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エクストリームガールズ!!  作者: 井村六郎
夏期激闘編
30/40

第三十話 大興奮!! 石原家と行く〇〇旅行

「ふっふふーん♪」


 愛奈ちゃん、今日は朝からウキウキです。それもそのはず。今日は待ちに待っていたお盆なのですから。


「愛奈。準備出来た?」


「うん!」


 今回の旅行は泊まりです。着替えや歯磨きセットなどの準備を終えて、愛奈ちゃんは家族と一緒に、石原家に向かいました。




 石原家。


「こがねちゃんおは~」


「おはよう愛奈ちゃん! 待ってたよ!」


 着いてみれば、石原家の周りにはもう、今日一緒に旅行に行く人が全員集まっています。


 メンバーは、愛奈ちゃん達高崎家。浩美先生に勇子ちゃんと尚子さん、友香ちゃんと勝希ちゃん、弓弩くんと氷華さん。そして、石原家です。


「よかったのかい勇子? 私なんかが一緒に来て」


「タダでご飯もらえるんだもん。一緒に行かなきゃ損よ」


 謙遜する尚子さんに、勇子ちゃんは耳打ちします。いろいろとたくましい子ですね。友香ちゃんはご両親がどうしても予定を空けられず、一人だけの参加となりました。


「それで、今回の旅行はどこに行くんですか?」


 弓弩くんが、金剛さんに訊ねます。行き先を知っているのは愛奈ちゃんだけで、他の人は何も教えてもらっていないのです。愛奈ちゃんはすぐそばで、笑いをこらえていました。


「では、そろそろ教えようかの。皆さん、庭へ」


 ここでは話せないらしく、金剛さんは全員を庭に誘導します。


「琥珀、やっておくれ」


「はーい」


 金剛さんにお願いされた琥珀くんは、いつもの愛車にまたがり、ストロンゲストクレイドルを発動します。すると、自転車が見た事もない乗り物に変化しました。縦にとても長く、一番下にブースターが付いています。近い乗り物を挙げるとするなら、スペースシャトルが一番近いでしょうか。


「これから行く場所は、ビッグコズミックワンダーランド。ここから二千光年離れた先にある、宇宙の楽園じゃ」


「えっ!? ちょっと待って下さい! 私達、今から宇宙に行って、別の星に行くって事ですか!?」


 あまりに突拍子もない話に、浩美先生は待ったを掛けました。つまり、今ここにいるメンバーは、宇宙に行くのです。


「正確には人工の天体。宇宙ステーションに近い場所じゃがな」


「あははっ! やっぱり浩美先生すごくびっくりしたね!」


「びっくりなんてものじゃないですよ! 宇宙ですよ!? 宇宙!」


 サプライズが上手くいって、愛奈ちゃんはご満悦です。


「まさか、夏休みの旅行で宇宙に行く事になるなんて……」


「すごくいい。まさしく夏休みに相応しい旅行先」


 勇子ちゃんは話だけで圧倒され、友香ちゃんは笑みを浮かべています。確かに、忘れられない思い出になる旅行先です。


「さて、では出発しようかの。宇宙船に乗り込むんじゃ」


 金剛さんが言うと、琥珀くんが作った宇宙船のゲートが開き、全員が乗り込みます。


「皆さん、忘れ物はありませんか?」


 荷物を専用のスペースに置き、椅子に座ると、しろがねさんが確認します。一度宇宙まで行ったら、戻ってくるのが大変ですからね。


「大丈夫ですよ」


 亮二さんが、全員を代表して答えました。


「よし。琥珀、やっとくれ」


「はーい」


 金剛さんが、椅子に付いているスイッチを押しながら言うと、パイロット席にいる琥珀くんから、スピーカー越しに返事が返ってきます。その直後に、愛奈ちゃん達が座る椅子から、金属製のベルトが伸びてきて、一同の身体を固定しました。


「出発でーす!」


 この宇宙船の操縦室には、スイッチなどはありません。あるのは、身体を支える為の椅子と、気分を盛り上げる為の操縦桿だけ。なぜなら、この宇宙船は琥珀くんそのものであり、全てが琥珀くんの意思一つで、自由自在に操れるからです。乗るだけの人にとってはそうではないので、通信装置などを用意してはありますが。


