第十話 兄妹の微妙な距離感
ここまで長く書いたの初めてかもしれない……でも小説って、ある程度の長さは必要だし、まぁ多少はね?
笑特小。
今は給食も終わって、お昼休みの時間です。
(友香は読書中、と)
勇子ちゃんは友香ちゃんの席を見ながら言いました。今友香ちゃんは、図書室から借りてきた分厚い本を熟読しています。
(私もたまには、真面目に読書、しようかな)
そう思って勇子ちゃんは、鞄に手を伸ばします。本といったら、マンガばかり読んでしまいがちですからね。小学生の時から、マンガ以外の本を読む癖を付けるのはとても大切です。
「いさちんいさちん」
せっかくお昼休みは静かに過ごそうと思っていたのに、いつものように愛奈ちゃんが話し掛けてきました。
しかし、今回はいつもと少し様子が違います。
「あれ? こがねさんじゃない」
愛奈ちゃんと一緒にいたのは、隣のクラスの石原こがねちゃんです。引っ込み思案な性格で、他人に近付く事は滅多にない子なのですが。
「こがねちゃん、あたしに相談したい事があるんだって。友達として見過ごせないって思ったんだけど、あたし一人じゃちょっと解決が難しくて……」
「あんたいつ友達になったのよ……」
勇子ちゃんが知る限り、愛奈ちゃんがこがねちゃんと仲良くしていた記憶はありません。
「愛奈は私達が知らないところで、知らない内に人脈を作ってる」
「うわびっくりした!!」
勇子ちゃんは驚きました。さっきまで黙々と読書をしていたはずの友香ちゃんが、いつの間にかすぐ隣に立っていたからです。
「面白そうだから私も混ぜて」
「面白そうって……」
「うんうん! 味方は多い方が早く解決出来るよ!」
「……まぁいいわ。それで、相談したい事って何なの?」
愛奈ちゃんはすっかり乗り気で、勇子ちゃんは仕方なく、友香ちゃんを加えてこがねちゃんの悩みを聞く事にしました。
「実はね、私には鉄男っていうお兄ちゃんがいるんだけど……」
(ふーん……こがねさん自身の問題じゃないんだ?)
どうやら、お兄さんに関係のある事らしいです。
と、ここで勇子ちゃんはさらに思いました。
(あれ? 愛奈に解決出来ない事が、私に解決出来るのかしら?)
しかし、そう思ってももう遅い。こがねちゃんはさらに続けます。
「昨日お兄ちゃんに貸してたマンガを返してもらおうと思って、お兄ちゃんの部屋に行ったの。そしたらお兄ちゃんいなくて、仕方ないから勝手に入って取ったんだけど……」
そこでこがねちゃんは、言葉に詰まりました。
「お兄ちゃんのベッドの上に……」
少し間を置いて、それから顔を真っ赤にし、両手で隠して、こがねちゃんは言います。
「エロ本があったの!!」
「案の定だよ!! 相談されても困る問題持って来ちゃったよこの子!!」
勇子ちゃんはツッコミを入れました。ですが、こがねちゃんの話は、まだ終わっていなかったのです。
「しかもお兄ちゃん中学二年生なの!! 読むには早すぎる歳なのよ!!」
「だから困るよそんな話されても!!」
いくらこがねちゃんより二つ年上とはいえ、確かに読むには早すぎる年齢です。
「自分のお兄ちゃんがエロ本を読んでたなんて……私犯罪者のお兄ちゃんと、これからどうやって付き合ったらいいかわからないよ!!」
「いや犯罪者は言い過ぎじゃない!?」
こがねちゃんは悲鳴に近い嘆きを上げます。愛奈ちゃんは唸っていました。
「うーむ……あたしって一人っ子でしょ? だから兄弟がいる人の気持ちがわからなくてさ」
「悩むところそこ!? どう考えても私達に相談する理由を間違えてるでしょ!!」
ズレた理由で勇子ちゃんと友香ちゃんを頼ってきた愛奈ちゃん。違う、そこじゃない。
「っていうか、私も友香も、兄弟いないんだけど」
「あ、そうだった」
愛奈ちゃんはようやくそれを思い出しました。
「そのマンガ、本当にエロ本だったの? タイトルはちゃんと読んだ?」
友香ちゃんだけが、冷静に尋ねます。
そうです。まだエロ本だと決まったわけではありません。最近のマンガは、表紙がちょっと過激ですからね。
「えーっと……タイトルは確か、『僕と奴隷の日常』で、表紙は鎖で縛られた裸の女の人だった」
「完全にヤバいやつじゃん!!」
勇子ちゃん、今日はツッコミが忙しいです。
「どうしよう!! 私にはもうお兄ちゃんの姿がケダモノにしか見えないよ!! 十四歳でもうケダモノだよ!! ケダモノのお兄ちゃんと同じ屋根の下なんて嫌だよ!!」
「やっべぇもう何て言っていいかわかんねぇ!!」
こがねちゃんは嘆きます。勇子ちゃん、言葉が汚いです。
「話し合ってみたらいいと思う」
こんな状況でも、友香ちゃんは冷静でした。
