夏の始まり①
あの騒動が起こってから1か月が過ぎようとしていたころ、僕たち5人はいつもとは違って、僕の家の実況部屋に集まって、全員で配信活動をしていた。
僕の部屋がなぜこうなってしまったのかには、深い事情がある。
遡ること約1週間前。
僕と良と灯夜の3人は元々通っていた中学が同じということもあり、ゲームをするときは良く僕の家に来てやっていた。そのため、僕の実況部屋は1階のリビングと同じサイズの24帖の部屋を両親に許可を取り、使わせてもらっていたので3台のデスクトップパソコンとゲーミングチェア、デスクは余裕で入り、部屋の総面積の4分の1程度で済んだ。
そのため僕が
「今年も来る?」
と、2人に今年の夏はまた3人でゲーム合宿的なことをやらないかと話していた。無論2人の返答は
「お~?今年もその季節だったね~!!」
「勿論行きますぞ!!今年こそは絶対に優勝して見せますぞ!!」
と、灯夜たちが燃え上がっているところ、たまたまそこに居合わせた祐奈と会長にその話を聞かれてしまい、「私たちもいいよね?」的な雰囲気になり先日、会長と祐奈のデスクトップパソコンなどの一式が宅急便などを介して1週間かけて我が家の実況部屋に設置されたのだった。なんせ、2人とも僕の家に置いておきたいと新しいデスクトップパソコンとゲーミングチェア、デスクまで購入していた。
祐奈に関しては昨日の昼休みの時におやつを購入する程度の感覚で総額70万をポチっていたほどだ。ここで一般人が見たら金銭感覚がバグっているようにしか思えないだろう。
こうして今現在僕の実況部屋にはドリンクを突っ込む用のミニ冷蔵庫が設置されたり、電気ポットがいつの間にか増えて、何かカップヌードルと書かれた段ボールが届き、寝袋やクッションが用意された完全にプロゲーマーかなんかのハウス化してしまったのだった。
そんな完全にプロゲーマーハウスと化した僕の部屋で完全に過ごす気満々の良以外の3人。というか、会長に関しては今年受験だったはずなのだが...
「うん?どうしたんだ玲太君。あぁ、受験は大丈夫なのかって?全然大丈夫だヨ!!何てったって私はもう既に推薦で合格していたからネ!!」
会長はニッコリと丁寧に僕が質問を投げかける前に会長は即答してくれた。というか既に合格って...かなりの学力お化けだったんだな。万能だなぁ...
ここで僕が一つ疑問に思ったことがあった。
「あのさ、僕たち男性陣はさ、ここで暮らしてもまぁ普通じゃんって思うけど、女性陣の方々は流石にまずいのではないかと...」
僕が少し困りながらそう言うと、先ほどまでクッションと戯れていた祐奈は
「え~、私ここから家遠いから、ここで寝たほうが玲太君と一緒に入れる時間が長くなるからいいかな~って思ったんだけど...だめ?」
お願いだからそのクッション抱っこして上目遣いで「だめ?」はやめてほしい。耐えられる気がしない。
僕は恥ずかしさのあまり視線を反らしてしまい、会長へとヘルプを出してみることにした。
「ほ、ほら会長も何か言ってやってくださいよ!!」
そう言うと会長は何か言ってくれそうな真剣そうな表情で祐奈を見つめている。僕は内心「おお!?」と期待して見ていたが、僕の予想とは斜め上の回答を言い放った。
「私は別にいいと思っているヨ!!....良君と一緒に居れるし...」
威勢の良い声だったが内容は撃沈している。おまけに最初まで良い声だったのに途中から弱々しくなっていっているくらいだ。駄目だこりゃ。
僕は藁にもすがるような思いで涙目になりながら灯夜にヘルプを出そうとした。
が、灯夜がゲーミングチェアに座るなり真剣な目でこちらを見てくる。僕はごくりと唾をのんだ。
「玲太。僕からひじょ~に大切なお話があるのです。」
「おぅ...どうかしたか?」
僕が、自分の娘を持っていかれるようなシチュエーションのような口調でそうレスポンスすると、灯夜はカッと目を見開く。僕は気に押しのけられそうになるも、頑張って前を向いて聞こうと表情で示す。
「1人だけ僕のクランの友人も呼んでも良いでしょうか?」
そう言って灯夜は頭を下げる。
僕の思考回路が一瞬だけ完全停止する。数秒して正常に戻り始める。え?何?友人?灯夜が呼びたいって言うレベルの友人なんて聞いたことが無いんだが...
僕が情報の整理をしていると、灯夜は申し訳なさそうな顔をして
「まぁ、僕自身あんまりクランの事を話してなかったのがいけなかったんだけど、玲太がだめらなら...」
と言い始めたので僕はつい反射的に声が出してしまった。
「駄目じゃない駄目じゃない!!灯夜が認める人なんだから勿論OKだって!!」
僕が「あっ」と言うのも遅く、灯夜は今まで見せたことが無いようにぱぁっと元気になり、ガッツポーズをするなり、スマートフォンを取り出しその友人さんに連絡を取り始めていた。
うん、まぁでも本当に灯夜が信頼を置いている人だと思うから大丈夫だろう。灯夜のクランの人か~、いったいどんな人なんだろう。
僕は心のどこかでワクワクしていた。
メッセージを送り終えた灯夜は、ふぅ、と何処か安堵したようにため息を吐き、ゲーミングチェアに深くもたれかかった。
「ふぅ、良かったですぞ。もう既に運送業者さんに送ってもらってたから玲太に断られたらどうしようとヒヤヒヤしましたぞ~。」
「え?もう既に送ってた!?」
「あぁ、ウチのクランの人たちはみんな気が早いからね~。そうださっきの女性陣がどうたらって件に関しては僕は別に気にしないのでOKですぞ!!どちらにせよ、皆最終的にこの椅子の上に寝始めると思うからね!!」
灯夜は自身のゲーミングチェアをポンポンと叩き、笑いながらそう告げる。まぁ確かにそうだろう。現に皆手元にブランケットを持ってるからかな。
僕はまぁいいかと思ってため息を一つ。僕は時計を見て、そろそろ良が買い出しから帰ってくる頃だと思い、部屋を出た。インターホンが鳴る音が聞こえる。おっ?良が帰ってきたのかな。良に今日来る人が1人増えること伝えなくちゃな。
そうして、僕が玄関を勢いよく開いて、「おかえり~良~!!」と笑顔で叫ぶも、僕に帰ってきたレスポンスは
「え?」
という疑問形でその声は良の声ではなかった。
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というわけで始まりました。夏です。ゲームです。大会です。...といった雰囲気で進めていこうと思います。
さて、良君ではなく誰が玲太の玄関前に立っていたのでしょうか?会長の立場が危なくなりそうな気がします。
毎回言っているようですが僕はマジモンのドMなので、酷評や、暴言風でもいいので、誤字脱字、意味不明な表現などがありましたら、教えていただけると嬉しいです。
次回の更新はまた5日以内に。
それでは。
E氏より