 琥珀くんが離陸すると念じると、ブースターが点火し、あっという間に家から出発して、大気圏を突破します。同時に、宇宙船の内部が水平になるように、回転します。


「大気圏突破を確認しました。これからスーパーワープを開始するので、舌を噛まないように、しっかり口を閉じていて下さーい」


 中の人々を配慮して、琥珀くんがアナウンスしました。友香ちゃんが日長さんに問い掛けます。


「スーパーワープ?」


「光の何百倍もの速度で長距離を移動する、琥珀くんの能力の奥義さ。その分反動が大きいから、口を閉じてないと舌を噛んじゃうけどね」


「カウント開始。3、2、1、0!」


 琥珀くんがカウントし、宇宙船はスーパーワープを始めます。空間に穴が空き、超空間を超光速で移動する、琥珀くんの宇宙船。


「……!!」


 浩美先生は舌を噛まないように、必死で口を閉じ、歯を噛み締めています。


 数分後、


「到着でーす! 窓の外を見て下さーい!」


 スーパーワープが終わったらしく、船内を襲っていた反動が一気に和らぎました。ベルトも外れます。


「みんな、見て見て!」


 自由になった愛奈ちゃんは、早速窓に駆け寄ります。そして、勇子ちゃん達に一緒に外を見るよう促しました。勇子ちゃんと友香ちゃんが駆け寄り、浩美先生がゆっくり歩いて近付きます。


「わぁ……!!」


 勇子ちゃんが感嘆の声を上げました。友香ちゃんは、無言で驚いています。浩美先生は、遅れて窓の外を覗きました。


「あ……!!」


 窓の外に広がる宇宙空間。その先に、巨大なテーブル状の人工天体があります。その上には、これまた巨大なテーマパークが建っていたのでした。


「あれが、ビッグコズミックワンダーランド?」


 反対側の窓から、勝希ちゃんが見ています。金剛さんが説明しました。


「その通り。宇宙一のテーマパークでな、お盆の期間はスペース感謝祭という、とりわけ大きな祭りをやるんじゃ。それに招待したかったんじゃよ」


「僕達、お盆になるといつも連れていってもらうんだ」


「今回はみんなとも一緒に行きたいって思ったのよ。六年生になったお祝いも、まだしてないしね」


 鉄男くんと銅子さんが補足します。以前にもしろがねさんが説明したように、石原家の人々はお祭り騒ぎに目がありません。だから、こういう感謝祭とかそういう話を聞くと、祭り好きの血が騒いでしまうのです。


 ふと、周りを見てみると、ビッグコズミックワンダーランドを目指して飛んでいる宇宙船がたくさん見えました。どの宇宙船も、スペース感謝祭目当てのお客さんです。


「みんな楽しめましたか? 今からゲートに行くので、もう一度席に着いて下さーい」


 また琥珀くんからのアナウンスです。当然タダで入れる場所ではなく、入場手続きが必要です。これからゲートに行って、その手続きをしなければなりません。愛奈ちゃん達は素直に従い、席に戻りました。


「入場券をご提示下さい」


「はーい」


 宇宙船が長蛇の列を作るワンダーランドのゲート。自分の番になった琥珀くんは、入場券の提示を求められ、あらかじめ金剛さんから渡されていた入場券を取り出して、真上に掲げます。

