表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/62

【第48話】 誰がために鐘は鳴る その1

この話では残虐な描写が多数含まれております。

苦手な方は、あとがきにこの話の簡潔なあらすじを記載してますのでそちらをご覧下さい。

 痛みが幾分か引いてくると、剛はついさっき疑問に思ったことをローズマリーに聞いてみた。


「そういえばローズマリー様、気になってたんですけど、どうしてフランクさんに実験体の連行を頼んだんです? あの天使様、どっちかという粗暴だから、そういう繊細事は苦手というか向いてないと思うんですけど」


「あらあらぁ~、ひどい事をハッキリいうのねぇ。剛くんもぉ」


 天使尊重思考のローズマリーにいうことではなかった。

 剛はヤバイと感じたのか、慌てて弁明をする。


「い! いえいえ、粗暴じゃなくて今のは言葉の過ちでええっと~……」


 なにもフォローの言葉が思いつかないのか、剛は覚えていたことを思い出せないときのようなモヤモヤ感と真綿のようにじわじわと締め付けてくる焦燥感に追い詰められた。


 あわあわと手をこまねく剛を見兼ねて、ローズマリーは気にしていないというそぶりで手のひらを左右に数回振った。


「無理してフォローはいいけどぉ、剛くんはそういうお調子に乗ってしまうところがあるからぁ、さっきみたいなトラブルに巻き込まれるのよぉ。さぁ、体の調子はどう?」


「そうですね、もうちょっと行動や言葉に気をつけます。あ! もう痛みはないです。」


 ローズマリーは本当にうれしそうにうなづく。


「そぅ! それは良かったわぁー。服は硫酸浴びてるかもしれないし、町長さんにあとで理由を話して新しいのをもらいなさぃ。それとさっきの質問だけどぉ」


 ローズマリーは、剛を引っ張り起こすとひたいに唐突なデコピンをお見舞いした。


「いてっ!」


 しなやかな指先から放たれた衝撃に剛はひたいをさすりながら、目を瞠る驚きでローズマリーをみた。


「剛くん、天使を見た目と印象だけで判断したらダメよぅ。あなたたち人間と一緒で天使にも得手不得手はあるんですからぁ。まぁ、当たらずも遠からずなんだけどねぇ。剛くんの疑問はぁ」


「それってどうゆうことですか」


「そのままの意味よぅ。フランクさんをあのままこの部屋で野放しにしていると、町長さんのうっかりな監視でメインの実験体に手を出したかもしれないしねぇ」


「え? じゃあ、なんでフランクさんにそんな大事な実験体を連行させるんですか? ……あれ?」


 剛は自分の言葉に違和感を持ったが、その違和感がなんなのか分かりかけていながら、もう一歩のところでそれがなんなのか言葉にできないもどかしさがあった。


 ローズマリーはその様子に呆れたのか、軽くため息をつくと


「剛くんはもうちょっとぉ、頭の回転を良くしようねぇ。今度、お勉強の教材をお土産に持ってきてあげるわぁ」


「べ、勉強ですかぁ。あまり好きじゃないんですよねぇ」


 お勉強と聞き、剛は露骨に嫌そうな顔すると同時に、扉がバンと派手に開かれた。


「ボス~! ローズマリー様~! 連れて来やしたぜー!」


 相変わらずの濁声だみごえを響かせる声の主はもちろん、フランクである。

 そのフランクにまるで枕のように抱えられているのは人間?


「坊や!」


 それを剛が認識すると部屋に悲痛さと歓喜が混じったソプラノ声が剛の耳を突き抜けた。


「さぁ、役者はそろったわぁ。助手の剛くん、実験を開始しましょうかぁ。あなたのその疑問は簡単な答えなのよぅ」


 ローズマリーがほんの前に剛に向けた笑顔ではなく、そこにはこれから起こるであろう悲劇への期待感を抱いたゆがんだ笑みを浮かべる白衣の天使がいるように剛は見えた。


 フランクに抱きかかえられた人間はとても小さな少年でその姿は一言で痛ましいに尽きた。

 拷問のあとはまったくない。

 だが、少年の顔には生彩さなど欠片もないほどにやせこげ、フランクに抱えられてる状態でも分かるほどに体に肉付はなく、人間の人体がまるで分かる標本のごとく骨と皮だけでその少年は成り立っていた。


 そんな生きてるのも不思議な少年がどこにそんな力があったのか、先刻の声に呼応するように大きな声が辺りに響く。


「ママァ! ママァーーー!」


 見る者にまるで生命と引き換えに搾り出しているかのような声と錯覚させるほどの力強くはかないその願いの想いにその場にいる誰もが固唾かたずんで流れを見守った。



                    天使を除いて。



「キンキンとうるせえな! ガキ! 次にデケエ声出しやがったらあいつらの餌にしちまうぞ! まぁ、テメエのガリガリの体なんかっても腹の足しにもなんねえだろうがな」


 フランクが少年を抱えたまた、猛獣がうごめくおりを見せて脅す。

 少年はその獰猛どうもうな生き物に襲われることをイメージしたのか、細すぎる体をぷるぷると震わせる。


 それもそのはず、少年の視線の先にはハイエナたちが二人の人間を絶賛食事中なのだ。

 腹部をまるで残飯のように漁り、臓器を生きたまま食われるところがとても魅力的で人の生命力を感じさせる瞬間を生んでくれる生物なのよとローズマリーが前に話してくれたことを思い出す。


 剛にしてみればクソくらえな見世物だ。

 ローズマリーの説明が正しいことを剛は今このとき、視覚と聴覚で感じてる。


 懇願の願いを上げながら、腹部に牙を立てられ裂かれた臓器なかみを我先にと争うようにハイエナは肉を漁り、内臓を引き抜きみ千切り、そのみ千切った先を別のハイエナがくわえ食す。

 そんな惨状の中でも二人の男女は泣き叫び、おりの外でたたずむ天使に救いを求める。


 そんな願いなど聞き遂げる神も天使もこの世界にはいないと分かっているだろうに。


 剛が視線を少年に移すと、少年はその光景から目を逸らしていた。

 当然か、と思いながらもふとしたことに剛は気付く。


 剛はこの少年に初めて会ったことに。

 この屋敷に住まう人間は別館も併せると軽く百人は超えているが、この屋敷に生まれた者は、野良が紛れ込むのを防ぐ目的も合わせて館全員にひととおりのお目通しはする習慣がある。

 例え、町長が奴隷として買ってきたり、フランクたちがさらって来たりした者も同じ様に対応される。

 剛自身がそうだったように。


 付け加えて剛はこの館の人間の管理も多少任されていることもあり、この館の人間は全員覚えていると断言する自信もあった。

 見知らぬ少年、いつ死んでもおかしくない状況、今日という日。


 つまり、それらを踏まえるとあの少年は――

剛はローズマリーに天使を見た目で判断するなと叱責を受ける。

そのことに反省しつつも剛の中に一つの疑問が残るがそれは言葉にして表すことが出来なかった。

その間に、フランクは実験体である一人の少年を連行して戻ってくる。

その少年は生きているのも不思議なほどに痩せこけていた。

突如、「坊や!」という声が部屋に響き、少年も「ママ!」と声をその身体からは創造できない力強い声で返事する。

一同、静まる中でフランクは少年の大きな声に怒り、脅しをかけるように獰猛な動物が納まる檻の中で行われてる実験を少年に見せる。

怯える少年にまったく見覚えがない剛は一つの推測を立て始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