「話し合う……って……?」
「用は、お兄さんにそういう事されないか、不安なんでしょ?」
「そうだけど……」
「なら正面から話し合って、自分にはしないって約束させればいい。一人で行くのが心配なら、私も行く」
友香ちゃんなら、鉄男くんが話の途中で行きそうになっても、念力で止められますからね。
「もちろんあたしも行くよ! っていうか、一番最初に相談に乗ったのあたしだし!」
そこに愛奈ちゃんも加われば百人力、いえ千人力です。
「わ、私も行くわ。あんた達の暴走を止めなきゃいけないし」
本当はそんな空間に行きたくなかった勇子ちゃんですが、愛奈ちゃん達だけに任せておくのも怖かったので、一緒に行く事にしました。
「みんな、ありがとう! じゃあ今日、いいかな?」
「今日!?」
「どうしたのいさちん。こういうのは早い方がいいでしょ?」
「早くしないと、こがねさんの不安が長引いて可哀想よ」
「……わかった」
本当はもっと心の準備がしたかった勇子ちゃんですが、二人の言う事も正しいので、渋々今日、行く事にしました。
◇◇◇
「ねぇ浩美先生」
休み時間が終わる、その十分ほど前。愛奈ちゃんは、なぜか職員室の、浩美先生のそばにいました。
「何ですか?」
「浩美先生ってさ、お兄さんとか弟さんとか、いる?」
「いえ、いませんよ。一人っ子です」
「そっかぁ、浩美先生もあたしと同じだね!」
そういえば浩美先生の家庭について知らなかった愛奈ちゃんは、自分と同じ事があって、少し喜びました。
「でもそれじゃあ、お兄さんがエロ本隠し持ってた時の気持ちとかわかんないよね……」
「!? !? !?」
愛奈ちゃんの唐突な発言に、浩美先生は顔を真っ赤にして驚きました。他の先生も、愛奈ちゃんに注目したり、興味がないふりをしながらチラ見したりしています。
「え、な、何ですかいきなり!?」
浩美先生は顔を赤くしたまま、愛奈ちゃんに尋ねました。
「いやね、あたしの友達の話だよ。お兄さんがエロ本持ってたからどうしたらいいかって、あたしに相談してきたの。それで今日学校が終わったら、友達の家に行って話し合う事になったんだけどね。一応浩美先生から意見を聞いておきたいなって思って」
「ああそれで……」
愛奈ちゃんが恐ろしい事を言ってきた理由が、愛奈ちゃんの家庭に影響のある事ではないとわかり、ひとまず浩美先生は安心します。
「でも浩美先生に兄弟がいないなら、参考にはならないね。邪魔してごめんね浩美先生」
「い、いえ……」
愛奈ちゃんは職員室の出口に行き、
「も一つごめんね。本当は浩美先生の反応が見たかったからだよ♪」
「えっ!?」
ウインクして出ていきました。
「……えーっと……」
浩美先生は固まったまま、取り残されてしまいました。
◇◇◇
学校は終わり、とうとう、問題の時間が来てしまいました。
三人はこがねちゃんに連れられ、石原家へ。お家自体は、愛奈ちゃんの家に似た日本庭園のお屋敷です。
「はぁ……来ちゃった……」
「いさちん。ここまで来たら、覚悟を決めないと」
愛奈ちゃんに言われ、仕方なくこがねちゃんに続いて家に入ります。
「ただいま~!」
「は~い、おかえりなさいこがねちゃん!」
出迎えてくれたのは、こがねちゃんのお母さんの銅子さんです。銅子さんは専業主婦なので、この時間帯でもお家にいます。
「あら、愛奈ちゃんも一緒? それにお友達も。ゆっくりしていらっしゃいね!」
「はい、こがねちゃんのお母さん」
愛奈ちゃんは遠慮なく上がります。勇子ちゃんと友香ちゃんも、それに続いて上がりました。
勇子ちゃんはそっと、愛奈ちゃんに耳打ちします。
「さっきのお母さん、あんたの事知ってるみたいだったけど?」
「え? ああ、実はね――」
愛奈ちゃんが理由を説明しようとした時でした。
「おお、こがね。帰ったか」
「ただいまおじいちゃん」
家の奥から、枯れ枝のようにしわくちゃで手足の細い老人が出てきました。こがねちゃんのおじいちゃんの、金剛さんです。
「愛奈ちゃんも一緒か」
「お邪魔してます。金剛おじいちゃん」
「あんた、おじいさんとも知り合いなの?」
「知り合いも何も、この人がうちのおじいちゃんのお師匠様だよ」
「……はあああああ!?」
あまりに信じられない発言に、勇子ちゃんはツッコミを入れるのが遅れました。
そうです。以前愛奈ちゃんが言っていた、強すぎるあまりに重鎖呼法を編み出したという、亮二さんの気孔術の師匠。それは、金剛さんの事なのです。
勇子ちゃんも友香ちゃんも、なぜ愛奈ちゃんが銅子さんや金剛と知り合いで、こがねちゃんと友達なのかわかりました。亮二さんとの縁で、高崎家と石原家が交流を持っているからなのです。