 すると、入場券から光が飛び出し、宇宙船の壁を貫通して、ゲートの管理室に届きました。光が何かの装置に当たると、その横にあるパネルに〇印が表示されます。


「確認致しました。ごゆっくりお楽しみ下さい」


「はーい」


 入場許可が下りた事を装置が確認し、ゲートが開きます。


 園内の表示に従って進む宇宙船は、駐船場に辿り着き、宇宙船を停めた琥珀くんがアナウンスしました。


「到着でーす! 気を付けて降りて下さーい!」


 いよいよ着きました。愛奈ちゃん達が荷物を持って降りると、宇宙船が自転車に戻り、それを能力でポケットに入るサイズまで小さくしてから、琥珀くんも合流します。


「わあ……」


 駐船場を出た浩美先生は、周りを見回して感嘆しました。


「ここが宇宙一のテーマパーク、ビッグコズミックワンダーランド……!!」


 そこは、様々な宇宙人達が、思い思いに感謝祭を楽しむ、宇宙の楽園でした。風船をもらっている子供や、見た事のないお菓子を買って食べているカップルが見えます。


「さて、ここからは、この入場券を持ってくれ。なくさんようにな」


 金剛さんが、全員分の入場券を渡します。これ一枚あれば、感謝祭終了まで、全てのアトラクションや売店を利用出来るのです。


「それじゃあ、まずはホテルにチェックインしましょうか」


 日長さんが言いました。ビッグコズミックワンダーランドには、長期滞在を想定してホテルが設けてあります。まずは荷物を置いてこないと、落ち着いて楽しめませんからね。ホテルへは、石原家が案内します。もう何回も来ているので、全く迷いません。





 ◇◇◇◇





 ホテルにチェックインして荷物を置いた後は、全員が宇宙一のテーマパークを楽しみました。愛奈ちゃんと浩美先生が綿飴を食べさせ合ったり、友香ちゃんが勇子ちゃんと尚子さんにソフトクリームを奢ったり、弓弩くんと氷華さんが観覧車に乗ったり、高崎家と石原家の大人組がおしゃべりしたり、こがねちゃん達三兄妹がゴーカートに乗ったり、それはもう、夢のような時間でした。


「どうかな浩美先生?」


「はい。おかげさまで楽しんでいます」


 一通り楽しんだ一同は、休憩の為に合流します。金剛さんが初めての宇宙旅行の感想を訊くと、浩美先生は笑顔で返しました。逆に、浩美先生はずっと気になっていた事を訊ねます。


「ところで、どうしてこんなすごい所の入場券なんて手に入れたんですか?」


 よく考えてみれば妙な話です。地球では能力者の存在こそ認知されていますが、宇宙人はまだです。それなのに、どうして宇宙人のテーマパークの存在を知って、なおかつそこの入場券を持っているのでしょうか。


「実は、前に琥珀の特訓に付き合った事がありましてな」


 金剛さんは語りました。琥珀くんの能力は、乗り物のパワーアップです。自分の力でどこまで自転車をパワーアップさせられるか、またパワーアップした自転車でどこまで行けるか、試してみたくなった琥珀くんは、金剛さんとしろがねさんにお願いして、特訓しました。


 琥珀くんの最終的な目標は宇宙です。ならいきなり挑戦してみればいいという話になり、ここに来る時のような宇宙船を形成、金剛さんとしろがねさん、琥珀くんの三人を乗せたプチ宇宙旅行をしたのです。


「そうしたら旅行した先で、このテーマパークの園長が宇宙海賊に襲われていましてね。危ないところをお助けした結果、園長と私達の間に繋がりが出来たんですよ」


 しろがねさんが説明します。その時の恩で、石原家は園長から入場券をもらい続けているのです。


「な、なるほど……」


「何とも、師匠らしい理由ですなぁ」


 浩美先生は引きながら納得し、亮二さんは笑っていました。浩美先生は話のスケールが大きすぎて、まだ上手く飲み込めていません。


「……あれ? 勝希ちゃんは?」


 と、慎太郎さんが、勝希ちゃんだけ合流していない事に気付きました。今ビッグコズミックワンダーランドは感謝祭だけあって、かなりのお客さんで賑わっています。迷子になったら大変です。早く探さなければなりません。


「ん? あの辺りが騒がしいな……」


 弓弩くんが、近くに人だかりが出来ている事に気付きます。気になった全員が、その人だかりに近付いて、何が起きているのかを見ました。


 そこには、勝希ちゃんがいました。テーブルを挟んで、屈強な男性と向き合っています。


「では、勝っても負けても恨みっこなし!」


 勝希ちゃんは男性と腕を組み合い、腕相撲をする形になっていて、レフェリーを務めるひょろ長な男が、二人の手を押さえます。


「レディー……ファイッ!!」


 レフェリーが手を離すと、男性が力を入れました。


(この腕は鋼鉄の柱も折り曲げる、機械の義手だ!! こんなチビの細腕なんざ、簡単にへし折ってやるぜ!!)


