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エクストリームガールズ!!  作者: 井村六郎
夏期激闘編
38/40

第三十七話 二学期スタート!! 超越少女に休みなし!?

 波乱に満ちた夏休みが終わり、今日はいよいよ二学期の始業式です。


「おはよっ! いさちん、友香!」


 愛奈ちゃんはいつもの二人に挨拶します。


「いや~楽しかったねぇ夏休み」


「私は何だか疲れたわ……」


 愛奈ちゃんはイキイキしていますが、勇子ちゃんは顔色が優れません。まぁ、確かにいろいろありすぎましたからねぇ。夏休みなのに全然休まらなかった感じです。


「二学期もイベントは盛りだくさんだから、覚悟した方がいい」


「それを聞くと憂鬱ね……」


 友香ちゃんの言う通り、秋の遠足や運動会、修学旅行など、イベント盛りだくさんです。そして勇子ちゃんの予想では、それら全てで間違いなく面倒事が発生すると出ていました。


「ちょっとちょっといさちん! なーに辛気臭い空気出しちゃってんのさ! そんなんじゃ二学期なんて乗り切れないよ!? ほらほら、元気出す!!」


「誰のせいだと思ってんのよ……」


 無理矢理元気を出させようとする愛奈ちゃんに、勇子ちゃんはげんなりしていました。




 所変わって体育館。


 始業式の校長先生のスピーチの時間です。


(来たよ……)


 今回はどんな意味不明な言語が飛び出すのか、勇子ちゃんは身構えていました。


「ミナサン、オ、ハヨウゴ、ゴザ、ゴザイマス」


 しかし、予想に反して校長先生の口から飛び出したのは、日本語でした。片言でたどたどしい口調ではありますが、間違いなく日本語で『皆さん、おはようございます』と言いました。


「ワタ、ワタシ、ミナサント、オハナ、オハオハナシ、チャントしたくテ、このなつやすみのアイダ、ニホンゴ、いっぱいべ、べんきょ、シマシタ」


 どうやら自分が日本語を話せない事については、校長先生なりに思う所があったようで、みんなが勉強している間に勉強していたのです。その証拠に、通さんが通訳しません。それは、校長先生の話す日本語が合っている事を示していました。


 気のせいでしょうか? 通さんがハンカチで右の目尻を拭ったような気がします。


「ワタシが、何ヲ言っているカ、ミナサン、わかりますか?」


「わかる人は、手を挙げて下さい」


 ここで初めて通さんが発言しました。もちろん、全員が挙手します。


「ヨ、ヨカッタ……ちょちょちょちょ、チョットフアンだったンでス」


 何度も詰まったり噛んだりしながらも、校長先生は日本語を話し続けます。


「ミナサンは、このなつやすみ、何かを、がんばり、マシ、たか? がん、ばったひとは、スバらしイです。ガンバラな、かった、ひ、とは、これから、がん、ばって、クださ、い。がんばれ、ば、かならズ、けっかは、で、マス」


 以前は全くと言っていいほど標準語が話せなかったのに、たった数ヶ月でとてつもない大進歩です。まだ聞き取りづらい部分はありますが、それでも相当な努力をした事が伺えます。努力する事の大切さを訴える校長先生。


「ワタシモ、まだま、ま、だ、だ、だ……」


(?)


 勇子ちゃんは、突然校長先生が言い淀んできた事に気付きました。


 そして、


「ズンズンズンズン! あっは! 獅子!」


 わけのわからない言葉を話し始めました。


「すみません皆さん。今の私はここまでが限界です」


 通さんが通訳をします。どうやら、校長先生はここまでしかちゃんと喋れないようです。


「バ!!!!!」


「ですが、必ずもっと喋れるようになってみせます。皆さんも何か頑張ろうとしている事があるなら、それをどうか頑張って下さい。頑張る事には苦しみが伴います。勇気だって必要です。ですが、頑張って手に入れたもの、出来るようになった事には、それ以上の価値があります。皆さんが、心の底から頑張れるものが見つかる事を願って、私の挨拶を終わります」


(だから何でその一言にそれだけの意味があるんだよ!?)


