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エゴイズム ~それをいったら戦争です!~  作者: パラサイト
【第4章】それぞれの真実
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【第26話】 対極する印象

「なんなんですか? あなたたちは!? まるで自分たちが正義のような物言いで! アルくんたちのことを何も知らないくせにっ!!! 勝手なことを言わないで!」


 自分の感情の塊を言葉に替えて、二人にたたき付けた。


 その直後、クローディアさんの表情に私はビクッとする。

 お人形のような端正な顔立ちが、鬼の形相のように変化したから。

 りゅう逆鱗げきりんに触れたかのように、クローディアさんから激しい怒りを感じる。


 耐え難い空気に晒される中、クローディアさんがふぅっと一呼吸おくと表情も空気も元に戻った。

 ――目を除いて。


 生まれて初めてみる感情の瞳を宿して、クローディアさんはおごそかな口調で語った。


「……少なくとも、桃華。あなた以上に私はアルフェル・M・バーンのことを知っているわ。もちろん、『理想郷アルカディア・ベル』のみんなもね」


 私以上にアルくんのことを知っている。

 どういう形で知っているのか。

 少なくとも、アルくんの城から私を連れ出してきたのだ。

 好意的な解釈に取れないのは、声質からでも伝わってくる。


「今はあいつら天使に洗脳されているから、まともな思考ができないかもしれないけど、必ず、あなた本来の人間性を取り戻して見せるから心配しないで」


 間接的にしろ、私を誘拐した人間が私の心配をしている。

 洗脳されていると。


「そうしたら、あなたにも悪魔の所業が分かるから。でも、それはそれでつらいことだから。……もしかしたら、今の方があなたにとって幸せかもね」


 言い表せぬ憎悪を宿した瞳は次第に慈愛の優しい瞳へと移り変わっていた。


 ――うそを付いている様には見えない。

 なにより、話している最中に見せた瞳を私は知っている。

 あれは私の両親と同じ大切な人を失った悲しみの目だ。


 だけど、明確にクローディアさんも勘違いしている部分がある。

 私は洗脳なんてされていない。


 確かに、この世界には魔法と呼べる不思議な力があることは身を持って体感している。

 実際に洗脳ともいえるような魔法があるかもしれない。

 アルくん、マーリンさんにトトさん、あの天使たちならもしかしたら、その気になれば簡単に人間を洗脳することも可能かもしれない。


 けど、だけど――

 あそこで過ごした日々が、思い出が、感情が、洗脳で受けたものだなんて思えない。

 思いたくない。


 小さなことでも気を配り、場を和ませ、ちょっぴりHだけどアルくんの好きな料理を教えてくれたマーリンさん。


 厳しいけど、一緒に時を過すほど優しくなり、実は心配性なところもあるかわいらしいトトさんはアルくんの思い出を教えてくれた。


 そして、私がピンチになると助けてくれて、どんな時でも笑顔で手を差し伸べてくれた私のこの世界での初めてのお友達。

 出会ってから、あっという間に特別な存在になった天使アルくん。


 だから!! 私は私を信じる!!!


「この気持ちを想いを、日々を積み重ねてできたモノを洗脳ツクリモノだなんて認めないし、誰だろうと言わせない! クローディアさんの真実ではアルくんが悪魔に映ろうとも、私の真実はアルくんは私のピンチを助けてくれる天使おうじ様よ!」


 ――はぁ、と溜息ためいきをつき、憐憫れんびんを帯びた瞳で私を見るクローディアさん。


「……重度の洗脳みたいね。アルフェルが手掛けただけあってこれは苦労しそうだわ」


「だから、私は洗脳なんてされていない! 私は私の意志で生きている!!」


「ええ、自分では分からないものですからね。みんな、そう言いますよ」


クローディアさんが何度目かの溜息ためいきを洩らす。


「そもそも自分が洗脳されているかどうかなんて、自分で分かるものではないでしょう? ……いつもの平行線ね。話が進まないわ。桃華、とりあえず、この話は――」


「悲報。クローディアたん、そいつ、マジヒャクパートルゥーで洗脳されてないぜっ」


 急にリーダーもどきの彼が、はなしに割り込んできた。

 クローディアさんが彼の言葉に難色を示す。


「何を言っているんですか、リーダー? ここまでアルフェルに心酔しんすいしている人間が洗脳されていないと?」


「されてね~んだよ。コレが」


「そんな莫迦ばかな! まともな人間ならヤツの所業を見たら発狂しますよ! まぁ、その前に物言わぬむくろに変えられて、返事がない。ただのしかばねにされるんですけど……ちなみに洗脳されていないと思う根拠は?」


「目だよ、目。そいつの目にはよ自分という意思があるジャン。揺るがない自分ってやつを持っちゃってる的な」


「目、ですか?」


「そう、おめめ。前の世界でもよ、生きてんのか死んでんのか分かんね~、なんとなく、生きてます的なやつらみたいに洗脳されたヤツは似た目してたんだよ」


 チャラ男なのに人間の観察力が高いのだろうか? 人は意外と見かけによらないのかもしれない。

 クローディアさんも静かにリーダーもどきの解説に聞き入っている。


「なんていうかな、こ~う目に光沢っていうの、あ~なんていうか……そう! 洗脳されたヤツって所謂いわゆる、レ○プ的になってんだわ! って、ふごっ!?」


 卑猥ひわいな言語を言った瞬間、クローディアさんの世界を狙えそうなパンチにより、変態リーダーが宇宙そらに浮いていた。

 ――この人、デキル!

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