「ちなみに金剛おじいちゃん、今年で111歳だから」
「はあああああああああああ!!?」
しかもとんでもないご長寿でした。
「ほっほっほ。亮二のやつは元気にしとるかいの?」
「はい。あたしに稽古つけてくれてます。よかったら、金剛おじいちゃんに、組手して欲しいかな~、なんて!」
「ほほほ、それは無理じゃよ。愛奈ちゃんもずいぶん強くなったようじゃが、それでもわしの相手は勤まらん」
「む~。残念!」
何だか二人とも凄まじい話をしており、勇子ちゃんはついていけずに黙っています。友香ちゃんは割り込む必要がないので黙っています。
「ほほほほ。まぁゆっくりしてお行き。組手以外ならいくらでも相手になるからの」
「は~い。じゃあこがねちゃん、どこでお兄ちゃんとお話するの?」
「とりあえず居間で」
「おっけー。じゃあいさちん友香、居間にレッツゴー!」
「え、あ、うん……」
愛奈ちゃんが金剛さんと別れた辺りで、ようやく正気に戻りました。
「お茶ですよ~」
四人がテーブルを囲んで座っていると、銅子さんが麦茶を持ってきました。
「ごめんなさいね。愛奈ちゃん達が来るってわかってたら、ジュースとお菓子を用意してたのに」
「いえいえ。おかまいなく♪」
愛奈ちゃんは麦茶が好きなので、遠慮なく飲みます。
「……お兄さん、いつ帰ってくるのかしら?」
「お兄ちゃんはいつも、私が帰ってきた少し後に帰ってくるよ」
勇子ちゃんの呟きに、こがねちゃんが反応して答えました。もうすぐだそうです。
「ただいま~」
噂をすれば影。鉄男くんが帰ってきました。
「ただいまこがね。あれ? 愛奈ちゃんも来てるじゃないか。それに見慣れない子が二人……どうかしたのかい?」
「……お兄ちゃん。悪いんだけど、そこに座ってもらえる?」
「? いいけど……」
とても真剣な顔をしているこがねちゃんの頼みを断れず、鉄男くんはテーブルに座りました。
「どうしたんだいこがね? すごく思い詰めたみたいな顔してるけど」
「……実は……」
こがねちゃんは例の話をしました。
「あちゃ~! やっぱり見てたのか~!」
ちょうどあの時、鉄男くんはトイレに言っていたのです。戻ってきた時に借りていたマンガがなかったので、こがねちゃんが入ったのはすぐわかりました。もしかしたら見られていたかもしれないと危惧していましたが、それは現実のものとなったのです。
「あれ、エロ本だよね? 何でまだ未成年なのに、あんな本持ってたの? まさか私にあんな事しようとしてたとかじゃないよね!?」
緊張の瞬間です。こがねちゃん達四人は、鉄男くんがどんな反応するか、注意して見ていました。
「なるほど。一人で聞くのが心配だったから、友達を連れてきたのか。言っておくけど、こがねは勘違いしてるよ」
「えっ?」
「あれは普通のマンガだから」
「「「ええええっ!!?」」」
予想もしない答えに、愛奈ちゃん、勇子ちゃん、こがねちゃんは驚きました。
「知らなかったの? 最近のマンガって表紙もタイトルも過激なんだよ」
それは考慮していませんでした。最近のマンガの中には、エロ本と大差ないタイトルのマンガもあるという事を。
「なーんだ! エロ本じゃなかったのか~!」
こがねちゃんはようやく安心しました。
「よかったわ……」
「取り越し苦労だったみたい」
勇子ちゃんと友香ちゃんも安心しています。
しかし、
「あれ? でもそういうマンガって、確か青年誌って言って、十五歳以上じゃないと読んじゃいけないんじゃなかったっけ?」
愛奈ちゃんが爆弾を投下しました。
「「えっ?」」
こがねちゃんと勇子ちゃんが、愛奈ちゃんを見ます。
「それにそういうマンガ読んでるって事は、そういう事したいって願望があるからじゃ……」
愛奈ちゃん、二連続爆弾投下。
「えっ? えっ? じゃあ、えっ? あっ?」
こがねちゃんは大混乱です。
そして、数秒後。
「うわああああああん!! やっぱりお兄ちゃんはケダモノなんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「こがね―――!!?」
こがねちゃんは泣きながら外に飛び出していってしまいました。
「てめぇ何爆弾投下してやがる――!!!」
「ボ――ム!!!」
勇子ちゃんはハリセンで愛奈ちゃんの後頭部を叩き、顔面を畳に叩きつけました。
せっかく綺麗に片付くと思っていたのに、これでは振り出しどころか前より悪いです。
「大変だ!! 早くこがねを追いかけて、誤解を解かないと!!」
鉄男くんは立ち上がりました。
「私達も行きます!!」
「私も」
「あ、あたしも……!!」