 勇子ちゃんは心の中でツッコミを入れました。本当に、謎の多い部族です。





 ◇◇◇◇





「校長先生の挨拶、あたし感動しちゃった」


「えぇ……」


 教室に戻ってから、愛奈ちゃんは感想を言います。勇子ちゃんからすれば、途中までは確かによかったんですけど、最後に台無しになった感じですね。


「あたし、校長先生の気持ち、よくわかるの。あたしも浩美先生の為に、いっぱい頑張ったから」


「……まぁ、言いたい事はわかったしね」


 この笑特小で一番の努力家は、恐らく愛奈ちゃんでしょう。次点で勝希ちゃんでしょうか。


「あたしももっともっと頑張らなきゃ!」


「ほどほどにね。あんたが身体壊したりしたら、一番悲しむのはたぶん、先生だから」


「はーい」


 勇子ちゃんの注意に、愛奈ちゃんは素直に返事しました。


「あ。頑張るといえばさ、あたし頑張ったよ、夏休みの自由工作! あれは改心の出来ってやつだね」


「いや、確かに難しいけどさ、ちょっと気合い入れすぎじゃない?」


 確かに入れすぎですが、頑張る時にとことん頑張るのも、愛奈ちゃんのいいところです。


「明日が楽しみだなぁ!」


 今日は学活をやって終わりで、明日は夏休みに作った自由工作の発表会です。愛奈ちゃんは自分の作品を発表する時を、楽しみに待っていました。





 ◇◇◇◇





 翌日。


「では、今日は皆さんが夏休みに作ってきた工作を、発表してもらいます」


 浩美先生が促し、生徒達が次々に自分の作品を発表していきます。


「私は絵を描いてきました」


「あっ……」


 描子ちゃんが描いてきた絵を見て、浩美先生は絶句しました。恵寿野くんと摩沿ちゃんが、美術室でSMプレイをしている絵です。しかも妙に力の入ったタッチで描かれており、そこはかとないエロスを感じます。


「私ももっと絵の腕を上げたくて、ちょっと背徳的な題材にしてみたんです。恵寿野くんと摩沿さんには、とても感謝してます」


 絵の紹介をする描子ちゃん。モデルになった恵寿野くんと摩沿ちゃんは、どこか誇らしげです。一応、合作という形のようですね。


「あ、はい、すごいですね」


 絵を褒める浩美先生の瞳からは、ハイライトが消えていました。実際、小学校の夏休みの宿題で、こんなのを提出されても、そうとしかコメント出来ません。反応に困ります。それと、あの夜の出来事が幻覚ではなかったと思い知りました。


「……あんたまさか羨ましいとか思ってるんじゃないでしょうね?」


 恐ろしい作品を見せつけられて、勇子ちゃんは愛奈ちゃんに訊ねました。


「そんなわけないじゃん。あたしはもっと、優しくするよ」


「……優しく、ねぇ……」


 愛奈ちゃんの優しいの基準が、いまいちよくわかりません。今のが聞こえたのか、浩美先生が肩をぶるりと震わせました。


 次は友香ちゃんの番です。


 友香ちゃんが作ってきたのは、長袖のパーカーでした。胸の部分に、しっかりと、栄子さんが働く服飾店、金塚コーディネートのロゴが描かれています。初めて服飾店の名前を出しました。


