
「「え?」」
僕と灯夜は訳が分からず素っ頓狂な声を上げる。僕はギギギと音がなりそうな動きで首をスライドさせて、良の方向を向き、良の頬をムニムニしたり、額に手を当て、熱が無いかどうかを確認する。すると、良は少し引き気味に
「だ、大丈夫だってばぁ~。いやぁ、ね。ただ単にやるんじゃなくてやり方があるから~!!だから灯夜も、バファリンもって来ないでって!!僕は風邪ひいてないって!!」
そう言われると、僕と灯夜は取り敢えず持っていたバファリンや冷えピタなどの入った救急箱をテーブルの下へ戻した。
良はやれやれと一息ついて、事の進め方について話し始めた。
「そんでもって、落ち着いたところでさっき僕がただ単に堂々とやるんじゃないって言ってたよね。僕が考えるのにはそれにプラスアルファって感じで、僕たちが全員協力して名前の呼び方をここのリアルの呼び方に変えるんだよ!!」
「え、それじゃあ配信できないんじゃ...」
「それに関しても僕が事前にTwitterで今週からお休みするってことは通知してあるから大丈夫。」
「...っ!!そういうことか!!...感謝ですぞ...!!」
そう言って灯夜はまたしてもペコリと背を折って頭を下げる。僕は灯夜がその動作をして数秒は理解が出来なかったが、今やっと意味を理解することができた。要は、多分いつもだと配信をするから呼び方を一人一人変えなければならないが、配信自体をお休みして、特訓時間として告知することで、こちら側の練習を見ているであろう他チームに、相当ガチでやるという印象を与える。紗夜さんはプロゲーマーとして多分R氏の配信を見ているだろうから、配信自体をやらなくなったと言われればガチで対策は出来なくなり警戒がゆるくなるはずだ。僕たちはいつも通り配信のテンションで堂々と練習をすれば紗夜さんも、友人間同士で遊んでいると思い込むのでバレることなんてない。ということだ。
そして良は策士の笑顔を浮かべて、
「これなら確率はかなり低いけど~、成功したら後に残る弊害がゼロになるんだけど、どうかな~?」
と提案をしてきたので、僕と灯夜は顔を見合わせて、
「「それで行こう!!」」
と賛成のレスポンスで返した。
宜しければ、ブクマ、☆で評価などしていただけると有り難いです!!
はい、前回致命的になっていきそうと書きましたが、この補足回がないと致命的な状況にならないので追加させてもらいました。多分次回こそ致命的になっていきそうな気がします。
毎回言っているようですが僕はマジモンのドMなので、酷評や、暴言風でもいいので、誤字脱字、意味不明な表現などがありましたら、教えていただけると嬉しいです。
次回の更新はまた5日以内に。
それでは。
E氏より




