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人類とは  作者: 相馬惣一郎
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はじめにまず定義を……

 人類を理解するためにはまず定義が必要となります。


「子宮の中は完全に満たされた状態である」


 これが、その定義です。

 子宮の中というのは、産まれる前、つまり母親のおなかの中にいる状態を指します。羊水につつまれて、へその緒で母親とつながっている状態のことです。これが、絶望や不安、苦しみといった不快なものが一切ない、ただただ心地よい感覚がどこまでも広がっているような、完全に満たされた状態ということになります。

 ですから、生れ落ちるということは、この心地よさの喪失ということになります。このことから人間というものがどういう存在であるのかを理解していくことになるのですが、それを語る前に、


「では、なぜ、この定義にしたのか? その根拠はどこにあるのか?」


 といったことを説明しておきたいと思います。これは私の性癖にかかわってくることなのであまり語りたくはないのですが、これを話しておかないことには根底がぐらつきかねないので語ります。



 アニメなんかでよくある巨大ロボットというのがあります。

 私はある時期において、あれくらい巨大な女の子(もちろんロボットというわけではなく、体が大きいだけで通常となんら変わらない女の子)とエッチな行為がしたい、という欲求が非常に高まったことがありました。これは私が手のひらサイズになるというのでもよいです。とにかくそれくらいの比率であれば問題ありません。

 この欲求がもう、どうしようもないほどに高まったのです。したくてしょうがなかったのです。普通のエッチというものは念頭になかったように思います。とにかく、巨大女性とのエッチという妄想で頭が埋め尽くされていました。


 これがきっかけでした。

 もともと背の高い女性は好みのタイプだったのですが(なんとかムーンでも緑の子が好きでしたし……)、それほど巨大な女性を求めたことはなかったですし、今でもありません。その時だけです。そして、そのエッチな行為というものですが、胸に挟まれる、といった単純で娯楽的な快楽であれば、まだまともだったように思います。私の妄想はそうではありませんでした。

 私自身が男根となる。

 そして、巨大女性の膣内に入り込む。私自身は競泳選手のようなキャップとゴーグルのみで、それ以外はなにも身にまとわず、ただ、

「ああッ! ああッ――!」

 と、悲痛な叫びをあげながら、パンティをトランポリンのようにして跳びはねる、というものでした。そこには娯楽的要素などどこにもなく、ただ必死な私があるだけです。

 思い出しながら書いていて自分自身の存在というものに愕然としてしまいますが、当時の私はこれがすべてでした。本当に嫌になります。もしこんなヤツが友人にいれば、それとなく距離をとってそのまま友人づきあいをやめるか、病院を紹介するか、するレベルの気持ち悪さです。本当に嫌になります。

 当時の私も、ふとした瞬間に、そのことに気がつきました。

 強い欲求に支配されながらも、いったん脳裏にちらつきだすと気になるもので、だんだん私も、

「ひょっとするとヤバイのではないか……」

 と、自分の存在を疑いだしました。

 それはしだいに強まっていき、私を悩ませました。


 お前はいったいなにがしたいのだ? なんでこんな馬鹿げた妄想をしているのだ? いったいお前はどこへむかおうというのだ? その先になにかあるとでもいうのか?


 それは私という存在を脅かすほどに高まってきたのです。

 この問いかけに、明確な答えが返せないのであれば、私は私自身を滅しなければならない。そんなふうにさえ思えたのです。

 ですから、私はこの問いかけに必死で言い訳をしなければならなくなりました。そうしなければ身の破滅です。

 私は必死に言い訳を考えました。

 そしてあるとき、トイレで大便しているときですが、このことを考えていました。それほど長い時間ではありません。せいぜいケツの周りについた大便がカピカピに乾くくらいの時間です。

 ふと気づいたのです。

「私が今いるのは膣の中だ。そしてその先にあるのは、子宮……」

 実に、この瞬間です。

 ケツを拭いたのかは定かではありませんが(長いケツ毛にからまってカピカピだったという記憶はあるのでおそらく拭いたのでしょう)、このとき、私は悟ったのです。


 ……そうだ。膣の先にあるのは子宮だ。私は子宮を求めていたのだ! 私が求めていたのは子宮だった! だからこそ、こんな馬鹿げた妄想をしていたのだッ!


 それは天啓とでもいうべきものでした。

 私はかなり興奮しました。

 ちょっと、本当にケツを拭いたのかどうか疑わしくなってきますが(ひょっとすると今みたいに拭いただろうかと思い直して確認してみたからこそ、カピカピだったという記憶があるのかもしれない。とすると、やはり拭いてなかったのか……。どうしよう、パンツ上げたあとだったら完全にアウトだ……ああっ、どっちだろう、まったく思い出せない……)、それほどに当時の私は興奮していたのです。


 というのも、これですべて説明がつくと思えたからです。

 当時の私はウツで仕事をやめ、なにもする気が起こらず、ただただベッドの上で馬鹿げた妄想をする日々でした。ときどきたまらなくなって自慰行為にふけってみたり、なにがなんだかわからず急に泣き出したりと、当時の記憶ごと闇に葬り去って、なにもかもなかったことにしたいくらい最低な時期でした。貯金は減っていくし、でもなにもする気にならないし、助けてくれるような友人はいないし、恋人もいない、一人暮らしでしたし、世界に一人取り残されたような寂しさでいっぱいでした。

 とにかく不安でしょうがなくて極限状態だったのです。そんな状態のときに、あんな妄想をしていたのかと思うと、今の自分が絶望的な気分になりますけど、とにかく、まあ、そんな状況下で求めたのが、子宮だったのです。


 この極限状態で本能的に私が欲したのは子宮だった。


 それは言い換えれば、この絶望的な不安を解消するものが、そこに、子宮の中にあるということになります。そうでなければなりません。私の変態的な妄想も、この不安を解消しようとするための自己防衛にすぎない、といえます。

 少々強引であるような気もしますが、これで言い訳がたちました。私も自分自身を滅しなくて済みましたので、ほっとしました。まあ、絶望的な状況はそう変わっていないわけですから、いいというわけではないのですが、ともかく、これで冒頭の定義へと結びつくわけです。


 そして……。

 ほっとして、また、ぼんやりと考え続けていたのですが、ふと、あらたな疑問がわきあがってきたのです。それは男という存在についてです。

 次回は男性の存在というものがどういうものか、ということについて語りたいと思います。私の妄想はとどまるところを知らないのです。

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