「これ、宿題の展示期間が終わったら、浩美先生にあげる」


「いいんですか?」


「いい。お母さんにそうした方がいいって言われた」


 友香ちゃんと知り合う限り、浩美先生が衣服に困る事はありませんね。


 勇子ちゃんが作ってきた夏休みの宿題は、パズルでした。完成絵は、灯台のある岬です。


「ずっと前から作ってみたいと思っていたパズルで、買ってきて作りました」


 パズルはあまり得意ではありませんが、これぐらいは出来るようになっておきたいと思い、貯めていたお小遣いを使って買ってきたのです。


 それに対して、愛奈ちゃん、勝希ちゃん、友香ちゃんの感想は、


「普通だね」


「普通だな」


「無難」


 というものでした。


「そこうるさい!!」


 少しでも一般人でありたい勇子ちゃんは、怒ってツッコミを入れました。


「僕達の」


「工作も」


「合作だぜ!」


 続いては江口ギャング団の番です。ブルーシートが掛けてあって、まだ見えません。


「ジャジャーン!」


 楽しそうにシートを取る江口君。


「……これは……銃、ですか?」


 浩美先生が見た感じ、それは三丁の銃に見えました。


「僕達が作った極悪兵器、パンチラガンッス!」


「ぱ、ぱんち……?」


 言っている事の意味がわからず、困惑する浩美先生。


「これを、こうすると……」


「きゃっ!?」


 半助君は銃の内の一つを手に取り、浩美先生に向けて引き金を引きます。すると、リング状の光弾が発射され、浩美先生に命中しました。


 しかし、何も起こりません。


 と、思っていた時でした。


「……え?」


 いきなり、浩美先生のタイトスカートが、バッサァ! とめくれたのです。


「……きゃああああああああ!!」


 突然の事に反応が遅れ、慌てて浩美先生はスカートを押さえます。しかし、前を押さえると後ろがめくれ上がり、驚いて後ろを押さえると前がめくれ上がります。両手で前後を押さえると、今度は左右がめくれ上がりました。


「な、何ですかこれ!?」


「これぞ、半助特製のパンチラガンの威力だ!」


「このパンチラガンから発射される光弾を受けた女性は、一分間パンチラをし続ける状態になるッス! 何をしても、どんな体勢になっても、一分間は絶対にパンチラをし続けるッスよ!」


 なんという恐ろしい変態兵器でしょうか。浩美先生のパンツは黒くて、ちょっと透けています。つまりこの状態は、ぶっちゃけ通報待ったなしです。


 しかし、こんなものを恋人に使われて、愛奈ちゃんが黙っているはずもなく、


「お前ら全員死ね!!!!!」


「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」」」


 吼えました。愛奈ちゃんの咆哮によって衝撃波が発生し、江口ギャング団だけが黒板を突き破って吹き飛ばされます。この夏休みで、愛奈ちゃんはまた一段と強くなりました。江口ギャング団のような雑魚の集団とは、もはや拳を交える必要すらありません。


「友香!」


「だめ。スカートを押さえられない」


 友香ちゃんは念力を使って浩美先生のスカートを押さえようとしますが、いくら押さえても跳ね返されてしまいます。このまま大人しく、一分間パンチラをするしかないのでしょうか。