 男性は自分が必ず勝てると、たかをくくっています。


 しかし、どれだけ腕に力を入れても、勝希ちゃんの腕は揺らぎません。


「な、何だと……!?」


 義手の力をフルパワーにしてみましたが、びくともしません。


「……ふん!」


 腕を倒す勝希ちゃん。男性の腕は、凄まじい力でテーブルに叩きつけられます。勝希ちゃんの力が強すぎてテーブルが破壊され、男性の腕はアスファルトにめり込んでしまいました。肘から先が引きちぎられています。


「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」


 泣きわめいてアスファルトを転がる男性。勝希ちゃんの腕を破壊するつもりだったのに、破壊されたのは自分の腕でした。


「雑魚が……」


 冷たく吐き捨てた勝希ちゃんは、愛奈ちゃん達の存在に気付いて、戻ってきました。


「あんた何してるのよ……」


 勝希ちゃんの所業に、引き気味な勇子ちゃん。勝希ちゃんはまたしても、冷たく答えました。


「身の程をわきまえず喧嘩を売ってくる者がいたのでな、礼儀を教えてやっていた」


「あなたはどこでも、平常運転ね」


 氷華さんは呆れました。勝希ちゃんは先程、腕相撲勝負を挑まれたのです。くだらないので断ったのですが、どうしてもとしつこかったので、相手をしてあげたのでした。


「しかし、宇宙一のテーマパークといっても、大した事はないな。これではそこらの遊園地と、何も変わらん。退屈だ……」


「ちょっと! せっかく石原さん達が呼んで下さったのに、そんな言い方ないんじゃないの!?」


 勝希ちゃんの言い草に怒る勇子ちゃん。愛奈ちゃん達はしっかり楽しんでいますが、勝希ちゃんにとってはお気に召さなかったようです。


「ふふふ、そう言うじゃろうと思っておったぞ」


 金剛さんは不敵に笑いました。勝希ちゃんがそういう反応をする事は、予想通りだったのです。ただビッグコズミックワンダーランドを楽しむ為なら、毎日忙しい勝希ちゃんを誘うつもりはありませんでした。しかし、今日は感謝祭。ビッグコズミックワンダーランドにとっても、特別な日なのです。当然、いつものビッグコズミックワンダーランドなわけがありません。


「実はな、今日から二日間、このビッグコズミックワンダーランドで、宇宙武闘祭という、宇宙最強のチームを決める大会があるんじゃよ」


「……宇宙最強、だと……?」


 勝希ちゃんの目付きが変わりました。金剛さんはほくそ笑みます。


「どうじゃ、参加してみんか?」


「当然だ。参加するぞ」


 宇宙最強を決める戦いです。勝希ちゃんからすれば、参加しない理由がありませんでした。


 しかし、少し問題があります。


「今言った通り、宇宙最強のチームを決める戦いじゃ。一人では参加出来んぞ」


 そう。宇宙武闘祭は、チームバトルです。参加者は四人一組のチームを組まないと、参加出来ないのです。


「じゃあ、愛奈が参加するといい」


「え~? あたしは戦う事自体は好きじゃないんだってば」


 友香ちゃんから参加を勧められる愛奈ちゃん。愛奈ちゃんは断ろうとしましたが、はた、と思いました。


(ちょっと待ってよ? 宇宙最強を決める戦い?)


