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国亡キ者たちの物語  作者: ヤトiヌシ
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第3話 陰陽術

 霞んだ目を擦りながら目が覚めたのは、完全に日が上った時であった。硬い朝ごはんを食べた後に俺は昨日の本を手にして読んでみた。


 文字は現代の日本語でなく、古典で記されていた為、解読しながら読み進めていかなくてはならなかったので1ページ読むのに30分ほどかかった。


 俺が死ぬ前に家でとても古典の勉強をさせられており、名詞や助動詞の意味などもだいたい頭に入っていたので少しは楽であった。


 そして読み進めていくうちにこの本は魔法みたいなものである事がわかった。元々の陰陽道とは分離して今の形になったと記されていた。


 そしてこの陰陽術5つの属性があり、火・水・風・土・金で構成されていた。そしてこの術は時間さえかかれば誰でも扱う事ができるらしいが、その過程がとても難しかった。


 まず最初に気功を感じなくてはならないらしく、1ヶ月間断食の上、毎日20時間は瞑想をしていなくてはならないと言うとてもハードな内容であった。


 そしてその気功を感じたら、各属性の原理を自分なりに解釈する必要があるので、科学ではなく哲学の世界で考えていく必要があり、ある日突然ふと使える日が来るらしい。


 陰陽術の使える量は自分自身の精神力に依存している為、精神の弱い人が使ってしまったらすぐに発狂してしまうと書かれていたが、精神力を鍛える為には様々な経験と知識が必要であると追記されていた。


 よって、陰陽術は歳をとるほどに使えるようになっていくとのことであった。


 最後に使える用になったらあとは自分で自分なりの陰陽術を扱えるようになると記してあったがここまで達成できる人は1万人のうち1人いるかいなからしかった。


 俺はこの本を最初こそ解読に詰まっていたが慣れ始めたら現代語訳をしなくとも本を読み進んでいく事ができたので、日が上っているうちに読み終える事ができた。


 読み終えて俺は暇だから、気功とはどう言うものか学んでみたいと思った。と言うのは建前で、本音は昨日の一件で俺は外に出る事に少し怖さがあったから、ちょうど良い正当化する理由が見つかったと歓喜した。


 それからずっと目を瞑り座って呼吸をしていた。初めの方は雑念なども混じっていたが最後の方は空気と一体化する事ができており、風の流れや微かな音、目を瞑っていても何があるかがわかってきた。


 ふと俺は眠くならない事を悟った。どれほど瞑想をしているかわからないが、少なくとも1週間は経っている気分であった。


 だがそれ以降俺が空気と一体化している時に雑念が混ざってくることは無かった。次第に俺は風の感触や、どの距離から音が鳴っているかなども感じられた。そして鼻が異様に効くようになった。


 それでもなお、瞑想を続けていたわけだが俺は目が開く時は意識と関係なく自然と目が開いた。


 「嘘だろ」


 ポロッとこの言葉が出てしまった。目の前にある光景は瞑想する前とは違ったのである。


 俺の目の前には今まで見たことのない色が見えて遠くまで物が見えるほどに視力が良くなっていたのだった。


 気功を感じたあと、楽しくなった俺は眠気もお腹もすかなった為、直ぐに各属性について考え出した。俺ずっと自分に語りかけていった。


 その間とても独り言が増えていったと思う。そして自分の世界の中に没頭していった。


 火・水・土・風のそれぞれの解釈はある程度分かったが金に関しては意味がわからないのでこれから時間をかけてゆっくり理解していこうと思った。


 流石にずっと引き篭もっていたので、気分転換にでも外へ出ようと思った。


 外を確認した時はちょうど日が昇る途中で、学んだ事への達成感と嬉しさ、明け方の清々しさで生まれて1番綺麗な風景だと思った。


 そして俺は軍服に着替えて、何があるのか分からないので、いつもの装備をして久しぶりの外へ出て見たら、とても寒いと感じたため身をもって長い時間、部屋に篭ってたと実感した。


 しかし歩こうと思ったら、人間ではあり得ない痛み、気分の悪さを催して、脳や内臓を強引に弄られている感じがした。


 声にならない鳴き声を喚き散らし、地面をのたうち回っていた。そして変な汗や穴という穴から出血し、色々な液体が出てきた。


 落ち着いたのは太陽と俺の顔が対面した時であった。俺は陰陽術を習得した痛みかと思ったが、あまりにも時差があったので違うものだと仮定した。


 もし俺の仮定が正しければ、地下室で過ごした時間がそのまま痛みに変換されているのではないかと思うしかできなかった。


 


 

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