「よーし、あたしが何とかする」


 いえいえ、そんな事はありません。愛奈ちゃんが浩美先生のスカートに片手を向けて、


「はっ!!!」


 一喝、気合いを飛ばしました。すると、浩美先生のスカートが元通り、降りたのです。


「あたしの気で、あの銃の力を消し飛ばしてやったよ」


 愛奈ちゃん、そんな器用な事も出来るようになったんですね。


「さて、浩美先生の貞操も守られた事だし、授業を続けよっか」


「え? でも江口君達が」


「続けよっか」


「……はい」


 愛奈ちゃんの有無を言わせぬ圧力に気圧され、浩美先生は震えながら授業を続ける事にしました。


「とんだ邪魔が入ったものだが、次は私だ」


 次は勝希ちゃんの番です。勝希ちゃんが作ってきたのは、前道グループ本社ビルの模型でした。しかし、ただの模型ではありません。


「これ、大理石ですよね!?」


 先程の恐怖はどこへやら、浩美先生は興奮しています。この模型は、大理石で出来ていました。材料の取り寄せ、造形やら研磨やら、全ての作業を彼女一人の手で終えています。


「しめて500万といったところだ。安い買い物だったな」


「えー……」


 500万の大理石を安いと言うこの少女。流石、お金持ちの感覚は違います。浩美先生、ドン引きです。


「どうだ高崎? 私からすれば安い買い物だが、貴様には用意出来なかろう?」


 勝希ちゃんは得意顔でした。確かに、愛奈ちゃんの家庭は庶民寄りなので、大理石なんてとても用意出来ません。


「ふん。こういうのはね、気持ちの強さなんだよ」


 しかし、良い材料を使う事が、必ずしも良い作品を作る事には繋がらないのです。


「あたしの工作は、勝希ちゃんの工作からヒントをもらって作りました」


 遂に真打ち、愛奈ちゃんの作品です。これもブルーシートが掛けてあって、どんな作品かわかりません。


 愛奈ちゃんが、シートを取りました。


「名付けて、ヴィーナス誕生だよ!」


 愛奈ちゃんが作品のタイトルを言うと同時に、クラス中から歓声が上がります。


 皆さんはヴィーナス誕生という絵画を見た事がありますか? 大きな貝の中から裸の女性が出てきている、アレです。アレの女性と貝の部分を、木で作った彫刻が飾られていました。小学生にあるまじき力作で、大人が作ったものと比べても遜色ありません。大げさかもしれませんが、このまま美術展に出してもいいくらいです。


 ただ問題があるとすれば、女性の顔が浩美先生の顔である事でしょうか。


「ヴィーナスって女神って意味でしょ? あたしにとって女神って言ったら、浩美先生だからね!」


「いやあああああああああああああああああ!!!」


 自分のヌードを見せているも同然の彫刻を前に、浩美先生は顔を真っ赤にして、両手で隠しました。


 材料ではなく気持ちが大切とは言いましたが、愛奈ちゃんが浩美先生に対して抱く気持ちは、些か以上に強すぎます。


「もっと欲望を抑えて作れやーーーーーーーっっ!!!」


「リビドーーー!!!」


 案の定、勇子ちゃんからツッコミを入れられて、愛奈ちゃんは頭から床に突き刺さりました。





 ◇◇◇◇





「くそ……高崎のやつ、マジでムカつくぜ……」


 その日の帰り道、満身創痍の江口ギャング団は、拳を交える事すらなく自分達を叩きのめした愛奈ちゃんに対して、毒づいていました。まぁ、あんなもん作ったら、一部の変態さん以外全員激怒すると思いますけどね。そうだよ、画面の前でブヒブヒ鳴いてるお前らだよ。


 ちなみにパンチラガンは愛奈ちゃんと勇子ちゃんに、三丁まとめて壊された挙げ句、焼却炉に放り込まれました。


「でも、計画通りですよね」


 しかし、これで終わらないのが江口ギャング団。甚吉君は江口君に言います。


「ああ。半助」


「はいッス!」


 江口君に命令されて、半助君が二人に、拳銃を渡しました。半助君自身も、同じ型の拳銃を持ちます。


 実は、これもパンチラガンです。半助君は通常のパンチラガンを開発しながら、小型化も同時に進めており、今日提出したのは大型の試作品でした。


「お前の行動パターンは読めてるんだよ」


 公の場であれを見せれば、愛奈ちゃんが破壊しようとするのは目に見えています。わざと破壊させる事で、江口ギャング団の企みは潰えたと見せ掛けて、もっと高性能な小型のパンチラガンで悪事を働くというのが、江口君と半助君の作戦でした。