 もし自分が参加し、優勝して、宇宙最強だと認められたら。愛奈ちゃんは、そんなもしもの未来を想像します。



『浩美先生!! これであたしが宇宙最強だよ!!』


『愛奈さんすごいです!! じゃあ宇宙で一番強くなった愛奈さんに、ご褒美、あげますね?』


『ご、ご褒美? それって、何……』


『うふふ……わかってるくせに……』


『ひ、浩美先生……』


『愛奈さん、好き……』



「出る!! あたし出るよ!!」


 愛奈ちゃんは参加を決意しました。


「貴様の手を借りるのは癪だが、私が宇宙最強になる為には仕方あるまい」


「宇宙最強はあたしのものだよ。っと、あと二人いるね」


「それなら、私が参加する」


 友香ちゃんも参加をするようです。これで、出場に必要なメンバーは、あと一人。


「あと一人は誰がいいかしら? 強さとしては、竜胆さん?」


「今回は遠慮させてもらうよ。彼女のそばから離れたくない」


 氷華さんは、正体を知られてはいけません。だから弓弩くんは、実質的に力を使えない彼女の為に、そばにいなければならないのです。


「となると、あとはこがねさんか鉄男さんよね。どっちも強そうだし……ん?」


 勇子ちゃんは、三つの視線に気付きました。


「「「じー」」」


「な、何よ?」


 当然、参加する三人です。


「「「じーー」」」


「……ま、まさか、私に参加しろっての?」


 勇子ちゃんは非戦闘員です。かなり怪しいですが非戦闘員です。誰が何と言おうと非戦闘員です。そんな勇子ちゃんを、宇宙最強を決める激戦に引きずり込むなんて、鬼畜の所業です。


「無理よそんなの!!」


「大丈夫だっていさちん! 何だかんだでいさちん強いし!」


「私も、それがごく自然な流れだと思うがな」


「え、えぇ……」


 愛奈ちゃんと勝希ちゃんは、もうすっかり勇子ちゃんを誘う気でいました。


「心配しないで。戦いが始まったら、勇子は私達の後ろに隠れてればいい。ようは数合わせが必要だから」


 友香ちゃんは勇子ちゃんをなだめます。別に、勇子ちゃんは戦わなくてもいいのです。ただ、四人いるという事を証明する為に、そこにいてくれればいいのです。


「その代わり、私が全力で守る」


「……本当でしょうね?」


「もちろん」


「……わかったわ。あんた達に付き合ってあげる」


 勇子ちゃんは溜め息を吐いてから、渋々、参加を決意しました。


「金剛さん、大丈夫なんですか? 何だかすごく危なそうな戦いなんですが……」


 心配する尚子さん。彼女からすれば勇子ちゃんは、亡き夫の忘れ形見です。心配するのは当然です。


「大丈夫ですよ。わしも前に参加しましたが、安全な勝負になるようしっかりとした配慮がしてあります」


「それならいいんですが……」


 参加経験のある金剛さんが言うなら信用出来ると、尚子さんは胸をなで下ろしました。


「じゃあ私達も参加しよっか!」


「うん! 面白そうだ!」


「はーい!」


 何と、石原三兄妹も参加するそうです。


「お父さん、四人目お願い!」


「うん、いいよ。というわけで、子供達と一緒に遊んできますね」


「うむ」


「あなた、しっかりね」


 こがねちゃんに頼まれて、四人目のメンバーは日長さんになりました。


「こがねちゃんがライバルか……なんかすごい事になりそう!」


「負けないからね、愛奈ちゃん!」


 睨み合う愛奈ちゃんとこがねちゃん。


(石原日長……思わぬ強敵が出てきたな……)


 勝希ちゃんは、日長さんの存在を警戒しています。


「愛奈さん、気を付けて下さいね?」


「もちろんだよ浩美先生!!」


 愛奈ちゃんは心配する浩美先生に、サムズアップで返しました。




 ◇◇◇◇




「さぁ今年もやって参りました、宇宙武闘祭!! みんな、宇宙最強になりたいかーーーー!!」


 エントリーを済ませ、会場に入ると、実況を担当するグレイ型宇宙人が、マイクを片手に参加者達に訊きました。当然、全員が返事します。


「オーケーオーケー!! しかし、気持ちだけで手に入るほど、宇宙最強の称号は安くないぞ!! 手に入れる為には試練が必要だ!! まず、みんなに資格があるか確かめる為の、予選を始めるぞ!!」


