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エゴイズム ~それをいったら戦争です!~  作者: パラサイト
【第2章】お城の中は安全地帯?
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【第13話】 はーとふる・すとーりー

 私はマーリンさんの能力について認識が合っているのか答えを求めた。


「つまり今のマーリンさんの姿になると、老人の姿のマーリンさんの体は魂の抜けた抜け殻になる。それは時間的? に自動で消滅する」


 マーリンさんは口を挟むこともなく、私の考察をうなづきながら聞いてくれている。


「老人の体の方は抜け殻で、脱皮して若くなったマーリンさんは私に声を掛けることができたってことですかね?」


「うむ。大体、そんなところじゃの。いきなり、ワシの抜け殻へ走り出して、体を弄くり回した挙句に死亡宣告されたときには、驚きのあまり心臓が飛び出しそうになったワイ」


 こっちのせりふでもあるんだけど、とツッコミを入れたい。

 死んだと思った人物が、自分の背後にいるのだ。

 心臓が飛び出す思いは本当にこっちのせりふである。


「しかも泣いておる。自分のために女子おなごを泣かすのは男子おとこご冥利みょうりとはいえど、さすがに生きているのに泣かせるのは、虚偽に近いしの」


 存在は虚偽に近いですけどね。

 とは、言わないでおくのは優しさでしょうか?


「故にイチゴお嬢ちゃんがワシと認識できる姿で声を掛けたというわけじゃ。ワシの心配をしてくれてありがとうの」


 正直、御礼をいわれると逆に申し訳なさがあった。

 マーリンさんの死を認めたとき、私にはマーリンさんのことより、別のことが大きく心を占めていたのだから。


「ち、違うんです。ごめんなさい。私、正直に言うとアルくんの心配をしてたんです」


 私は私の心をそのまま吐露とろした。


「親しい人を殺してしまった事実やその後の将来のことを考えると心配で悲しくて。もちろん、マーリンさんのこともありましたが……ごめんなさい」


 マーリンさんにしてみればあまりうれしい内容ではない。

 きっと怒っているだろう。


 恐る恐るマーリンさんの顔を見上げる――予想に反して、マーリンさんは破顔一笑していた。

 思わず私は問いただす。


「どうしてうれしそうにしているんですか?」


「うれしそう? そりゃそうじゃろ」


 当然だといわんばかりの語気だ。


「確かにワシのことをメインで悲しんでいなかった事実はしょんぼりするが、心の底から坊ちゃまのことを心配する人間に生きてるうちに会えるとは思ってなかったからの。そりゃ喜ぶワイ」


 自分のことより、親しい人の幸せを願うという性格なのだろう。

 マーリンさんの人柄? がよく伝わってくる。


「それにワシの抜け殻に駆け寄ったのは本当に心配したからじゃろ? イチゴお嬢ちゃんが優しく正直なのは十二分に伝わった。ワシはイチゴお嬢ちゃんのことが気に入ったワイ」


 なんだかよく分からないけど、気に入られてしまった。

 それにしても、若いマーリンさんの姿で、口調が老人のままでは違和感がすごい。


「あ、ありがとうございます。ところで、マーリンさんはなんで老人の姿で最初、現れたんです?」


「うん? それはババアの我侭わがままのせいじゃな! 今はワシがこの姿を維持しないと、坊ちゃまがババアに再度、手を上げるかもしれないからのぅ。ホレ」


 マーリンさんが、先ほど乾いた音が響いた出所を指差す。


 そこには――アルくんと――見知らぬお婆さんがいた。


 あのお婆さんはだれ?


「……トトさんはどこに? それにあのお婆さんは?」


「ババアならホレ、坊ちゃまの目の前にってあ痛っ!?」


 とりあえず、グーでいってみました。


「真面目に答えてください! あのお婆さんも気になりますけど、トトさんは、トトさんはどこにいるんですか!? また、消えて見えなくなってるんですか?」


 そうさっき、乾いた音の発生源は間違いなくアルくんがトトさんの頬をはたいて鳴ったものだ。

 マーリンさんに気を取られている間に一体なにがあったというのか?


「……ごほっ、な、殴ったね? 坊ちゃまにも殴られたことないのに!?」


「いや、さっき、フルボッコされてましたよね?」


ダメだ! このエロ天使、ハートフルボッコストーリー~身も心もほっこりぼっこり~させなきゃいけない気がする。


 マーリンさんがか弱い乙女のように両腕を胸周辺で交差させて、瞳をウルウルさせている。

 その姿を見ていると申し訳ないが、ひどいことをしたという気持ちが綺麗さっぱりに洗い流されていくようだ。

 緊迫感が欠片もない。


「ヴァイオレンスなお嬢ちゃんじゃよ。イチゴなんてかわいいもんじゃないワイ。ヒイィ、ビンタの素振りで威圧するんじゃない。見えたらいけない星が見えそうじゃ」


 腕の力ではなく、腰で腕を振る。

 うん! いい風切り音がなった。


「お嬢ちゃんがやっていることは老人虐待じゃぞい。姿は若くても、中身は若いおなごが好きなか弱いファンキーおじいちゃんなんじゃぞ。あいや、待った! ちょ~っと待った~!!」


 マーリンさんの言葉には、耳を貸さず、私は黙々と腕を振り続ける。

 余計な力はいらない。


「その、さっきからモーションのみで脅すのはやめてくれい。なんであのババアがトトなのか説明が欲しいじゃろ? ……え? いやじゃ~! ダイニングメッセージはいやじゃ~~~っ!!!」


 マーリンさんはなにをおびえているのだろう? ちょっとだけ乙女の秘密を暴きに暴く、そのお口が簡単に開かないように怒りの制裁を加えるだけなのに。


 ちらりとアルくんたちの方を向いてみる。

 アルくんも謎のお婆さんも二人ともGo! サインを出している。

 そのしぐさを見て、ああ、あのお婆さんはトトさんだと、なぜか納得した。


 というか、さっきまでのシリアスな空気をここまで徹底的に破壊したマーリンさんにある意味、敬意を覚え、もとの展開に戻れるのか心配しつつ、愛と怒りと悲しみの乙女メイデン ・一撃メランコリーを解き放つ。


 ――つもりだったが、目の前の相手は若い男性の姿ではなく、身を縮こめて震える老人姿のマーリンさんへと変身? していた。

 さすがにその姿を見ると悪いことしちゃったな、という罪悪感と一緒に何でもアリだなーこの天使という感情を抱いた私を責める人はいないと再度、思いたい。


 そして、ある予感を抱いて私は、アルくんたちの方へ振り向く。

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