「じゃあ今日は、さっさと帰って寝ようぜ。明日は忙しいからな」


「はい!」


「了解ッス!」


 明日自分達が実行する大悪行の為、江口ギャング団は帰宅しました。





 ◇◇◇◇





 翌日。


「きゃああああああああ!!」


「何よこれ~~~!?」


 和来町中を、女性の悲鳴が包みました。言うまでもなく、江口ギャング団の仕業です。


「そらそらそら!!」


「全員パンチラしろ!」


 江口君と甚吉君が、女性を発見し次第パンチラガンを発砲し、どんどんパンチラさせていきます。


「こら! そこのエロガキども!」


 そこへ、桃野さんと美魅さんの婦警コンビが、江口ギャング団を逮捕しに来ました。


「喰らうッス!」


「きゃあ!」


「スカートが!」


 半助君が素早く反応し、二人をパンチラさせて、動きを封じます。


「この改良型パンチラガンは、持続時間を三分にパワーアップしてるッス」


 スリーピースしながら説明する半助君。一分と三分じゃ、あんまり変わらない気がしますが。


「さて、デモンストレーションはこんな感じでいいんじゃないッスか?」


「おう! そろそろ、本番行くぜ!」


「はい!」


 新兵器の試運転を兼ねたデモンストレーションは、これで終わりです。悪ガキ三人組は、いよいよ本命の笑特小に向かいます。



「いや~~~!」


「見ないでぇ~!」


「変態! エッチ!」


「見られるぅ~! 全部見られちゃうぅ~!」


 江口ギャング団は大暴れ。おかげで笑特小は、阿鼻叫喚の地獄絵図です。一人変態がいた気がしますが、地獄絵図です。


「もっと見てぇ~! 私の純白を見てぇ~!」


 地獄絵図ったら地獄絵図です。


「ちょっとこれ何の騒ぎ!?」


 ようやく勇子ちゃんと友香ちゃんが到着しました。


「ふわぁ~……今日は何だか眠いなぁ~」


 少し遅れて、愛奈ちゃんも入ってきます。


「あ! あんた達それ……!」


「その通り! 昨日お前らに壊されたぶんとは別の改良型を作っておいたのさ!」


 勇子ちゃんに言い放つ江口君。


「試作品の恨み、まずお前から晴らしてやるッス!」


「えっ!?」


 昨日の恨みを忘れていなかった半助君が、勇子ちゃんを狙ってパンチラガンを放ちます。浩美先生の時と同じように、勇子ちゃんのミニスカがめくれ上がりました。


「きゃああああああああああああ!?」


 悲鳴を上げて座り込む勇子ちゃん。しかしどんなに隠そうとしても、スカートがめくれてしまい、パンツを隠せません。


「くまさんぱんつ」


「言わないで!!」


 友香ちゃんが勇子ちゃんのパンツの柄を口にし、勇子ちゃんは座り込んだまま、顔を真っ赤にして怒ります。


「お前もだ!」


 甚吉君が発砲。友香ちゃんのスカートがめくれました。


「いやーん」


 友香ちゃんは諦めているのか、棒立ちのまま、無表情で棒読みの悲鳴を上げました。


「おお~! 友香のぱんつは紫のレース付きだ! 大人っぽい! それに比べていさちんは……」


「あんた、あとで覚えてなさいよ!!」


 二人のパンツを見比べる愛奈ちゃん。子供扱いされて、勇子ちゃんは大激怒です。しかし、今は少しでもパンツを見られないようにする為、両手で前を隠しているので、愛奈ちゃんにツッコミが出来ません。


