【第22話】 妹の手掛かり
「じゃ、本題に入るけど、その前にトウカお姉ちゃん。トウカお姉ちゃんは今はまだ魔法は使えないけど、身の安全は確保されているよね。そのトウカお姉ちゃんはココが異世界って分かったとき、なにを強く願った?」
私が願ったこと。
妹のことを除けばそれは、もちろん
『『元の世界に帰りたい』』
でしょ? と、まるで私の願いが分かっていたかのようにアルくんは言葉をハモらせた。
「だから、僕たちは危険因子が社会に紛れ込まないように異世界の干渉を受けやすい場所を特定し、速やかに異世界の人間を保護できる装置を開発したんだ」
私たち異世界の人間に危害を加えなければ、敵意から魔法を使われることもない。
意味も分からぬまま襲われたり処分されることも減らせるなら、それはとても合理的で私たちにとっても救いともいえる装置に思えた。
「市街に紛れ込んだ人間は判別することは魔法でも使われない限り無理だけど、特異点、僕らは『へヴンズゲート』って呼んでいるんだけど、そこから現れた人間を保護し、国のひいては世界の秩序を護る事」
強い決意の中に悲壮感も混じり合った想いをアルくんは重く吐き出した。
「それが僕の使命なんだ。……あのときのような悲劇を僕は大事な国民にまで味わって欲しくない」
辺りが静寂に包まれる。
アルくんは私と同じ世界の人間になにかひどいことをされたのだろうか? あんなに強いアルくんがどうこうされるのはイメージしづらい。
「っと、また話が逸れたね。つまり、その装置を使えば、異世界からの来訪者も感知できるから、トウカお姉ちゃんを保護することができたってワケさ」
アルくんを始め、装置を作った天使さんに感謝だ。
私たち、異世界を処分する話を含み、私自身嫌な思いもさせられたけど、アルくんたち天使は私たちに被害が及ばないように対応してくれている。
実際問題、魔法を使わない限りこちらの人間と見分けがつかないのだ。
天使たちが知らずに、こっちの人間と同じ扱いをしてしまうのも無理はないのかもしれない。
「で、トウカお姉ちゃんの妹のカレンちゃんもトウカお姉ちゃんと同じ、この町のへヴンズゲートを通ってこの世界、エデンに八年前に来たのは分かったんだけど、どうやらカレンちゃんは装置の反応に引っ掛からなかったみたいで、そのまま一般人の天使に保護されたみたい」
アルくんの言葉に私は喜び震えた。
まさか、こんなに早く見つかるなんて、これほどうれしいことはない。
「じゃあ、その天使さんのところに妹は……花蓮はいるのね!?」
席を立ち、アルくんのそばで返答を待つ。
アルくんも席を立ち、私の顔を見つめる――が、しばらくすると目を逸らした。
――――? 私の質問にアルくんは気まずそうに当惑の眉をひそめる。
「~~~~ゴメン。トウカお姉ちゃん。カレンちゃんはもうその天使のところにはいないんだ。五年前にその天使が住んでいた家に何者かが侵入して、家は火事に見舞われ、それ以降、行方不明になっているみたい」
――花蓮はいない? ――行方不明? 生きているのか、死んでいるのかも分からないってこと? 味わったことのない喪失感に呆然と竦む私を、みんなが心配そうに見ている。
アルくんに至っては、酷なことを告げた罪悪感にでも駆られているのかひどく落ち込んでいるように見えた。
――落ち込んでもいられない。
――大丈夫! 妹は、そう、花蓮は――
「大丈夫だよ、心配しないで。妹は生きているわ! 私には分かる。お姉ちゃんだもの。アルくんのお蔭でこの世界に妹がいるって分かっただけでも大きな収穫なんだから、そんな悲しい顔をしないで。ありがとう、アルくん」
「僕の方こそ、あまり力になれなくてゴメンね」
「……アルくんが謝ることじゃないわ。アルくんは本当にお話に出てくる天使のように優しいね。出会ってからいっぱい、いっぱい助けてくれてる」
本当に――私、助けられてばかりだ。
「ううん、僕が好きでやっていることだから気にしないで。それに、話はまだ終わってないんだ。ここで、話を終えたらイイコトどころかワルイコトで終わっちゃうよ」
言われてみればその通りだ。
アルくんは最初にイイコトを教えるって言ってた。
なんだろう? 話の流れは止まってないのだから妹のことだろう。
けど、まださきほどの精神的なダメージから抜け切れてないから過剰な期待を持つのはチョットつらい。
それでも――恐る恐る続きを催促するかのように身を乗り出す。
「実はね、カレンちゃんを『飼って』いた天使はまだこの町にいるんだ。だから、明日にでも僕はその天使に会いに行って手掛かりを集めてくるよ」
まってまってまって! アルくんの言葉が頭に入ってくるんだけど、それ以上に感情がうれしさが――
「どう? 大袈裟にいうことじゃないけど、花蓮ちゃんへの道程は途絶えてないよって、わっ!!」
「まぁ、破廉恥な」
「若いってのはいいのう」
うれしさのあまり、アルくんに抱きついてしまった。
アルくんのくれた大きな道しるべは私の道を明るく照らしてくれる。
私は満面の笑みを浮かべてこう告げた。
「私も一緒に連れて行って」
アルくんも満面の笑みで答えてくれた。
「ダメだよ」
――――え?