三人も急いで、こがねちゃんを追い掛ける事にしました。今ならまだ遠くまで行ってないはずです。
◇◇◇
浩美先生は、町中を歩いて帰路についていました。
前回の騒動から、自分は車を使いすぎていると思い、少しでも運動を心掛ける為に歩いているのです。少し時間は掛かりますが、ダイエットの為には仕方ない事です。それに、そこまで離れてはいません。
(歩いて帰るのも、結構いいな……)
道行く人々と同じ目線、同じ速度になると、なかなか見えるものも新鮮になります。さすがに急いでいる時は車を使いますが、しばらくは歩きで通勤するつもりです。
「あら?」
と、浩美先生は、ベンチに座っているこがねちゃんに気付きました。
「あの子確か……」
浩美先生は一応、こがねちゃんの事も知っています。ゆっくり近付いて、話し掛けました。
「こんにちは」
「あ……浩美先生……」
「何だかつらそうですね。私で良ければ、相談に乗りますよ?」
「……実は……」
浩美先生はこがねちゃんの隣に座り、こがねちゃんは今まであった事を全て話します。
(ああ……愛奈さんが言ってた友達って、この子の事だったのね)
浩美先生は、愛奈ちゃんが相談を受けたのが誰か、今ようやくわかりました。正直、気になってはいたのです。
「もう私、どうしたらいいかわかんない。お兄ちゃんがあんな人だったなんて……」
兄とのこれからの付き合いに悩む妹。浩美先生は他人ですし、クラスも違いますが、相談に乗る事にしました。
「それは、ちょっと違うんじゃないですか?」
「えっ?」
「まだ石原さん達に教えるのは早いですからちょっと迷いましたけど、いい機会なので、特別授業です。お兄さんは中学二年生、でしたよね?」
「は、はい……」
「だったら、そういう事に興味が出てくるのは当然です。石原さんだって、もう少し大人に近付いたら、絶対にそうなります」
「そ、そんな!」
「でも、だからといって、家族同士でそういう事がしたいというのは、また違ってきます。私に兄弟はいませんけど、いたとしても絶対にそんな事は思いません。石原さんは、ちゃんとお兄さんの口から、答えを聞きましたか?」
「……それは……」
こがねちゃんは言葉に詰まりました。聞いていません。聞く前に飛び出してきました。
「帰ってもう一度、お兄さんとお話してみて下さい。もし心配なら、私も一緒に行きますよ?」
「……浩美先生、愛奈ちゃん達みたい。愛奈ちゃん達も、心配だったら一緒に行くって言ってくれた」
こがねちゃんの言葉を聞いて、愛奈ちゃん達はいい友達になったんだと、浩美先生は嬉しくなりました。
「ありがとう浩美先生。私、もう一回お兄ちゃんと話してみる。今度は、私一人で」
「はい。じゃあ特別授業は、これで終わりです」
「はい。ありがとうございました!」
自分の為に特別授業をしてくれた浩美先生にお礼を言って、こがねちゃんは帰ります。浩美先生も、もう大丈夫だと思って、帰る事にしました。
しかし、その時でした。
突然地響きが起こったのです。
「きゃっ!?」
「な、何!?」
浩美先生もこがねちゃんも、帰るのを中断して、震動に耐えます。他の人も同じでした。
ところが、揺れは治まるどころかどんどんひどくなっていきます。
やがて、アームが付いた二本のドリルが、地面を突き破って出てきました。そして、そのアームが繋がる、キャタピラ付きの巨大なロボットが出てきます。
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ!! ご無沙汰じゃのう、和来町の諸君!!」
次に、ロボットからしわがれた老人の声が聞こえてきました。周りの人々が騒ぎ出します。
「ドクターエクスカベーターだ!! ドクターエクスカベーターの、ハイパーエクスカベーションロボだ!!」
「そんな!! ここ半年出て来なかったのに!!」
浩美先生はこがねちゃんに訊きました。
「な、何だか他の人達は知ってるみたいですけど、あれ何ですか!?」
「ドクターエクスカベーターていうやつのロボットよ!!」
簡潔にそのままを答えます。
老人の声は名乗りました。
「知ってる人は久しぶり。知らない人は初めまして。しばらく休んどったから、知らなかったり忘れてる人が多いじゃろうな。というわけで自己紹介するゾイ! わしはドクターエクスカベーター!! あらゆるものを壊すのが趣味の変態科学者ゾイ!! 簡単に言うと悪の科学者で、お前達の平和を脅かす者だゾーイ!!」
自分で自分の事を変態だの悪だの言うのはどうかと思いますが、とにかくそういう人です。
