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人類とは  作者: 相馬惣一郎
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人類存続プロジェクト

 生きるのがつらい……。

 生きるのに疲れ切っていますが、いまだに死ぬ勇気もない自分に嫌気がさします。

 もう何もかもどうでもいいのですが、後世のために何か残しておかなければという謎の使命感により頑張って書いていこうと思います。


 さて、前回の続きです。

 私自身何を書いたのかさっぱり覚えていませんでしたが、見返しながら書いていきます。



「誰もが理想を追い求め、それを実現できる社会になるほど人は異性を求めなくなる」

 これが究極まで行きつくと、子どもが産まれなくなり、その結果、

「人類は滅亡してしまうのではないか?」

 というようなことをアンドロイドなんかを例えに説明しました。

 けれども、そうなる前に、それを防止するためのある機能がついている。

 それは何か?


 それが何なのかというと、破壊です。


 そもそも異性を求めなくなるのは、人の欲望を可能なかぎり満たすことができる社会であるからです。ですから、再び異性を求めるようにするには、早い話、今のその社会というのをブッ潰せばいいわけです。


 すなわち戦争です。


 一度めちゃくちゃにブッ潰す。甚大な被害をおよぼしますが、そのまま何もしなければ、人類は自滅へむかってしまうのですから「人類が存続していく」という巨大なプロジェクトのためには致し方ない犠牲といえます。それに人類には慈悲という別の機能もついていますから、全滅するまで破壊しつくすということはありません(科学技術の発展により、その可能性は高まってますけど……)。


 これが戦争が起こる理由です。

 人類が存続していくためには争いというのが必要不可欠なのです。


 戦争支持者からすればもってこいのプロパガンダといえるかもしれませんが、私は戦争支持者というわけではありません。

 人類はここから脱却すべきと思うのですが、それを語る前に破壊という機能について、もう少し……。



 この破壊という機能の憎たらしいところは、人間の根幹に深く根づいている点です。

 男女が結びつきたがる理由を以前書きましたが、


 男性は、たとえ壊してでも子宮へ入りたい(理想的な世界へたどり着きたい)。

 女性は、自己を壊して再構築するためのエネルギーを欲している。


 このように性的衝動の中にも、男女ともに破壊衝動があるわけです(まあ、女性は変革のためですけど)。

 そして、これは、


 男性が求めるのは、居場所の探求(自分が理想とする世界を見つけ出す)。

 女性が求めるのは、自己の変革(自分が理想とするものへと生まれ変わる)。


 という男女の欲求から来ています。この欲求をどんなことがあっても実現しよう、何がなんでも理想を追い求めたい、という強い衝動が、すなわち破壊へとつながっていくわけです。人の持つ根本的なエネルギーです。


 理想というのは、子宮の中の状態、完全に満たされている状態ですから、当然、性善説で唱えられている仁義といったような善行も含まれます。人はそういったものを求めているのです。ですが、それは同時に、どんなことがあってもそれを求めるといった、とても強い欲求なのです。他者を虐げてもということです。性悪説で唱えられているような悪行であり、これが破壊機能ということになります(仁義といったものであれば、まあ、まだいいのでしょうが、個々の欲求をそれぞれが満たそうとすると、必ず他者をおとしいれようとするようですから、世でみられる様々な悪事がおこなわれることとなります)。


 この機能のたちの悪いところは、人間の根幹にかかわっており、しかも性的衝動と密接に連動しているところです。


 もし仮に、

「悪いことができないように、この破壊という機能を取り除いてやろう」

 と、考えたとします。


 我々は理想を追い求める生き物ですから、それを妨げる根本的な原因があれば、取り除こうとするのはある意味当然の行為だといえます(倫理的には問題のある行為でしょうが)。

 ですが、これを取り除いてしまうと、追い求めるという行為自体がとまってしまうわけです。突き上げるような強い衝動、いわばエネルギーといったものが供給されなくなるわけですから、電池が切れたように何もしなくなり、当然、性的衝動もなくなり、人類は自滅です(まあ、これが案外、人類が求めているものなのかもしれません。何もなくなってしまえば、子宮の中に近いような気もしますし……)。


