新聞部と⑥
そして、ついに決戦の日がやってきた。僕は目覚まし時計の音とともに朝を迎える。いつもならもう少しだけともう一度夢の世界へ戻っていった僕だが、今日は何故か異様に目が覚めていた。手が震えている。僕はここであぁ、今自分は怯えているんだなと自覚をする。
それもそうだろう。今までとは規模が違うのだ。僕たちの楽しい高校生活が崩れ去ろうとしているのだから。
僕は、フッと息を吐きそんな気持ちを押し殺してベットから降りる。
ふと時計の方をみてみると時刻は午前6時を指していた。僕は取り敢えず制服に着替えて、リビングへ向かった。
「あれ、アンタ今日早いじゃん。何か今日あるの?」
お母さんは「え、嘘」とでも言いたげに目を見開いて僕の方をまじまじと見てくる。いや、そんなに珍しいモノなのか?
僕は少し引き気味にレスポンスする。
「え、そんなに珍しいの...?」
「そりゃそうよ、だっていっつもお母さん起こしに行っても『後30分、後30分だけだから』って言って結局1時間後で遅刻ギリギリになってるじゃない?」
それだけは言われたくなかった...理由は単純に配信活動が長引いて夜中の1時2時あたりまで配信してしまう事が多いからだ。
僕は「ヴッ」と身もだえながらも会話を続ける。
「ま、まあそういう日もあると思うけど...」
「そういう日が1か月のうち30日くらいなのだけれども?...ふふっまぁいいわ。アンタの青春はアンタの好きなようにしなさい。決して誰かに合わせちゃだめよ?」
「は、はい...?」
僕は今の流れだと配信者を辞めろと言われるかと思っていたが、全くもって逆の言葉が投げかけられたため、僕は語尾を吊り上げてしまった。
僕がどう返したらいいか分からず、オドオドとしていると
「まぁいいわ。さっさと食べちゃいなさい。」
と、お母さん自身から話をそらしてくれたようだ。僕はホッと息を吐き、食パンを頬張った。
僕が朝食をお母さんがキッチンへ向かう去り際に、僕に一言、幼くニカッと笑って言い放った。
「アンタ、何か悩んでるっぽいけど、解決するには何事も盛大にやるといいわよ。だって、ちまちました解決なんて誰もすっきりしないでしょう?だったら、やれること全部やって、自分の思う事全部言って、みたいな方が全部気楽に終わらせられて何かいいじゃん?」
僕はハッと気づかされた。このままいってただ単に解決するだけじゃ新聞部には何のダメージも残らない。
僕たちは解決するだけの方法を考えていただけに過ぎないのだ。今考えるべきは、新聞部への鬱憤をすっきりさせる方法だ。あぁ、そうだ!!
僕は自分の中でやるべきことを整理して、自身の部屋へ戻りスマートフォンを手に取り、皆にチャットでとあるメッセージを送り付ける。
『@here ------------------------------------』
僕がそう送り付けると一斉に既読が付き、
『@rshi_reita マジで言ってる?最高じゃないか~』
『@rshi_reita まぁ、でも私面白そうだからやってみたいかも...』
『@rshi_reita 僕は賛成ですぞ!!やっちゃいましょう!!』
『@rshi_reita 私の権限を使うとは....モチロン面白そうだからノルヨ!!生徒会メンバーに知らせとくネ!!』
僕は皆が賛成してくれたことが嬉しくてつい一人で「よっしゃ!!」とガッツポーズを決めてしまった。
時計を確認すると時刻は午前7時。僕はそろそろと思い、リュックに教科書を詰めて、お母さんに「行ってきます」と伝え家を出た。
時間は進み、学校の最寄り駅に着いたころ。
僕はいつも通りに陽キャサマ(笑)のゴールデンタイムを避けて駅を出た。今日もやはり後ろから、肩をトンと叩かれて、
「おはよう~玲太。灯夜は駅で定期カードをチャージしてるよ~。多分もう来ると思うけど。...あっ来た来た。」
そう良が指をさした先に灯夜は居た。こっちに向かって走ってきていた。
「おはよ~灯夜。今日の朝言った事僕は本気でやるからね?」
「あぁ、おはようですぞ!!、無論、僕は念のため演説用紙まで書いてきたんですぞ!!」
そう言って灯夜は鼻を高くしてフンと鳴らす。流石灯夜だ。学力だと僕たち3人の中でトップなだけあって、論文なんか余裕で書いてしまうのだ。
「あれ、そういえば会長にはもう用意してほしいモノ伝えたんだっけ~?」
「大丈夫。僕が頼んで会長はもう学校で作業に取り掛かってくれてると思うよ。」
「なら大丈夫だね~。ふふふ~、僕たちがタダ無かったことにするだけじゃないんだぞ新聞部~。泣いてまってやがれ~。」
「良が物騒なことを言ってますぞ!!....あぁそうだ、本庄さんはどうしたんです?」
「あぁ、祐奈には申し訳ないけど、時間をずらしてゴールデンタイムに登校してもらって陽キャサマ(笑)に『--------------』的な話に持っていてもらってるんだ。僕たちが引き戻すまで元々そっち側にいたしの話し方とかの経験もあるだろうしね。誘導しやすいんだよ。」
僕がそう言うと、2人は「あぁ~」とどうやら納得してくれたようで、頷いてくれた。
灯夜と良は悪魔のような笑い方で
「ははは!!これは楽しくなってきましたぞ!!」
「ふははっ!!これが魔王になった気分ってやつかなぁ~!!」
と言い捨て、僕自身も口角をニタリと上げて、学校へ向けて歩いて行った。
宜しければブクマ、評価等して頂けると有り難いです!!
玲太君は新聞部への報復として、何をすると皆に言ったのでしょうか?そしてそれは成功するのでしょうか?次回は玲太が表面上で行う「報復」を実行していきそうな気がします。
毎回言っているようですが僕はマジモンのドMなので、酷評や、暴言風でもいいので、誤字脱字、意味不明な表現などがありましたら、教えていただけると嬉しいです。
次回の更新はまた5日以内に。
それでは。
E氏より