「今言った通り、わしは壊すのが好きだゾイ。それと同じくらい、人々に騒がれるのが好きな目立ちたがり屋だゾイ。そこでわしは、どうすればその二つの欲求を解消出来るか考えたゾイ。思い付いたのは、みんなの平和を破壊して、迷惑がってもらう事だゾ―イ!!」
本当に迷惑極まる発想です。
「というわけで、お前達愚民どもには、わしの欲求を満たす為の生け贄になってもらうゾイ!! レッツ、エクスカベーション!!!」
ドクターエクスカベーターがそう宣言すると、こがねちゃんからハイパーエクスカベーションロボと呼ばれたロボットが、ドリルを振り回して暴れ出しました。
ビルが破壊され、道路が抉られ、人々が逃げ惑う阿鼻叫喚の地獄絵図。
「ふぉーっはっはっはっはっ!! 掘削作業は楽しいゾイ!!」
この地獄を楽しいと大笑いするドクターエクスカベーターは、まさに悪の科学者に相応しい男でした。
「た、大変!! 早く石原さんを逃がさないと……!!」
生徒の安全を第一に考えた浩美先生は、こがねちゃんを探します。
「石原さん!? 石原さ―ん!!」
しかし、こがねちゃんを見つける事は出来ませんでした。
「……」
一方、こがねちゃんは物陰に隠れて、腕時計のスイッチを入れていました。
場所は変わって、石原家近くの公園。
ここに二人の男の子がいました。一人の名前は、石原琥珀。小学三年生で、こがねちゃんの弟です。もう一人は琥珀くんの友達で、二人は砂場で遊んでいました。
「あ」
と、琥珀くんは自分の腕時計が、赤く点滅し始めた事に気付きます。
「どうしたの?」
「ごめんね。僕もうおうちに帰らなきゃ」
「そっかぁ。じゃあ仕方ないね」
「ほんとにごめんね。じゃあばいばい」
「ばいばい。また明日」
琥珀くんは友達に別れを告げ、公園のすぐ外に停めてある自転車に乗り、走り出します。
と、琥珀くんは自転車のペダルを漕ぎながら、ズボンのポケットから何かを取り出しました。それは軽く振ると、眼鏡型のマスクに変化します。
琥珀くんが笑みを浮かべてそれを装着すると、全身が虹色で、胸にUBと書かれている、タイツスーツに包まれました。
さらに、自転車のハンドルを握り込むと、自転車が琥珀くんが乗るのにちょうどいいサイズの、バイクに変身します。
琥珀くんが、腕時計の四つ付いているスイッチの一つを押すと、腕時計から3D状のマップが出現しました。マップには赤い点と、黄色い点が表示されていて、黄色い点が琥珀くん、赤い点は目的地を示しています。
「行きま―す!!」
琥珀くんは道路を、壁を、建物の屋根を駆け抜け、目的地に急ぎました。
また一方、ここは平和商事のオフィス。
「おや」
こがねちゃんのお父さん、石原日長さんです。彼もまた、こがねちゃんや琥珀くんと同じ腕時計を着けており、腕時計は赤く点滅していました。
「猫飼君。悪いんだけど、課長に十五分ほど抜けるって伝えておいてくれないかな?」
「ああいいよ。行ってらっしゃい」
「ごめんね」
日長さんは隣の席でデスクワークに勤しんでいた猫飼さんにお願いすると、素早くオフィスから出ていきました。
「デキる男って羨ましいなぁ。こんな事しても許されるんだもん。僕は今日も残業だ……さて、課長課長っと……」
猫飼さんは日長さんを羨ましがりながら、課長に報告に行きました。
日長さんはビルから出た後、物陰に隠れ、周りに誰もいない事を確認してから、あのマスクとスーツを装着。腕時計を操作してマップを表示し、目的地に向かいました。
またまた一方、石原家。
『皆さーん! 最近ストレス、溜まってませんか? ストレスは健康の大敵! ここらでいろんな作業を中断して、ストレス解消のストレッチをしましょ―!』
居間の時計から可愛らしい女の子の声が響いています。というか、この台詞が繰り返されています。
「あら大変。あなた、出動ですよ」
「ん。出動か? 久しぶりじゃな」
自分の部屋で将棋をしながら居眠りしていた金剛さんに話し掛けたのは、金剛さんの奥さんで、こがねちゃんのおばあちゃんのしろがねさん。
目を覚ました金剛さんは、しろがねさんと一緒にスーツを装着します。
「銅子。出動するぞ」
「はーい!」
金剛さんとしろがねさんは、居間の時計のスイッチを押してアラームを切り、マップを見ながら、途中で同じようにスーツを着た銅子さんと合流します。
「琥珀ちゃんの迎えには、行かなくて大丈夫よね?」
「大丈夫でしょう。あの子も今頃は、援軍要請に気付いて向かっているはず。現地で合流すればいいですよ」
「今は、一刻も早く現地にたどり着く事だけを考えるのじゃ」
「はい、お父さん」
こうして、三人も向かいました。
◇◇◇
「な、何よあれ!?」
勇子ちゃんは驚きます。こがねちゃんを探していた四人は、いつの間にかドクターエクスカベーターが暴れている場所に来ていたのです。