「次はお前だ!」


「おっと」


 パンチラガンを撃つ江口君。しかし、そう簡単に当たるはずもなく、愛奈ちゃんは宙返りしてかわします。


「きゃあ! 何これ!?」


 その代わりに、今入ってきたこがねちゃんに当たりました。


「くそっ!」


「当たれッス!」


 こがねちゃんを無視して、甚吉君と半助君も参加します。


「よ、ほ」


 空中の愛奈ちゃん。左右に飛びながらかわします。


「この野郎!」


 撃つ江口君。しかし、愛奈ちゃんには当たりません。


「下手くそ~」


 宙返りしたり、サイドステップしたり、あっかんべーをしたりして、おちょくりながら、愛奈ちゃんはかわしていきます。流石、武道経験者。


「きゃあっ!」


「えっ!?」


 背後から聞こえた、聞き覚えのある悲鳴に、愛奈ちゃんは振り向きました。


「ひ、浩美先生!!」


 そこには、座り込んでいる浩美先生が。


「そ、そんな……」


 今の攻撃をかわしたせいで、浩美先生が二日連続でパンチラする事になってしまいました。


「あ、あたしのせいで……」


 自責の念に駆られる愛奈ちゃん。


「今だ!」


 愛奈ちゃんを羞恥の海に沈めるには、今をおいて他にありません。江口君は、これまでにやられた事をやり返すかのように、パンチラガンの銃口を愛奈ちゃんに向けました。



 その時、



「何の騒ぎだ一体」


 勝希ちゃんが入ってきました。


「うわっ!」


 予期せぬ来訪者に驚き、江口君は反射的に勝希ちゃんを向いてパンチラガンの引き金を引いてしまいます。


「む?」


 勝希ちゃんも完全に予想外な攻撃に反応出来ず、パンチラを晒してしまいました。


「勝希」


「ん?」


「見えてるわよ!?」


 友香ちゃんと勇子ちゃんが、その事を指摘します。


「……ああ。昨日のアレか」


 しかし勝希ちゃんときたら、全く何も感じていません。どうやらこの子、羞恥心というものがないようです。


 ちなみに、勝希ちゃんのおぱんつは意外や意外、純白でした。


「高崎は何を落ち込んでいるのだ?」


「周りをよく見て」


「よし把握した」


 友香ちゃんから促され、勝希ちゃんは0.01秒で状況を理解します。


「おい高崎。貴様が何とかせんと、先生はずっとこのままだぞ?」


「それだけは駄目!!」


 勝希ちゃんから浩美先生を引き合いに出され、一瞬で立ち直った愛奈ちゃんは、


「はぁッ!!」


 昨日と同じように、浩美先生をパンチラさせている力場を消し飛ばします。昨日より気合いが入っている気がするのは気のせいでしょうか?


「お前ら、絶対に許さない!!」


 激怒した愛奈ちゃんは、全身から闘気を噴出させます。その様はまさしく悪鬼羅刹そのもので、まともな神経の持ち主なら裸足で逃げ出す事でしょう。


「へっ! そう来なくちゃな!」


 しかし、江口ギャング団はまともな神経の持ち主ではありません。小さくても、この作品のメインヴィランを務めている精鋭なのですから。


「その割には力の差が離れすぎてる気がする」


「友香、誰と話してるの?」


「天の声」


 はっはっは~聞こえんなぁ~?


「はぁっ!」


 愛奈ちゃんは撃たれる前に片手を向け、闘気ではなく衝撃波を飛ばします。江口ギャング団は為す術もなく、壁をぶち抜いて飛んでいきました。


 それを追い掛けて穴から飛び出す愛奈ちゃん。わかっているとは思いますが、ここは三階ですよ?


「!」


 愛奈ちゃんは下を見て気付きました。江口ギャング団が着地していて、パンチラガンをこちらに向けています。なんで無事なんですかね?


 パンチラガンから放たれるパンチラ光線。愛奈ちゃんはそれを、飛び回りながら回避していきます。これ何の小説でしたっけ?


「やっぱり当たらねぇな……」


「わかっていた事のはずッスよ」


 江口君は舌打ちしますが、半助君にとっては予想通りの光景です。なぜなら、これがどういう兵器かという事前情報を、昨日の内に愛奈ちゃんに与えてしまっていますから。どんな武器かわかっているのに、自分から当たりにいく人はいません。え? パンチラするだけでダメージ自体はノーダメージだろって?


 ……そこに気付かれたからには生かしておくわけには


「こんな時の為に、作戦を練ってあるッス!」


「ああ、そうだったな!」


 しかし、当たらないなら、当てるまで。


「行くぜ高崎ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 零距離接射なら、どんな下手っぴでも確実に当てられます。まさに、完璧な作戦です。


「馬鹿でしょあんた」


「ぐはああああああああああ!!!」


 相手が肉弾戦の達人であるという点を除けば。愛奈ちゃんに近付いて攻撃するなど、愚策もいいところです。江口君は一瞬で何発もの拳を叩き込まれて、吹き飛びました。


「掛かったッスね!」


 しかし、それで終わるはずもなく、半助君と甚吉君が、愛奈ちゃんにパンチラガンを向けていました。


 肉を切らせて骨を断つ。江口君の特攻は囮で、本命はこちらだったのです。


「しまった!」


 いくら愛奈ちゃんでも、ここからでは回避が追い付きません。二人から放たれた光弾が、愛奈ちゃんに命中しました。


「やった! 遂にやってやったぜ!」


 地面に這いつくばったまま、江口君が歓声を上げます。江口ギャング団が、三分経って追い掛けてきた浩美先生が、勇子ちゃんが、友香ちゃんが、勝希ちゃんが、固唾を飲んで見守る中、スカートがめくれていき、