 この宇宙武闘祭は、飛び入り参加も許可されています。なぜなら、予選が存在しており、これを突破出来ない者はどんな人間であっても、意味がないからです。


「今年の予選は、コズミック大迷路!!」


 実況が言うと、愛奈ちゃん達が集合している会場に、巨大なゲートが出現しました。ゲートの先は光に隠されていて、何があるのかわかりません。


「ルールを説明させて頂きます。このゲートは異空間に繋がっており、その異空間には巨大な迷路が存在しています。ゲートをくぐると、その瞬間にチームはランダムに、迷路内の別々の空間に飛ばされ、予選スタートです。迷路を進みながら相手チームと遭遇し次第、戦って下さい。残りのチーム数が八組になった段階で、予選は終了。その八組が、本戦への進出資格を得ます」


 愛奈ちゃん参加する選手には、液晶画面が着いたベルトが装着され、画面には100と表示されています。このベルトは、選手が受けるあらゆるダメージを肩代わりしてくれます。その代わりに、受けたダメージに応じて数字が減ってゆき、0になるとその選手は脱落。会場に戻されます。全員脱落すると、そのチームは失格とみなされ、本戦への参加資格を失います。しかし、一人でも残っていれば、脱落したメンバーも全員本戦に進出出来ます。


「どんな武器や戦い方をしても大丈夫! 勝負の世界は常にシビアだ! では、これより予選をスタート致します!」


 実況が予選の開始を告げると、選手達が我先にと、ゲートに雪崩れ込んで行きました。


「あたし達も行こう!」


「言われるまでもない……!」


 愛奈ちゃん達も、急いでゲートをくぐります。




 ゲートの先に広がっていたのは、高い石壁囲われた、迷路の空間でした。


「ホントに迷路に来たのね……強そうな相手といきなり鉢合わせない事を願うばかりだわ」


 非常に見通しの悪い空間です。その辺りの壁の陰から、いきなり対戦相手が飛び出してきたりしても、不思議はありません。いくら数合わせの為の参加とはいえ、勇子ちゃんは不安でした。


「大丈夫大丈夫! あたし達強いもん!」


 そんな勇子ちゃんの心配など、愛奈ちゃんはどこ吹く風です。


 その時でした。


「あら? あの辺りから声が聞こえるわね?」


 すぐ近くの壁の陰から、オカマっぽい声が聞こえてきました。


「どうやら最初の相手みたいよ」


「私達フェニックス星人の相手が務まるのかしらね?」


 次々にオカマっぽい声が聞こえてきます。ここまで近いと、もう交戦は避けられません。


「フェ、フェニックス星人? なんかすごく強そう……」


 勇子ちゃんの不安が、一気に深まります。


 そして、遂にフェニックス星人というらしい宇宙人のチームが、四人の前に飛び出してきました。


 人間と同じサイズの、セキセイインコです。しかも、下半身がふんどしを着用した、筋骨隆々の男性のものでした。


「まぁ可愛いお子さん達!」


「でも、勝負の世界に年齢は関係ないわ!」


「可哀想だけど、私達に会った不幸を呪いなさい!」


「さぁ、宇宙最強の不死鳥チームが相手よ!」


 そんな変態宇宙人達が、オカマ口調で話し掛けてくるのです。


「誰だてめぇらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 こんなフェニックスのイメージからかけ離れた存在達に、勇子ちゃんが反応しないわけがありませんでした。スーパーハリセンで、一撃で四人のフェニックス星人を、天高く打ち上げます。


「「「「バードォォォォォォォォォ!!!!」」」」


 四人はベルトのライフを0にされ、ベルトの転送機能で、会場へと脱落しました。


「やっぱりいさちんがチームメイトで正解だったね!」


 自分達が構える前に対戦相手を始末した勇子ちゃんを見て、愛奈ちゃんは喜びます。


(……今ほどこの女が敵でなくてよかったと思った事はない)


 勝希ちゃんは勇子ちゃんが味方だった事に安堵しました。


「勇子、大丈夫?」


 友香ちゃんは、荒い息継ぎをしている勇子ちゃんに声を掛け、


「宇宙なんてもうイヤ!!」


 勇子ちゃんは悲鳴を上げました。



 宇宙武闘祭は、まだまだ始まったばかりです。

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