「あっ! 浩美先生!!」
ハイパーエクスカベーションロボが、浩美先生を巨大なドリルで貫こうとしているのに気付き、愛奈ちゃんは走りました。
「くっ!!」
「あっ!?」
ギリギリセーフ。愛奈ちゃんはお姫様抱っこで浩美先生を救い出し、ロボから距離を取ります。
「浩美先生大丈夫!?」
「は、はい!」
愛奈ちゃんは浩美先生を下ろしました。
「ここはあたしが何とかするから、浩美先生は逃げて!!」
「で、でも、石原さんが近くに!!」
「やっぱりこがねちゃんこっちに来てたんだ。でも、こがねちゃんなら大丈夫だよ」
「えっ?」
こんな危険な状態だというのに、愛奈ちゃんは全く問題ないと断言しました。
「こ、このままじゃヤバそうね。友香! 鉄男お兄さん! ここは愛奈に任せて、私達は――」
そう言いかけて、勇子ちゃんは止まりました。鉄男さんが、いつの間にかいなくなっているのです。
「えっ!? 鉄男お兄さん!?」
「鉄男さんなら、危ないから逃げてって言って、どこかに行った」
「どこかってどこよ!?」
友香ちゃんは鉄男さんと話をしたようですが、鉄男さんを一人放っておくわけにはいきません。
勇子ちゃんが鉄男さんを探そうとした、その時でした。
「そこまでよ!! ドクターエクスカベーター!!」
女性の声です。
ドクターエクスカベーターも、愛奈ちゃん達も、避難しようとしていた人々も、全員その声が聞こえた場所、ビルの屋上を見ました。
そこには、胸にUBと書かれた虹色のタイツスーツに身を包み、眼鏡型の赤いマスクを装着した、少年と少女がいました。
その二人の出現に遅れて、男性が一人、老人が一人、老婆が一人、女性が一人、そしてバイクに乗った少年が現れます。
「ダイヤモンドグランパ!!」
そう名乗ったのは老人。
「シルバーグランマ!!」
そう名乗ったのは老婆。
「サンストーンファザー!!」
そう名乗ったのは男性。
「カッパーマザー!!」
そう名乗ったのは女性。
「アイアンブラザー!!」
そう名乗ったのは少年。
「ゴールドシスター!!」
そう名乗ったのは少女。
「アンバーブラザー!!」
そう名乗ったのはバイクから降りた少年。
七人は同時に、自分達のチームの名を名乗ります。
『アンブレイカブルファミリー、全員集合!!!』
「またなんか来た―――!!!」
周りの人々は歓声を上げていましたが、勇子ちゃんは驚きすぎて、両目が飛び出していました。
「あーあ、先に来ちゃったか。浩美先生。あいつはあの人達に任せて、あたし達は避難しよ」
「えっ、あ、はい……」
愛奈ちゃんは浩美先生の手を引いて、勇子ちゃん達のところまで戻ります。
「いさちん、友香。あの人達が来たから、もう大丈夫だよ」
「ま、愛奈! あの人達、何なの!?」
「この和来町最強のヒーローチーム、アンブレイカブルファミリーだよ。ちなみに、あれ石原家の人達だから」
「はあ!?」
信じられない事を聞いて、勇子ちゃんはまた驚きます。それもそのはず。勇子ちゃんには、あのヒーローチームが石原家とは違う、全くの別人に見えていたからです。
それは、スーツのせいです。日長さんは仕事の合間に、家族が有利に戦う為の装備を造っています。あのスーツは装備した瞬間に特殊な電磁波を発生させ、浴びた人間の脳に、石原家の人間であると認識させない機能があるのです。
このスーツのおかげで、石原家の人々は正体を知られる事なく、アンブレイカブルファミリーとして戦えるのです。
「あたし、金剛おじいさんから聞いてたの」
「そ、そう……って、そういう事って私達に言ったらまずいんじゃないの?」
「いさちん達なら大丈夫でしょ?」
「ま、まぁそうだけど……」
また、他人に言えない秘密が一つ増えました。
「ようやく現れおったな。アンブレイカブルファミリー。絶対に壊れない家族。何回聞いても耳が腐りそうになる名前だゾイ!!」
ドクターエクスカベーターは、何年もアンブレイカブルファミリーと戦い続けています。宿敵の登場に、悪態を吐きました。
「まさか今になってお前が動くとはね」
「半年間ずっと何もしてこなかったから、ようやく諦めたと思ってたのに」
アイアンブラザーこと鉄男くんと、ゴールドシスターことこがねちゃんが言います。それに対して、ダイヤモンドグランパこと金剛さんは笑いました。
「それは無理というものじゃ。人間は、歳を取れば取るほど頑固になるからのう。死ぬまでこの生き方は変わらんぞ。そうじゃろ? ドクターエクスカベーター」
「当然ゾイ!! わしは半年を、このハイパーエクスカベーションロボをバージョンアップする事に注ぎ込んでいたんだゾイ!!」