「では、取り除くのではなく、弱めるのはどうか?」


 おそらく可能なのでしょう。

 破壊的行為も減少するのではないでしょうか。


 ですが、エネルギーが少なくなるのですから、性的衝動も当然少なくなります。結果、産まれてくる子どもも少なくなります。一定量は維持されるでしょうが、大災害などの決定的な打撃をこうむると立ち直れない可能性が高まります。それに生きようとする意志も低下するはずですから虚弱な体質となることと想定されます。そのため、常に絶滅の危機にひんしているともいえます。


 どちらか一方をとるということはできないようです。

 こんなジレンマの中で生かされる人間としては、たちが悪いと言わざるを得ませんが、システムとしてはよくできていると思います。


 理想を追い求めていくと子孫が産まれなくなる。そのためには破壊が必要。甚大な被害が出るからそれを取り除くように改良しようとすると、人としての本質を失い、結局、子孫は産まれてこなくなる。弱めるように改良しても絶滅のリスクが高くなる。どこかをおさえれば、そのはけ口としてどこかが爆発する。戦争もいじめもなくすことはできない。どういうわけか我々を混沌の中へ引きずり込もうと作用している。そうすることで、ある一定の調和が保たれるような仕組みになっているように思います。けれども、それで人類が存続していけるのです。


 様々なジレンマを生み出し、理不尽さであふれる世の中を形成しますが、これが、


「どうあっても理想を追い求める」


 という、すごくシンプルな命令で成り立っているというのは、やはり驚愕といえます。メビウスの輪のように単純で無駄がなく不思議と調和がとれているのもすごいです。ホント、よくできたシステムだと思います。


 我々をつくりたもうしお方というのは、こんなシステムをつくりあげたわけですから、すごいお方だと言わざるを得ませんが、ひどく意地悪な方ですよね。理不尽すぎます。理想という幻の餌を見せつけられ、それを追い求めるよう仕向けられるけれど、ただ同じところをぐるぐる回っているだけ、といったような気さえします。


 結局のところ、人はカオスの中でしか生きていけないのでしょうか。

 どうにか、ここから脱却できないだろうか。

 考えましたが、どうも難しい。ちょっと無理と言わざるを得ません。



 人が理想を追い求める。

 現状、多くの場合、本当にそれを享受できるのは一握りの人間だけです。自己の理想だけで完結していればいいのですが、なぜだかたいてい他者との比較が入ってきます。結局他者とのかかわりあいということだから他者より上にいることが理想的となるのか、理想的なモノというのは希少だから持っているかいないかで優劣がつくからなのか、よくわかりませんが、たいてい一握りだけです。

 そうすると、大半があぶれます。

 格差ができるわけです。

 理想的なことを享受している人たちは、ますますそれを追求しようとしますから、どんどんその差は広がります。

 すると、

「これは人類の危機だ!」

 と、無意識的に破壊機能が作動しはじめ、あぶれた人たちが暴動を起こすのです。やがて内乱へと発展し、差がなくなると静まる(まあ、特権にいる人たちが変わるだけでまたしばらくしたら暴動、となっているだけのような気もしますが……)。


 では、最初から差がないようにしておけばいいのではないか、と社会主義的な考えとなりますが、これもうまくいかないと思います。

 なぜかというと、人というのは、頭を抑えつけるという行為がかなりのストレスになるからです。

 理想を追い求める。

 これは誰もが持つものですし、人の根幹にかかわるものです。ですから、それを制限されるというのは、やはり苦痛をともない、結局、

「どうやっても理想を追い求めるのだ!」

 と、不満が爆発し、理想を追い求められるように、制限をかける制度を作り変えようと破壊機能が作動します。これまた暴動です。理想を追い求める社会になったら格差が広がり、また暴動です。



 資本主義的な社会を保ちながら、社会主義的な考えで差がなくなるようにできればいいのですが、はたしてそんなことができるのかと、私の頭ではちょっと限界です。日本人はわりと均一化しようとする民族であるように思っているので、何かしらのヒントがあるような気もするのですが、現状格差は広がってますから、やっぱり難しいです。


 なんとかならないのか?

 と思いますが、正直どうしようもありません。もっと科学技術が発展すれば何とかなるかもしれないので、そこに期待します。

 答えが見つからないまま、この項は終わりとします。



 次回は現代の息苦しさを形づくっている大きな要因である潔癖性について語りたいと思います。



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