「どうも。高崎愛奈の弱点です」




 その下から、愛奈ちゃんの弱点が顔を出しました。


「「「はあああああああああああああ!!?」」」


 宇宙編で死んだはずの、愛奈ちゃんの弱点。それが愛奈ちゃんの下半身から生えてパンチラを隠しているという意味のわからない事態に、江口ギャング団は口を開けて間抜けな声を上げました。


 ちなみに、なんと今回は愛奈ちゃんの弱点の顔が、愛奈ちゃんのパンツを隠すように、四つ、四方に向けて出ているという、もっと意味のわからない状態です。


「私と愛奈は一心同体」


「愛奈が死なない限り、私の存在も不滅」


「だから何度でも現れる」


「そして、無限に増殖が可能」


 四つの頭が、それぞれ順番に喋ります。えーと、つまり宇宙編で死んだ愛奈ちゃんの弱点は、ちゃんと死んでいて、ここにいるのは再び愛奈ちゃんから発生した別個体という事ですね。そして、愛奈ちゃんが死なない限り何度でも、いくらでも現れると。弱点って何でしたっけ? 読者の皆さんは、辞書を引くなりググるなりして調べて下さい。


「何でかしら? 私には愛奈が人間の姿をしているだけの化け物に見えてきたわ」


「理不尽ここに極まれり、だな」


 あまりの光景に、勇子ちゃんと勝希ちゃんは、愛奈ちゃんが人間かどうかを疑っています。


「そ、そんなのアリかよ!? 俺の犠牲は何だったんだよ!?」


 自身を囮に使っても、その上を軽々と越えていく。愛奈ちゃんの理不尽さに、江口君は脱帽しています。


「知るかそんなもん!!」


 しかし、愛奈ちゃんからすればそんな事は、知った事ではありません。浩美先生のスカートにパンチラを強制し、生徒達の前で辱めたその報いを受けさせる。今の愛奈ちゃんの行動原理は、それだけだからです。


「超絶奥義、神風ロケット顔!!」


 愛奈ちゃんが叫ぶと、愛奈ちゃんの下半身を隠していた愛奈ちゃんの弱点達の顔が、ミサイルのような軌道を描いて一斉に飛んでいき、江口ギャング団に直撃して爆発しました。ちなみに、パンチラガンのエネルギーの排除を同時にやっているので、スカートは普通に降ります。


「「「ぎゃあああああああああああああ!!!」」」


 空中に吹き飛ぶ江口ギャング団。愛奈ちゃんはそんな彼らに狙いを定めて、


「紅蓮情激波ーーーーーーー!!!」


 紅蓮情激波を放ちました。


「うぎゃああああああああああああああああああ!!!」


 闘気に吹き飛ばされて、星になる江口ギャング団。


「浩美先生! 悪は滅びたよ!」


「は、はぁ……あ、ありがとう、ございます?」


 お礼を言うべきかどうかはわかりませんが、とりあえずお礼を言っておく浩美先生。


「こんな感じで、二学期もしっかり浩美先生を守っていくから、安心してね!」


 屈託のない笑みを浮かべる愛奈ちゃん。


 手段は乱暴極まりありませんが、それは全て浩美先生を守る為の行動です。それがわかっている浩美先生は、


「はい。よろしくお願いしますね」


 少し困ったような、照れたような笑みを浮かべながら、愛奈ちゃんにお願いをしました。


「一件落着」


「そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 友香ちゃんは頷き、勇子ちゃんは叫びます。勝希ちゃんは、もうなんかいろいろと諦めていました。



 波乱のスタートを切った笑特小の二学期。はてさて、どうなる事やら。

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