「なるほど。だから何もしてこなかったんですか」
「それはそれは。ご苦労な事ね」
「気の毒に。せっかく僕らを倒す為に費やした半年は、すぐ無駄になるよ」
シルバーグランマことしろがねさん、カッパーマザーこと銅子さん、サンストーンファザーこと日長さんも、笑っています。
「何じゃと!? なぜゾイ!?」
「それは僕達がアンブレイカブルファミリーだからで―す!」
アンバーブラザーこと琥珀くんが示した答えは、これ以上ないと言えるほど明解でした。
「強がりもそこまでゾイ!! お前達を倒す為に改良を重ねた、このハイパーエクスカベーションロボ・マーク44の力を見せてやるゾーイ!!」
ドクターエクスカベーターがそう言うと、マーク44のアームに付いているドリルが、それぞれ半分消えました。そしてそれを、一つに合わせます。
すると、二つのドリルが合体し、さらに巨大化しました。
「マーク44の切り札、ハイパービッグドリルゾイ!! 最初からクライマックス作戦だゾ―イ!!」
ドクターエクスカベーターが操作し、マーク44がハイパービッグドリルで突き刺します。
「アイアンシールド!!」
アイアンブラザーが両手を前に向けると、ドリルよりも大きなバリアが出現し、ドリルを防ぎました。
石原家はとある理由から、家族のほぼ全員が特殊能力を持っており、それがない場合でも何らかの特殊技能を持っているのです。
アイアンブラザーの能力は、バリアを作る能力、アイアンシールドです。
「無駄だゾ―イ!!」
しかし、マーク44が少し押し込むと、ドリルはアイアンシールドを突き破り、アンブレイカブルファミリーに激突しました。
「バリアが壊されちゃったわよ!? 愛奈!! あんたホントに行かなくていいの!?」
「だからさぁ~。あたしが行く必要ないって言ってるじゃんか~」
勇子ちゃんは愛奈ちゃんに助けに行くよう促しますが、愛奈ちゃんは全く動きません。
本当に助けに行く必要はありませんでした。だってドリルは、ダイヤモンドグランパの右掌で止められてたんですもの。
「アイアンシールドを破るとは……確かに、バージョンアップは伊達ではないようじゃな」
ミサイルを何発叩き込まれても壊れないアイアンシールドを破壊されたのは予想外でしたが、それでもダイヤモンドグランパにダメージを与えるには到っていませんでした。
「しかし、その程度では、わしには勝てん。ハッ!!」
ダイヤモンドグランパが掌に気合いを入れると、ドリルは木っ端微塵に砕けてしまいました。
「なっ!? わしの切り札が!!」
「貴様の準備が無駄に終わる事は変わらん。さて、今は皆さん忙しい時間帯だから、これ以上迷惑にならん内にさっさと畳んで片付けるぞ!」
「僕は勤務時間を抜け出して来てるんだ。もうちょっとで退勤だったのに……人の仕事を邪魔した罪は重いよ!」
サンストーンファザーは、スーツに搭載されているブースターを噴かして跳躍し、着地します。それから、腰にマウントされている刀に手を掛けました。
彼が開発したヒーロースーツは、飛行や局所での戦闘を想定した戦闘補助装置ですが、彼だけは特殊能力が使えない為、他のみんなについていけるよう、特別強力に造ってあります。この刀も、刀身を熱して切れ味を上げる、サンヒートブレードという彼専用の装備です。
「アンブレイカブルアーツ・ポイントブレイク!!」
スーツによるパワー補助、サンヒートブレードの切れ味、そして彼自身の剣術の腕が合わさり、マーク44のキャタピラの一部を破壊しました。
「おおっ!?」
バランスを崩すマーク44。しかし、まだ終わりません。
カッパーマザーが雷を出し、ゴールドシスターが口から炎を吹き、シルバーグランマが身体能力を強化して拳で殴ります。
「行きま―す!!」
アンバーブラザーがバイクに乗り直し、発進させると、何とバイクが飛びしかも両脇にミサイルランチャーが設置され、発射されました。
これはバイクの機能ではなく、アンバーブラザーの能力、ストロンゲストクレイドルによる強化です。アンバーブラザーは自分が乗っている物を強化し、自在に操る事が出来るのです。
アンブレイカブルファミリーによる怒涛の攻撃で、マーク44はどんどん破壊されていきます。
「こうなったら、一矢報いるゾイ!!」
マーク44の登頂部が開き、一発のドリル型ミサイルが、ゴールドシスターに向けて発射されました。
「!!」
ゴールドシスターは気付くのが遅れて、避けられません。
「妹に手出しはさせない!!」
「お兄ちゃん!!」
しかし、間一髪でアイアンブラザーが割って入り、アイアンシールドでミサイルを防ぎました。あのドリルほどの攻撃力はないらしく、今度は貫通されません。どうやら本当に、あのドリルだけで決着をつけるつもりだったようです。
「これで終わりじゃ」
ダイヤモンドグランパが両手を腰溜めに構え、真っ白な光が集まります。
「アンブレイカブルアーツ・フィニッシュブラスター!!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおお!!!」
そしてその光を解き放ち、マーク44を跡形もなく消滅させました。
「これでよし。サンストーンファザー、あとは頼むぞ」
「はい、お義父さん」
ダイヤモンドグランパに頼まれたサンストーンファザーが、何やら小型のミサイルのようなものを打ち上げます。ミサイルは空中で爆発し、直後、破壊された町がみるみるうちに修復されていきました。
サンストーンファザーが開発した、物体修復ナノマシンです。自分達が戦えば必ず被害が出るので、その被害を修復する為、戦いが終わった後必ず散布しています。
「お父さん。これで、ドクターエクスカベーターは倒せたのかしら?」
修復されていく町を見ながら、カッパーマザーがダイヤモンドグランパとシルバーグランマに尋ねました。
「倒せとらんじゃろうな。自分の身を守る手段は、いくらでも用意しとる男じゃ」
「また出てきたとしても、また倒せばいいだけですよ。私達は誰が相手だろうと負けませんから」
「……そうね」
アンブレイカブルファミリーはこれまで、何度もドクターエクスカベーターと戦ってきましたが、完全に倒すには到っていません。
しかし、彼が何度襲ってこようと、アンブレイカブルファミリーは負けません。だって正義のヒーローですから。
全てを終わらせたアンブレイカブルファミリーは、帰っていきました。
「……なんかさ、別の作品になってない? いくら何でもカオスすぎるっていうか……」
「いさちん、何言ってるの?」
「……何でもない」
勇子ちゃんはそっぽを向きました。
「みんな! 大丈夫だったかい!?」
そこへ、鉄男くんとこがねちゃんが戻ってきます。愛奈ちゃんはアンブレイカブルファミリーの正体を、浩美先生達に話した事を話しました。
「ええっ!? 愛奈ちゃん話しちゃったの!?」
「参ったな……まぁ愛奈ちゃんの事はよく知ってるから、それだけ信頼してるって事なんだろうけど」
二人は困った顔をしましたが、浩美先生も勇子ちゃん達も、この事を他人に話すつもりはありません。
「石原さん。お話するなら、今がチャンスなんじゃないですか?」
「えっ? あっ……」
こがねちゃんは、浩美先生が何を言っているのかわかりました。
少し物怖じしながらも、やっぱり話す事にします。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんは私と、そういう事、したいって思ってる?」
答えを聞くのが怖くてたまりませんでした。ですが、はっきりさせておかないと、一歩も前に進めません。
「……馬鹿だなぁこがねは」
「えっ?」
「僕はお前のお兄ちゃんだぞ? お兄ちゃんが自分の妹に、そんな事するわけないじゃないか。大事な妹だからね」
「お兄ちゃん……!!」
浩美先生の言っていた通りでした。
「ほら、やっぱり」
「うん! 一件落着だね!」
「……どうなる事かと思ったけど、落ち着いてよかったわ」
問題が解決して、浩美先生と愛奈ちゃん、勇子ちゃんは安心します。
兄妹の二人を見て、友香ちゃんは呟きます。
「もしかしたら私達がした事は、余計なお世話だったのかもしれない。家族の問題は、家族で解決すべきだから」
◇◇◇
とある家。
「くそ~!! あれだけバージョンアップしても通じんのかゾイ!! しかし、いいデータは取れた。このデータを元にハイパーエクスカベーションロボをバージョンアップさせれば、今度こそわしの大勝利だゾイ!!」
何とか逃げ延びたドクターエクスカベーターは、早くも次の計画に取り掛かっていました。
「おじいちゃん。またアンブレイカブルファミリーに挑んでたッスか?」
「おお半助! 帰っとったかゾイ!」
そこに、半助くんがやって来ます。
ドクターエクスカベーターの正体は、半助くんのおじいちゃんの半蔵さんです。
「しばらく大人しくしてたと思ってたら、懲りないッスねぇ……」
「ふぉっはっはっはっ!! わしは諦めんゾイ!! お前があの、高崎愛奈とかいう小娘に挑んどるようにな!!」
「……厄介な人の孫として生まれちゃったッス……」
半助くんは溜め息を吐きました。
言っておきますが、今回登場したアンブレイカブルファミリーは、今後の物語にも関わってくる重要なキャラです。一発キャラではないので、悪しからず。




